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旧作✿現在非公開中  作者: 元・深 夜 現・雪闇影
3章
72/116

襲撃と落し物

 

 森に入って三日目。


 日の出前に目が覚めたレティシアはテントの外に出ると、無意識に森の奥へと視線を向けた、するとそこには深い闇がただ広がっていた。

 火の番をしていたルカが、テントから出てきたレティシアに気がつくとレティシアに話しかけた。


「ララ、起きたのか? まだ寝てていいぞ」


 そう言われたレティシアは首を横に振った。


「ううん。もう目が覚めちゃったわ」


「そっか、それならおいで」


 ルカはそう言ってレティシアのために少し横にズレて場所を開けると、レティシアはそのままルカの隣までいき空いたところに腰を下ろした。

 ルカと一緒に火の番をしていたアルノエはコップに飲み物を注ぐと、レティシアに差し出した。

 レティシアは「ありがとう」とお礼を言いながら受け取り、一口だけ飲むと、空に向かって軽く息を吐きだす。


 静かな空間にただ、パチパチッと音を鳴らし燃えるたき火と木々を揺らす風の音だけが聞こえ、レティシアは静かに目をつぶりながら、気持ちを落ち着かせた。

 昨日はさらに森の奥へと進んだため、初日より魔物が強くなり負傷者が数人でた、それに加え魔物の襲撃に乗じてアランへの攻撃があり、レティシアは久しぶりに誰かを守りながら戦う戦況に、神経をすり減らし疲れていたのだった。


(タダでさえ魔物が強いこの状況で、アランが狙われるのは痛手だわ……犯人を追うにも魔物が邪魔で追えないし、仮にアランが倒れてしまえば、隊の統率力がなくなってさらに危険になる)


 そう思いながらレティシアは目を開けて、両手で持っているコップに視線を落とす。


(こんな狭い森で魔法を使うのだってそんなに簡単じゃないわ、常にアランや他の人たちの位置を把握して、邪魔にならない範囲で魔法を使うのは正直に言って、神経を使うわ……過去の知識を使ってアランのピアスに、二回までなら発動する自動防御壁(オートシールド)の付与をしたけど、あんなのただの保険でしかない……)


 思わず溜め息がこぼれそうになり、弱気になってはダメと思うと、レティシアはコップを握る手に力が入る。


(全ては守りきれないわ……わかってる)


 レティシアがそう思うと、彼女の魔力探知範囲内に魔物の気配がした。


「ルカ、数八〇! 移動速度から考えて七分後に接触するわ! みんなを起こして!」


 レティシアは瞬時にそうルカに言ったが、同じように魔物の気配を探知したルカは既に立ち上がっていた。


「起きろー! 敵襲! 七分後に魔物の敵襲!」


 そう大きな声でルカが言いながら、ルカとアルノエはそれぞれテントに走る。

 レティシアはコップの中身をその場に捨て、大きく息を吸い込んで気合を入れると、下ろしていた髪を一つに縛り上げ右手に短剣を持つと戦闘態勢に入った。


(まだ日の出前で周りが暗い……こんな時に敵襲なんてさすがに笑えないわよ)


 それぞれのテントから慌ただしく討伐隊の人たちが出てきて、戦闘の準備と戦闘をしやすいようにテントを閉まっていく。

 その中に昨日負傷した獣人たちがパニック状態に陥ってる姿と、寝ぼけ眼でテオドールがテントから出てきたのを見て、レティシアは目をつぶって歯を食いしばった。


(このままじゃ間に合わないわ……誰かが死ぬ事になる)


 レティシアは彼らの準備が整うまで、少しでも時間を稼ぐしかないと思い、大きく息を吸い込むと肺に新鮮な空気を入れゆっくりそれを吐き出した。


(死ぬのは嫌……でも、自分に出来ることをやらないで、誰も守れずに失うのはもっと嫌よ)


「こんな所で死ぬつもりはないわ」


 目を開けてそう呟くとレティシアは覚悟を決め、魔物の反応があった方をキッと睨みつけて一歩を踏み出そうとした。


「君が一人で行く必要はないよ」


 そう言ってアランがレティシアの肩をつかんで彼女を止めると、大きく息を吸い込んだ。


「皆の者よ、よく聞け! たった七歳の人族の少女が、ふがいないおまえ達のために命をかけ、一人で魔物と接触し戦う覚悟を決めた! 男として、そして獣人族として、おまえ達は少しも恥ずかしくないのか!!」


 アランがそう言うと、パニック状態になっていた者は落ち着きを取り戻し、いまだに震える手で剣を構えた。

 そして徐々に士気が高まるのをレティシアは肌で感じとった。


「大丈夫だ、まだ誰も死なせない」


 アランはそう言うと、みんなに的確な指示を出していく。

 レティシアの元にアルノエが歩いてくると、その表情から怒ってるのだとレティシアにもわかった。


「落ち着いてから、ルカ様からお説教があると思いますが、オレからもある事を覚悟しておいてください」


 そうアルノエが告げると、レティシアは困ったように笑う。


(私を守りたい彼らと、彼らを守りたい私……でもこれは私のエゴよ、私の幸せに彼らは必要だもの、好きにやるわ)


 そう思うと、レティシアの短剣を握る手に力が入った。


「来るわ!!!」


 レティシアがそう叫ぶと、次々に魔物が襲いかかる。

 アルノエとレティシアである程度、倒すが二人の横をどんどん魔物が通り過ぎていき、アランたちの方へと向かっていく。

 それでもレティシアは振り返ることもせず、襲ってくる魔物をして倒していくと、レティシアに向かってくる魔物の数が増えていった。



 半分程魔物を倒すと残りが撤退を開始したが、それでもレティシアは迷うこともなく次の攻撃に出た。


氷の連射弾魔法(グラキエスブッレテ)!」


 レティシアが右手を前に出してそう唱えると無数の氷の弾が出現し、次々と物凄い速さで魔物へと飛んでその体を貫いていく。

 魔力コントロールをずっとやってきたレティシアの命中率は非常に高く、攻撃を交わして逃げた魔物もいなかった。


 その余りにも圧倒的な強さに誰もが声を出す事もできずにレティシアの方を見ていたが、彼女はそれを気にする様子もなく、倒れている魔物に近づくと生き残ってる魔物がいないか確認して回る。

 周りが徐々に明るくなり、鳥たちが朝を知らせるかのように活動を始めると、レティシアの口から思わず言葉がこぼれおちた。


「やっと朝だわ……」


 生き残ってる魔物がいないとわかると、レティシアはアランたちの方へと向かい、状況の確認をしてから話し合いの結果、倒した魔物をそのままにしておけば、そこにまた新たに魔物が集まるということで、隊員全員で魔物の素材を取ったりしていたが、そこにテオドールとアランの姿はなかった。

 そのことをレティシアは不思議に思いつつも、レティシアはルカとアルノエの二人から盛大なお説教をもらい、ただ謝ることしかできなかった。


 やっとお説教から解放されたレティシアはテオドールとアランを探しに出ると、離れた所にレティシアの魔力探知に二つの反応があり、レティシアはそこに向かうと、テオドールはアランと剣の稽古をしていた。レティシアはこっそり見ようと見つかる前にとっさに隠れると、話し声が聞こえレティシアは聞き耳を立てた。


「朝方の見て君はどう思った?」


「……正直にすごいと思ったよ、僕は何もできなくて、震えてる事しかできなかったから……」


「おれが言うのも変だけどさ、君はもう少しだけ皇子としての自覚は持った方がいいと思うよ? ルカだって君の生死は気にしないとおれに言っていたけど、実際はこの討伐から君が無事に帰れるようにいろいろと考えてるし、朝方のだってララは君や隊員たちを守るために、一人で魔物の群れに向かっていこうとしたんだよ?」


(テオはアランに自分が皇子だって明かしたの? だからアランはテオを守って戦ってたの?)


「正直に言えばわからないんだよ……今まで散々家で皇子だからって言われて、いろいろと勉強を教えてもらったけど、僕は城で暮らした事も覚えていないし、ごくごく普通の領民と変わらない生活をしていたから、ずっと僕は彼らと変わらない存在だって思ってた。だから、ララと離れたくない一心で彼女の後を追えたんだよ……そのことで嫌われちゃったけどさ。今さら皇子の自覚をもてって言われても困るよ」


「……なら、君は皇子という責任から逃げるのか?」


「それは、きっと誰も許してくれないよ。アランだって僕やルカが言わなくても、僕が皇子だってわかったんでしょ? それに父上なら間違いなく、僕が逃げた先に生きる意味はあるのか? って僕に聞いてくるよ……父上はそういう人だから」


「テオ、君が今まで生きてきた道には、既にたくさんの血が流れている事を忘れるな、そしてこれから先も、君が死ぬまでその血が流れ続ける事をもっと自覚しろ」


「うん、それはルカにも言われた」


(アランが勘づいたのね……それなら仕方ないわ、それよりこれ以上盗み聞きしちゃ悪いわね)


 そう思いレティシアは足元に視線を向けると、光るものを見つけ、それを拾うと急いでその場を離れたが、二人の会話が少しだけレティシアの耳に届いた。


「でもねアラン、僕はね皇子って柄じゃないと思ってるよ。怖いことや、つらいことからは逃げたいし、好きだと思う子にもつらい思いをさせたくない、その子の隣にずっと居たいと思うし、その子を幸せにしたいとも思ってる。それって全部皇子じゃできないんだよ。でも、…………」


 移動をしていたレティシアは途中から二人の会話は聞こえなくなり、その先のことは聞けなかったがレティシアは止まらずにルカたちがいる所まで戻った。


「ララ、おかえり。アランを知らないか? さっき魔物の敵襲に乗じてまた襲撃を受けたばっかりなのに、アランのやつまた勝手に一人で行動しやがった」


「アランならテオと一緒だったから、もう少ししたら戻ってくると思うわよ? 魔力探知の範囲も広げたから大丈夫よ。ところでルカ、さっき森でこんなの拾ったんだけど、これが何かわかる?」


 そう言ってレティシアは先程盗み聞きをした場所で見つけて拾った、月と太陽の魔法陣が描かれたバッジをルカに見せると、ルカはそれを手に取ると彼の顔がどんどん険しくなっていった。


「これは魔塔の魔導師の証だ……どこで拾った?」


「やっぱり魔導師のだったのね、さっきテオとアランを探しに行って見つけたわ」


「そっか、他に人の気配と反応は?」


「二人の気配と反応しかなかったわ」


「なら、もう移動した後か……これは俺が預かっておく」


 それから少したってテオドールとアランが戻ってくると、また森の先へと進む事となった。

 移動中アランとルカはコソコソと話をし、レティシアは聞き耳を立てると、二人は先程のバッジの事を話していた。


(ここは魔塔の討伐範囲外だったのね……そして魔塔がこの森に討伐に入るのは今回が初めて……前に落としたのなら雨風にさらされて劣化するわ、それなのにあのバッジは少しも劣化してなかった、それなら落としてそんなに日がたっていない事になるわ。拾ったと言えば、先日この森で見つけたあの破片も気になるわね)


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