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旧作✿現在非公開中  作者: 元・深 夜 現・雪闇影
3章
84/116

深い意識の世界に眠る

 

 ルカがレティシアを見つけ野営ポイントに連れてきた翌朝。


 レティシアが眠るテントの前で、ルカとアランは深刻な顔をしながら話していた。


 アランが率いる魔物討伐隊は、本来なら一ヵ月前に魔の森に入る予定だったが、ガルゼファ王国との関係悪化に伴い、アランが城に帰らなければならい事態となり延期されていた。

 そしてアランがリグヌムウルブに帰ってくると、宿屋にレティシアの姿はなくジャンの報告で、魔の森に入ったことが分かり、一ヵ月遅れで魔の森魔物討伐が行われた。

 その道中は前回の討伐と似た感じとなり、やっとレティシアを見つけても即戦力としては使えず、むしろ守らなければならい状況に、アランは頭を痛めていた。


 

「ララの様子はどんな感じなんだ?」


「あぁ、まだ寝てる。時折うなされてるから悪い夢でも見ているんだと思う」


「そうか……タイミングが悪かったとはいえ、一人にするんじゃなかった、ルカの言う通りにしてれば良かったよ。まだピアスにも反応がないんだろ?」


「あぁ、通信とかそういったものは無意識に置いていったり、遮断しているんだと思う」


 レティシアはもうろうとする意識の中で話し声が聞こえ、ゆっくりと目を開けて起き上がろうとした。


「ララ、起きたか?」


 微かな物音を聞いてルカはそう言ってテントの中に入ってくると、レティシアのそばに駆け寄った。

 そしてレティシアの赤くなった頬に手を伸ばし、一度ほほに触れてからひたいに手を当てた。


「ルカの手、冷たくて気持ちがいいわ」


 かすれた声でレティシアがそう言うと、ルカはレティシアに優しい目を向けた。


「だろうな、今自分がどんな状況かわかるか?」


「そうね……とても眠いわ、それと体がすごくだるいわね」


「後は?」


「特にないわ……あえて言うなら、ルカの声が変わったような気がするわ」


「それなら大丈夫そうだな」


 ルカはそう言うとテントの外にでると、足早にテントから遠ざかっていく足音で、どこかへと向かってしまったのがわかりレティシアは目をつぶった。


(また置いてかれるんだわ……だけど、私はなんでここにいるの?)


 レティシアはそう思って体を起こそうとするが、なかなか体に力が入らず一人で起き上がる事すらできない。



 しばらくしてテントに戻ってきたルカはレティシアに近寄り、ひたいにふれて熱の具合を確認した。


「さっきより上がってるな、ララ少しでもいいから一回これを飲んで」


 ルカはレティシアの体を起こして、口元にコップを運んで水を飲ませようとするも、レティシアは一人で飲む事もままならず、口の端から水がこぼれていく。

 その様子を見ていたルカは、今度はスプーンでレティシアの口に水を運ぶとわずかにだがレティシアは喉を潤した。


「ララ、どこまで覚えてる?」


「皇帝陛下と話したところまで……ねぇ、ルカ、お母様がね……」


「あぁ、聞いたよ。大変な時にそばに居なくて悪かった」


「私ね……何もできないまま……あの日から一歩も前へ進めてない」


「違うよ、ララはちゃんと前に進んでる」


「違わないわ……だって、だってお母様が……」


「ララ……今は体調を治すことだけ考えよう。この森に入った時の事はジャンに聞いたけど、ララがこの森に入ってからどう過ごしていたのか俺は詳しく知らない。だけどララにあった時、ララは高熱を出していた。そして今もその熱が引いていない」


(そう、私熱があるのね……だから体が思うように動かないのね)


「薬も飲ませたい、少しでも食べられるか?」


 ルカはそう言って口元に食事を運ぶと、スープだったらしくレティシアはそれをゆっくりと飲んでいく。

 半分も食べずにレティシアはおなかがいっぱだと感じて、軽く首を左右に振った。


「これも飲んで、俺が調合したから何も心配しなくていから」


 柔らかい声色で言われたレティシアは安心して、薬を飲むがどうも味が分からない、だけどその色で美味しくないのだとレティシアにもわかった。


「ルカ、入るぞ」


 そう言いながらテントの中にアランが入ってくると、彼はレティシアの近くに座りルカと同じように、レティシアのひたいにふれた。


「だいぶ熱が高いな、移動するが大丈夫そうか?」


「問題ないと言いたいところだけど、思うように体が動かないんだと思う。一応移動しても平気なようにアルノエに背負ってもらうが戦闘は無理だ」


「そうか……。実は数名の隊員から話があって、ここにもう一泊するのはどうか? っと言われた」


「それはなんとも言えないな、できれば少しでも早く街に戻ってしっかりと休ませたい。しかし正直に言うと、ここに残っても先に進んでも、また魔物が襲ってこないとも言えない」


「あぁ、完全にお手上げだ」


(私がみんなの足を引っ張ってるんだわ)


「私なら、大丈夫よ、だから少しでも前に進んで」


 レティシアがそう言うと、アランは憂いの帯びた表情をした。


「悪いな……いろいろと無理させて」


 アランはそう言うとテントの外へと出ていき、移動する事を皆に伝えた。


「ララは何も考えずに、今はしっかりと休め。大丈夫だ、今度こそちゃんララのそばにいるから」


 ルカがそう言うと、レティシアは静かにまぶたをおろした。


(私……皇帝陛下と話してお母様が亡くなったことを聞いたんだわ……そこからの記憶が曖昧だ……転生を初めてから記憶が曖昧になる事なんて、一度もなかったのに)


 レティシアは森で過ごしていた期間を思い出そうとするも、記憶が飛んでいたり、記憶が曖昧だった。

 レティシアがハッキリと覚えているのは、ただ紫の破片を探し出し、犯人を捕まえたいと思っていた事だけだった。



 ◇◇◇



 レティシアが寝ている事を考慮し魔の森を四日かけて出ると、ルカたちは宿屋へと戻ってきた。

 それから三日たつがレティシアはいまだに目覚める気配がなかった。


「ルカ、ララの様子はどうだ?」


「いや、あれから一度も起きない」


 魔の森から出て宿屋に戻っても、いまだに目を覚まさないレティシアを心配し、付きっきりで介護をしていたルカがそう答える。


「医者の手配をするか?」


「アランには悪いが、正直この状況で医者は信用できない……薬の調合なら俺もできるし、あと少しだけ様子がみたい……もしそれでも目が覚めなかったら、その時は頼む」


「わかった……でも、あれだな、さすがに侍女は連れてくるべきだったな」


「そうだな、これなら遅くなってでも来てもらえば良かった……入浴させたいな」


 二人はレティシアの姿を見ると、思わず溜め息をつきたくなった。

 侍女を連れていないレティシアは自分で自分の事を殆どしていたため、ルカたちが今まで困ることはなかった。

 だけど、今のレティシアは目を覚ますことなく、ひたすら寝続けている。

 着替えや入浴をどうするのか悩んだ末、ルカはお湯でタオル

 をぬらし、しぼったものでレティシアの体を拭いて着替えさせた。

 それでも体を拭いただけでは限度がある。

 そろそろ入浴をさせて、少しでも不快感を取ってあげたいとルカは考えていた。


『それはやめた方がいいわよ? ステラがそうしようとした時、ララはステラの事を拒絶したから』


 窓から現れたステラはそう言ってベッドの所までくると、レティシアが眠るベッドに飛び乗り、椅子に座っているルカとベッドで横になっているレティシアの間に割って入った。

 そして静かに腰を下ろすと、まるでそこが自分の居場所だと主張するかのように、レティシアの隣で丸まった。


 ルカはそんなステラの行動に何か言いたげな表情をしたが、軽く息を吐き出すと神妙な面持ちで声をかけた。


「ステラ、それでどうだったんだ?」


『ララが起きてから報告するわ、その方がララも安心するから。ララはね自分だけが知らない事が増えるのが怖いのよ。みんなに置いてかれたと思うから』


 ステラは大きく口を開けてあくびをした後、気だるげにそう答えると、ルカは目を伏せた。


「そういうつもりは……」


 チラリとその様子を盗み見るように見たステラは、目を閉じて鼻で笑う。


『ルカはずっと一緒にいたのに、それにも気が付かなかったのね。ステラは魔の森にいた時、ララの気持ちが知りたくて一度だけララと意識の共有をしたの。ララはね、前回の討伐から帰った時は既に体調が悪かったの、でも置いてかれると思ってステラにも言わなかった、何でだと思う?』


「わからない……」


『邪魔だと思われて、みんなに置いてかれる事を恐れたからよ。後はララの過去の生い立ちが関係してるけどね』


「そんな事を考えた事もなかったのに……それに過去の生い立ちって、どういう事だ?」


『それはルカが知らなくていい事よ、ララの目が覚めるまでステラも寝るわ』


 モヤモヤとした気持ちを隠すかのようにそういったステラは、ルカから視線を逸らしてレティシアの方を向いた。


「ステラ、おれとルカにあの日から何があったか話してほしい、それもダメか?」


 今すぐにでも寝てしまいそうなステラに、慌ててアランがそう聞くと、ステラはうっすら片目を開けてからアランとルカを見て、気だるげに顔を上げて答えた。


『それならいいわよ? あの日……ジャンが宿屋に着いてから、ララは通信魔道具でどこかに連絡していたわ』


「ニルヴィスに連絡したんだな」


 そこからステラは魔の森に入っていった経緯と、森での生活を話した。

 その中には魔物の血で汚れたレティシアを、冒険者が魔物と間違えて討伐しようとして、逆にレティシアが返り討ちにした話や、レティシアが薬草も探していた事、ただ常にレティシアの行動に感情が伴ってなかった事を事細かに話した。



「それで……小さな赤い獣か……」


 ステラの話を聞き終えたアランは、驚きながらも納得した様子で口元を手で隠しながらそう言うと、ステラは大きく背伸びをした。


『それは知らないわ。ステラはララから離れたらもう会えないと思ったから、食事を盗る時しか離れなかったもの』


「ステラ、話してくれてありがとう」


『いいわよ、そばに居ることしかできなかったもの。それと……アラン、後でララにも城での話をしてあげてね』


「わかってる、ちゃんと話すよ」


『ありがとう』


 そう言ったステラはレティシアにもう少しだけ近寄ると、レティシアと同じように深い眠りについた。

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