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旧作✿現在非公開中  作者: 元・深 夜 現・雪闇影
3章
76/116

森に潜む影

 

 翌日の明け方、レティシアは誰かに呼ばれた気がして目を覚ました。


 静かにテントの外にでると、火の番をしていた獣人族の二人は気持ちよさそうに寝ていて、それを見たレティシアは少しだけ呆れてしまい、彼らを起こそうと手を伸ばした時、森の奥から呼ばれている気がしてその手を止めた。


 レティシアは森の奥に目を向けると、そこにはただただ深い闇が広がっていた。


 レティシアは魔力探知範囲を広げられるだけ広げると、呼ばれた気がした方向の遠くの方で魔物の気配一つだけあり、呼んでいるのがその魔物だとレティシアは思った。


(遠いわね……身体強化して走っても三十分はかかるわ……でも、もしも罠だったら?)


 レティシアはそう思うとなかなか一歩が踏み出せない、とりあえずルカかアルノエを呼ぶべきだと思い、テントの方へ戻ろうとすると、その気配はさらに森の奥へと移動しようとする。


(まるで、私の動きが見えてるみたいな動きをしてくれるじゃないの……一人で来いってことかしら?)


 レティシアはそう思うと覚悟を決めてゆっくりっと森のへと入っていき、少しずつ野営ポイントから離れると、身体強化を使い魔力探知の反応があった方へと勢いよく走っていく。


(反応は止まったまま……本当に私を誘ってるみたいだわ。それにこの魔力反応は私たちを見張ってた魔物ね……、罠だったら……覚えてなさいよ!)


 レティシアはさらに速度をあげると、木と木の間を走るのが面倒になり、勢いよく上に飛んで木々の上まで出ると、今度は浮遊魔法を使い空中を蹴って魔力探知の反応があった場所まで進んでいく。



 魔力探知の反応があった所にたどり着くと、レティシアはゆっくりと木々の間を通って地面におりていく、するとそこに大きな影が現れた事によってその大きさに驚いたが、レティシアは一歩も下がることはなかった。


「初めましてかしら? 私を呼んでいたのはあなた?」


『人の子よ、そなたを呼んだのは紛れもなく私だ』


「そう? それなら要件は何かしら?」


『なぁに、そなたが森から出る前に少しだけこの前の借りを返そうと思うてな、だが……そなた、思うてたより小さいのう』


「あら? それなら見逃してくれるのかしら?」


 金色に光る瞳で獲物を観察するような視線を向けてくる相手に、レティシアは程よい緊張感と闘争心がわきたつのを感じ、ポケットの中に手を入れ小さくなってる短剣を握ると、目の前の大きな影は楽しげに笑った。


『見逃すとな? そんなわけなかろう! ここでそなたを食ってやるわ!』


 そう言った大きな影はレティシアに襲いかかると、レティシアは瞬時に攻撃をかわし、ポケットから短剣を取り出すと魔力を流し構えた。


「それじゃ、今からあなたは私の敵になるけど……あなたを倒したあと、この森にいるあなたの仲間も私が始末してもいいよね?」


 挑発的にそう言ったレティシアの瞳は薬の効果が阻害され青く光を帯びると、レティシアは楽しげに微笑んだ。


『できるものならやってみるがいい! 小さいの!』


 黒い影はそう言ってまたレティシアを襲うが、レティシアは体格をいかしながら避けると、敵の急所を確実に狙いに行くが、予想していた手応えを感じる事はできずに一度距離をとった。


(思ったより硬いわね、これでも結構魔力を流してるはずなんだけどなぁ、それに挑発をしたのにも関わらず、本気で私を倒しに来てないわね)


 レティシアは黒い影の攻撃を避けつつも、魔法も使って敵の足止めをしながら切りかかっていく、それでも敵の防御力が高くなかなか致命傷を与えられず、レティシアは次の手に出る。

 短剣を左手に持ち直し右手に魔力を集めだすと、扱える魔力量をこえた指輪の水晶が割れて黒い魔力が溢れ出した。


「聖騎士や魔塔の人たちがまだ森にいるから、あまり使いたくなかったんだけどなぁ、そもそも私は、あなたにも紫の破片の事を聞きたかったのに、まぁ仕方ないよね。一撃で仕留めてあげるわ」


 黒い影に向かって楽しそうにレティシアがそう言うと、突然黒い影の動きが止まった。


『小さいの、紫の破片と言ったか?』


「えぇ、言ったわよ? それが何か?」


 黒い影が動きを止めた事によって、不満そうにレティシアが片眉をあげてそう答えると、黒い影は戦闘態勢を解いていく。


『あれが何か知っておるのか?』


「知らないわよ? だから、あなたにも聞こうとしたら罠だったとか、さすがに笑えないわよ」


『す、すまぬ……少しだけそなたと戦ってみたくてのう』


 そう言った影は黒いモヤが晴れていくと、白い大きな狼となった。レティシアはその姿を見てフェンリルだとわかり、右手に集めていた魔力を消しさると地面に降り立つ。

 堂々とたたずむフェンリルが月明かりに照らされると、その姿があまりにも奇麗でレティシアの目は釘付けとなった。



『人の子よ、そなた、名をなんという?』


 フェンリルに見とれていたレティシアは、話しかけられた事によって急に我に返ると、できるだけ平静を装うとした。


「レティシアよ、事情があって今はララと名乗ってるけど」


『そうか、それならレティシア。そなたを騙すような事をしてすまなかった、そしてたくさんの仲間たちを解放してくれた事、感謝する』


「やっぱり魔物たちの中に、あの紫色の破片に操られてた魔物がいたのね……あなたはアレが何かわかるの?」


『私には何もわからぬ……突如魔物たちが人や獣人たちを襲い始めたのだ。最初は私も止めていたがそれでも止まらず……』


「それであなたは、私たちを森から追い出そうとしてたのね」


『そうだ、その方がおまえ達も安全だと思ったからだ』


 フェンリルがレティシアを見下ろしながらそう言うと、レティシアはあごを触って考えだした。


(この子が私の目と耳になってくれたら……お互い知りたい事を調べる事ができるわね)


「ねぇ、フェンリルさん提案があるんだけど、私と仮契約をしない? 契約すれば、あなたはもっと小さい姿にもなれるでしょ? そうすれば街の中も自由に動けるから、いろいろ調べられるわよ? 仮契約だから、契約の解除はあなたの好きな時にすればいいわ」


『レティシアはそれで良いのか? 私は仮にも幻獣だぞ? 私の力が欲しくないのか?』


「正直に言えば、私はあなたの目と耳を借りたいの。幻獣と契約すれば意識の共有ができるから、あなたが見たものを私も見えるし、聞けるからそれだけでいいわよ」


『ふっ、欲がないな』


 そう言われたレティシアは首をかしげてフェンリルに言う。


「欲ならあるわよ? 私は生きていたいの、守りたいものを守りたいの、そして幸せになりたいの、充分に欲にまみれてると思うけど?」


 フェンリルは目を細めながらレティシアを見ると、小さく笑った。


『面白いのう……良かろう、そなたと契約をしよう』


「本当!? それなら仮契約の結び方を説明するね! そうそうあなた女の子よね?! 名前も考えてもらわないと」


 レティシアが嬉しそうにしゃがんでお手本の魔法陣を描き始めると、フェンリルはレティシアの様子を悲しげに見つめ『レティシア、すまぬな』と呟いた。するとレティシアの足元に魔法陣が描かれていき、レティシアはその魔法陣を目で追ってそれが何の魔法陣か思い当たると大きな声を出した!


「ダメよ! フェンリルさんまって! これは仮契約じゃない!」


『レティシア、良いのだ……森のものたちも既に納得している事だ、元々このためにそなたを呼んだのだ。このまま、ここに私が残って傀儡になってしまったらどうなると思う? 間違いなく国は滅ぶぞ?』


「それこそ仮契約でいいわ! この件は絶対に解決する! そしたらあなたは自由になればいいわ! 本当に契約したらすぐに解除できないのよ!?」


『気にするな、さぁ私に新たな名前を』


(そんなことを急に言われても考えてなかったわよ! 仮契約で好きな名前を選んでもらうつもりだったんだから! えっと……えっと……光? 白? フェンリルだからリル?)


『時間がないぞ? 私は名前すらもらえぬのか?』


「うるさいわね! 今ちゃんと考えてるでしょ!?」


(何がいいのよ、月? 夜? 狼? えっと……星?)


「ステラ! あなたの名前はステラよ!」


 レティシアがそう言うとレティシアとステラの手の甲が光、ステラの体がどんどん小さくなって小型犬より小さくなると、レティシアの肩に飛び乗った。


『ステラか良い名だ、レティシアこれからはよろしく頼むぞ』


 ステラはそう言うと、レティシアのほほをペロッとなめた。


「名前それで本当に良かったの? 私が死ぬまでか契約解除をしない限りその名前よ?」


『ステラという名を私は、気に入ったぞ? それはそうと、レティシアよ、そろそろ戻らなければ日が登るぞ?』


「まずいわ! 怒られるわ! 急いで戻るから、振り落とされないでねステラ!」


 そう言ったレティシアは身体強化と浮遊魔法を使って木々の上まで上がると、急いで野営ポイントまで飛んでいく、その速さにステラは振り落とされないようにして、レティシアの上着の中へと入っていった。

 野営ポイントが近づくとレティシアは、地面に降りて今度は身体強化を使って木々の間を走っていき、野営していた場所に無事にたどり着く。

 レティシアは周りを見渡すと、たき火のところで寝ていた獣人族の二人はまだ寝ており、テントの外で他の気配がない事を確認すると、レティシアは安心をして息を吐き出した。


(バレてないわね……危なかったわ……)


「ねぇ、ララ? 君はどこに行っていたのかな?」


 レティシアの背後からよく知っている声が聞こえると、レティシアは背筋をピンッと伸ばし、ひたいから嫌な汗がじわっとでる感覚がした。

 恐る恐るレティシアが振り返ると、腰に片手をあててにっこりと笑って立っているルカそこにいて、でもその目が少しも笑っておらず、ルカが怒っているのだとわかると、レティシアの背中からも冷たい汗が流れた。


「えっとね……ルカ……こ、これにはふかぁぁい事情があってね」


 レティシアが汗を出しながら困ったようにそう言うが、ルカの表情から笑みが消える事はなかった。


「うんうん。俺が怒るってわかってて黙って行く、ふかぁぁい事情ってなんなのか、詳しく俺も知りたいなぁ」


 その後、空間消音魔法(サイレント)を使ったルカからレティシアはまたもや盛大にお説教をもらうと、包み隠さずステラの事を説明し、ステラからもルカに説明をしてもらうと、ステラもルカからお説教をされた。最後にルカは「次は許さないからな?」そう言ってレティシアの頭をくしゃっと撫でると、ステラの頭もくしゃっと撫でてテントの方へと戻って行った。


『レティシアよ……約束しよう、ステラはあの者を二度と怒らせないようにする』


 そう言ったステラは小さく震えていた。


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