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旧作✿現在非公開中  作者: 元・深 夜 現・雪闇影
3章
78/116

雪の姫と闇の精霊

 

 料理店を後にしたレティシアは何も言わず、ふつふつと湧き上がる怒りの矛先を地面にぶつけて、力強く地面を蹴ると三つ編みを揺らしながら、冒険者がよく使う武器屋へと向かっていく。


(なんで偉い人は、こっちが聞いてる事を全部話さないのよ! 隠し事してこちらの反応を楽しみたいの!? それにラウル王子が本当にお母様の件に関わっていたのなら、それはヴァルトアール帝国を攻撃してるのと変わらない。お母様が絡んでいる以上、フリューネ家が黙ってるわけにもいかないわ!)



 武器屋にたどり着くとルカは水晶が付いた武器を探しに行き、レティシアは気分を落ち着かせようとルカに付いて行かず、店の入口付近にあった小物の中からステラのために、使い魔の首輪を一個一個手に取って選んでいく。


(これ、かわいいわね……これにしようかしら、付与すればステラでも使えそうだし)


 レティシアが手に取ったのは、黒色の首輪に青い丸い宝石が付いたものだった。

 さらに見ていくと片耳ピアスに目が止まり、手を伸ばすて偶然にもアランが同じ物に手を伸ばしていて、アランと手が当たった。


「ごめん、アランはそれが気に入ったの?」


「ん? あぁ、少しだけいいなぁっと思っただけだよ。今はララが付与してくれた、コレがあるから使わないけど」


 アランはそう言いながら、軽く左耳に着けてるピアスを触る。


「そう、それならそれにしましょ」


「えっ? いや、いらねぇよ?」


 レティシアはアランの言葉を無視して、銀色のフープピアスにスティックのチャームが付いたものを手に取ると、また店内を見て回る。

 アランはレティシアの後をついて行くと、頭をかいてレティシアに話しかけた。


「なぁ、少しだけ聞きたいんだけどさ、さっきの店で最後に言ってことって本気?」


「えぇ、私は冗談であんな事を言ったりしないわよ?」


「いや、でもさ……あれは」

「アラン、ここで話すような事じゃないと思うの」


「……それも、そうだな」


 そう言ったアランは、レティシアに対して思う事があったのか、レティシアの事を探るようにみていると、買い物を終えたルカが二人の元へとやってきた。


「俺の方は良さそうなの買えたけど、そっちは?」


「思ったより早かったのね、それじゃ、私もこれを払ってくるわ」


 レティシアが会計をしに二人のもとを離れると、二人は歩いていくレティシアの背中をじっと見つめた。


「ルカ、帰ったら三人で話がしたい」


「あぁ、ララが暴走する前にそうした方がいいと俺も思ってる」



 ◇◇◇



 買い物を終えて宿屋の部屋へと戻ると、アランは「空間消音魔法(サイレント)」と唱えていつもの一人用ソファーに座る。


「ララそこに座ってくれ、さっきの話の続きがしたい」


 レティシアはアランに言われた通り彼の近くに座ると、荷物をソファーの上に置いた。


「いいわよ? アランは何が聞きたいの?」


「まず、君がラウルに言っていた自分に関することってなんだ?」


 アランにそう聞かれたレティシアは、ルカの方を確認するように見ると、ルカは静かにうなずいてレティシアの向かい側に座った。


「ヴァルトアール帝国で人が結晶化するって話、アランも知ってるでしょ?」


「あぁ、突然発症したかと思ったら、どんどん体が結晶化して最終的に亡くなる奇病だよな?」


「そうよ。私のお母様もその奇病にかかってるの。もう五年も前からね……今は延命治癒を受けて生き永らえてるわ」


「そうだったのか……知らなかったとは言え、聞いて悪かった」


「ううん、大丈夫よ」


「なるほどな……、まぁ、問題なのはその後だ、ガルゼファ王国と戦争をする気か?」


「もしも、どちらにも魔塔が絡んでいて、ガルゼファ王国が魔塔をかばうなら仕方ないわね」


「ララ、君はまだ幼いから、簡単に考えてるかもしれないけど」

「簡単には考えてないわ。戦争が憎しみと悲しみしか生まない事も、次の争いの火種にしかならない事も、無関係な人が巻き込まれる事もわかってるわ」


「それならなぜ!」


「もしも、あれが魔塔が作ったものなら、私は領民を魔塔から守らなければない。向こうが事実を認め、使用の中止をしないなら、これ以上被害が広がる前に武器を持って戦うしかないわ。でも、こちら側の誰も巻き込まないやり方は、私が一人でも国を落とすしかないと思うの」


『それならステラも力を貸すぞ、借りは返さないとだからね』


 窓から入ってきたステラはそう言うと、レティシアの膝の上に飛び乗った。


「ステラ、おかえりなさい」


「ステラ、君の気持ちもわかるが、これは君が力を貸すべき事じゃない。ララの立場が悪くなる」


『ステラとララは主従関係よ? ララがやる事にステラが力を貸すのは当たり前。それに魔の森の魔物はあの欠片で操られている、それ相応の報いは受けてもらうわ』


「わかったよ……でも、もしそうなった場合は先に話し合いだ、それともう一つ……ララ、君は一体誰なんだ?」


「アラン! それは」

「ルカは黙っててくれ! おれの国に戦争を起こす気でいるやつがいるんだ! ちゃんと正体を知っておきたい」


 ルカの言葉を遮って、そう言ったアランに視線を向けていたレティシアは立ち上がると、淑女の礼をした。


「本名を名乗るのが遅くなり誠に申し訳ございません。私、レティシア・ルー・フリューネでございます」


「はっ……やっぱり、あの皇子と同じで名前まで偽名だったのか、まだあの皇子の方が偽名にしても、かわいげがあるじゃねぇかよ……。 それにしてもフリューネ家か……そりゃあ、王子相手でもルカが睨むわけだ」


「どういう事でしょうか?」


「あぁ、いい。いつも通りで構わない。フリューネ家の姫様は教えてもらっていないのか? 親交が深い王家に伝わってる話だ、オプスブル家とヴァルトアール皇家は、雪の姫を大切にしている、そして雪の姫に手を出せば大地が荒れるって……まぁ本当か嘘かも分からないし、そもそも雪の姫は何代も産まれなかったと聞いているけどな」


「……雪の姫とか何も知らないわ」


「話は聞いてなくても、元になった話を読んだことがないか? フリューネ家の書庫とかになら普通にありそうだけどな、闇の精霊と光の精霊そして雪の姫と少年のお話だよ」


 レティシアは昔フリューネ家の書庫で、一度だけみた童話を思い出した。


 それはいつも一緒にいる精霊たちの話で、争いが起きて大地が死んでいくと、それを悲しんだ雪の姫が自分の命と引き換えに少年と一緒に争いを止め、雪の姫の死を悲しんだ光と闇の精霊は全ての力を使い、彼女が愛した大地を元に戻した。

 光の精霊は力を使い果たし人となり、闇の精霊は人になれず精霊のまま、弱って生き残った。

 雪の姫と一緒に戦って姫に置いてかれた少年と、光の精霊と一緒に人になれず置いてかれた闇の精霊。

 少年と闇の精霊は約束をして、雪の姫と光の精霊が残したモノを、守って生きていくお話。


「……見た事があるわ」


「その話に出てくる、雪の」

「アラン!!! 頼むからそれ以上は言うな!!」


「ルカ?」


 今度はルカがアランの言葉を遮るように大きな声を出すと、レティシアは驚いてルカの方を向いた。

 今にも泣き出しそうな表情を浮かべながら、ルカはレティシアのことを見ると、ゆっくりと口を開いた。


「いいんだ……、レティシアはそんな事、知らなくていいんだよ……」


(もしかしてフリューネ家が雪の姫? それなら、闇の精霊はオプスブル家? そして光の精霊がヴァルトアール皇家?)


「そういう事? だからオプスブル家はフリューネ家を守ってるのね、守れなかったから」


 レティシアがそう言うと、ルカは目をギュッとつぶり下を向いた。


「そう……なのね……でも、私には関係ないわ。ルカはルカだし、私は私よ? ルカが闇の精霊と一緒でも一緒じゃなくても、ルカは私にとって大切な人よ。それに断言するけど、私は雪の姫の生まれ変わりじゃないわ」


「まぁ、君が雪の姫の生まれ変わりでも、生まれ変わりじゃなくても、ルカが君を守ってる時点で、その話を知ってる他国の王家から見たら雪の姫様なんだよ。それにルカは闇の精霊と契約してるからな……。なぁなぁ、姫ちゃんは知ってるか? 闇の精霊の力を使って、たまにルカが気配を消してること!」


『アラン、ステラは人族でも獣人族でもない。あなたが王子なんて、ステラにはどうでもいい事、だからレティシアの大切な者を傷付けるなら、ステラはアランを許さない』


「わかったよ。悪かったって……レティシア、ルカ最後は調子に乗った、すまない」


(やっぱり闇の精霊のおかげだったのね……それならルカに透明化魔法(インビジブル)陰影魔法(シャドウ)が見破られるのも、納得できるわ)


「とりあえず、それなら今後も偽名は確定だな、皇子はレティシアの本名を知らなそうだし、何より今の状況でフリューネ家に手を出されたら、おれが困る」


「えぇ、お願いするわ」


 レティシアは下を向いたままのルカが心配になり、ルカの隣まで行き腰を下ろすと、そっとルカの手に自分の手を重ねた。

 ルカの手は強く握りしめられて冷たくなっており、それだけ知られたくなかったのだと、ルカの手に触れたレティシアは思った。


「ルカ、大丈夫よ。ルカと初めてあった日に言われた事を、私は忘れてないわ。ルカが私を守ってくれる理由にオプスブル家は関係ないのでしょ?」


 レティシアがそう言うと、ルカはレティシアの小さな手をにぎって、何度も頭を上下に振った。



 その後レティシアはステラと話すと、その日の夜にステラの力を借り、こっそりと宿屋を抜け出した。


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