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旧作✿現在非公開中  作者: 元・深 夜 現・雪闇影
3章
79/116

夜の探索と落し物

 

 アランとの話し合いの後、ステラからの報告を聞いたレティシアは部屋を抜け出す事を決めると、皆が寝るのを待った。


 それぞれが部屋へと行き、寝たのを確認したレティシアは音を立てないように出かける準備をすると、見つからずに部屋の窓から外に出る事に成功した。



『レティシア、本当にやめた方がいいとステラは思う』


 買ってもらったばかりの首輪に付いた青い宝石を揺らしながら、忠告するようにステラがレティシアに声をかけた。

 それでも黒いフード付きロングマントを着たレティシアは透明化魔法(インビジブル)を使い、できるだけ気配と足音を消すと、早足で宿屋から離れていく。


『仕方ないでしょ? ルカはアランの護衛だし、ノエはテオの稽古に付き合って疲れてるんだから』


『そうだけど、ステラはあの者が怖い』


 そう言ったステラは何かを思い出したのか、ぶるっと身を震わせた。


『それよりもステラ、この先なのよね?』


『えぇ、この先で不審な男たちが集まって話をしていたの。その時に、魔の森で感じた破片と似た物を感じたのよ』


 レティシアがステラに言われた路地裏に入ると辺りは暗く、深夜なのもあって人など誰もいない。

 辺りを警戒しながら陰影魔法(シャドウ)を使い、周りに光がもれないようにしてから、灯光魔法(ルミナリア)を使った。


 そこからじっくりと魔法の痕跡がないか、そしてあの紫色の破片が落ちていないか隅から隅まで探すが、それらしい物は見当たらない。


『何もないわね……』


『あの時レティシアと視覚と聴覚の共有をすべきだったわ。ごめんなさい』


『ステラ、別に謝らなくていいわよ。まだ私たちが契約を結んで日が浅いもの、忘れてても仕方ないわ』


『……そうだけど』


 まだ何か言いたげな様子だったステラだったが、レティシアが気にしていない様子なので、ステラは何も言えなくなった。

 ステラは男たちが立っていった場所や、歩いていた場所を思い出しながら念入りに探していく。



『ねぇ、レティシア、これなんだと思う?』


 レティシアはステラにが指し示す方向をにあった物を拾うと、それは魔導師のバッジだった。


『前にもこれと同じ物を拾った事があるけど、これは魔導師のバッジよ』


(でも変ね、これってそんなに落ちやすいものかしら?)


 レティシアが疑問に思いながらもバッジを空間魔法の中にしまう。



 すると突如、静寂を切り裂くような甲高い女性の悲鳴が聞こた。


 レティシアは即座に悲鳴が聞こえた方向へ振り向くと、駆け出していく。


『レティシア! ステラは、行ったらダメだと思う! 戻ろう! 抜け出した事がわかる前に戻ろ!』


 そうステラは言ったが、レティシアはステラの忠告を無視し、声がした方へと向う。

 レティシアたちがいた場所から表通りに出て、声がした噴水がある広場にたどり着くと、噴水の近くで一人の女性が無残な姿で倒れていた。


 レティシアは女性の側まで行くと、女性に触れて脈を確認し女性の体を調べた。


(遅かったわね。一見すると刃物で切りつけられたような傷口だけど、よく見ると傷口から犯人は人じゃない……これは魔物の刃ね)


 既に女性がもう助からない事を確認したレティシアは、空の方を向くと星の位置をみて、今がだいたい何時なのか確認した。

 それから周辺をくまなく調べていく。

 周囲を調べていると、噴水の周りにある花壇の中にキラッと光るものを見つけ、レティシアは持っていたハンカチでそれを拾うと、先程路地裏で見つけたバッジと同じ物が落ちていた。

 レティシアはそれを確認すると、そっと同じ場所に戻した。


 叫び声を聞いて駆けつけてきた、ギルドの人や騎士たちが女性の周りに集まってくると、レティシアはそっと浮遊魔法(トリスティク)を使って高い位置から人々の動きを眺める。

 彼らの一人が花壇に手を入れて取り出すと大きな声を出した。


「おい! これ魔塔のヤツらが着けてるバッジじゃないのか?!」


「どこにあった!?」


「この花壇の中だ!」


(何かがおかしいわ)


 そう思いながらレティシアは宿屋にそのまま向かい、静かに窓から部屋の中に入ると、自分の荷物を置いている場所に向かい、床に座った。


(一日に二つも同じ物が落ちてるなんて、なんか変よね? そもそもあのバッジはそんなに簡単に落とすもの? バッジが落ちていた場所だって変だったわ、それに……)


 レティシアが魔法を解くことも忘れ考えふけっていると、音もなくレティシアの背後に人影が現れ、人影に気が付いたステラは『ひぃっ』っと小さな悲鳴をあげると、レティシアのマントの中に入り込んだ。

 遅れて気配に気が付いたレティシアは恐る恐る後ろを振り返ると、その人影はしゃがんでレティシアと目線を合わせる。

 赤い瞳が月明かりに照らされ、怪しげに光りレティシアは一歩下がろうとしたが、人影の視線がそれを許してくれなかった。


「ルカ、こんばんは」


 魔法を解いて思わずそう言ったレティシアに対して、冷たい視線を向けたルカはニッコリと作り笑いをすると「空間消音魔法(サイレント)」と唱えた。


「ねぇ? レティシアは俺と初めて会った時のことは覚えてても、俺が毎回のように言ってる事は覚えてくれないんだね? 何でなんだろう? 覚えられない理由を教えてくれるかな?」


「わ、私にもいろいろと調べたい事があるの。い、今はステラがいるんだから、ルカが付きっきりで、私に付いてなくても良いのよ。そ、それに私に何かあったら、ルカは私の居場所がわかるでしょ?」


 そう言ってレティシアは、ルカが右耳に着けているピアスをチラッと見ると、少しだけ恥ずかしくなって下を向いた。

 ルカは小さく溜め息をつくと、レティシアの頭をくしゃくしゃっとなでた。


「あぁ、おかげ様でちゃんと付与の効果を確かめる事ができたよ」


 昼間に買い物をした際、会計をしに行ったレティシアはカウンターの近くで、赤い宝石が付いたピアスを見つけ購入をしていた。


 そして話し合いが終わり、ルカが落ち着きを取り戻した後、レティシアはステラの首輪とアランのピアスに必要な付与術を施し。

 それが終わるとルカに渡したピアスにレティシアの位置が常に確認できる付与と、レティシアに危険が迫った際は知らせるように付与を施していた。


「収穫はあったか?」


「そうね……少しだけ私の中で整理がしたいわ」


「わかった、報告できるようになったら報告してくれ」


 ルカはそう言うと、空間消音魔法(サイレント)を解いてアランが寝ている部屋へと入っていく。

 ステラはレティシアのマントの中から顔を出すと、ゆっくり外に出た。


『また怒られると思ったわ』


「私もよ……ルカの目を盗んで行動するのは、本当に難しいわ」


 レティシアはそう言うと、立ち上がり窓の外を眺めた。

 外ではギルド関係者や騎士たちが走り回り、何やらちょっとした騒ぎになっていた。


『ステラ、外にでて歩き回ってくれるかしら? その時に視覚と聴覚の共有をしてくれると助かるわ』


『わかった。行ってくるわ』


 そう言ったステラは窓から出ていくと、目的もなくただ歩き始めた。


 ステラとの聴覚共有から人々の話を聞いていくと、レティシアは違和感を感じて眉間に深いシワができる。



『ねぇ、ステラ、さっき女性が倒れていた場所まで行ける?』


『行けるわよ』



 ステラが噴水がある広場まで行くと、今度はステラとの視覚共有から、魔塔の魔導師たちと騎士たちがもめてる姿が見え、レティシアはその中にラウルの姿がないか探したが、ラウルの姿はどこにもなかった。


『ステラ、そのままどこかに隠れて話を聞いてくれると助かるわ』


『レティシア、わかったわ』


 レティシアはそう言うと、その場に座り込んだ。


(体が重たいわ……魔の森から帰っても一向に良くならない……)


『レティシア? 大丈夫?』


『えぇ、大丈夫よ。何でもないから心配はいらないわ』


 ステラは結局朝方まで噴水の近くで待機をし、噴水の近くに来る人たちの監視をしていた。

 でもその中にラウルの姿はなく、変わりに冒険者ギルド関係者や騎士たちが周辺を巡回をしていた。


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