レティシアは知識を増やす
レティシアは、お昼寝の後、目を覚まし体を起こした。
(あーまた寝たのか…まだまだ赤子…普通はもっと寝るものよねぇ…)
レティシアは、小さな手足と赤ちゃんボディーを見つめながらそう思った。
そしてどうにか剣術の稽古が出来ないか考えてから、短剣の大きさを目の前で想像して、短剣ですらまだ大きいことがわかると、肩をガックリ落とした。
(まだ早いか…そろそろはじめたいんだけどなぁ…)
フリューネ家にも、フリューネ家に仕えてる騎士団がある。
領地があるので、それを治めるのに必要なのだろう。
一度訓練の様子をレティシアが見学したいと申し出たが、何かあっては大変だと言うことでエディットとリタには、反対されていた。
その際、騎士団の面々はとても残念そうにしていたのをレティシアは見ていた。
それならばっ! とレティシアには、他に用事や、特にやる事もないのでフリューネ家の書庫へと向かう。
彼女の一度目の人生が無知だったこともありどの人生でも。
″ 知識は大切 ″
″ 知識は財産 ″
っと思うようにしてるのだ。
そして本を読んだり物事を学ぶ事で損をすることはない。
いつだって ″ いつか ″ 自分のためになるのだ。
ただレティシアは、本に対して楽しいという感情は一切持っていない。
そういった感情は、とうの昔に消えてしまったのだ。
なぜなら見た事を理解し記憶してしまうので、本を読むっという感覚よりも、書かれている物事を認識し知識として頭の中へ詰め込む、って感覚の方が正しいからだ。
そのためレティシアが本を読む際は、じっくり一ページ読み内容を理解するといったことはせず、ページをペラペラと指でめくる。
それでも、その内容が理解出来ていて、さらにその内容をずっと覚えてる。
わかりやすく言えば、レティシアが一冊の本を読めば頭の中にある本棚に新しく一冊入っていくような感覚だ。
本を何冊もめくっていくと夕食の時間になったのかリタがレティシアを迎えに来た。
いつの間にか書庫にも魔法で明かりが灯されている。
( 魔法って本当に便利だよなぁ)
産まれて半年だった頃からレティシアは毎日、変わらない生活を送っている。
レティシアがこの書庫を初めて訪れたのも、ただの偶然からで、本来書庫には鍵が常にかかっていたが、その日レティシアが書庫の前を通ると鍵を開く音が聞こえ扉が開いたのだ。
そして導かれるようにレティシアは、書庫へと入って本を読んでいた。
だがレティシアは誰にも伝えていなかったために、屋敷内では小さな騒ぎとなった。
その日からエディットがレティシアに書庫の鍵を与えたため、誰かに伝えなくてもレティシアが、書庫にいるのは、屋敷で働く全ての人が把握してる事だった。
「レティシアお嬢様、そろそろお夕飯の時間ですよ。本日もたくさんの本を読みましたね、今日はどの本が楽しかったですか?」
そう聞かれ首を傾げるが適当に
『 これかな?』
っとテレパシーで言いながら歴史の本をレティシアは指さす。
(本なんて、いまさら別に読んだところで楽しくなんてない。ただの知識だ。そもそも、物語が書いてある本を過去でも見かける機会はあったけど、読む機会はなかった。今世では、物語が書かれてる本を少しでも多く読んで、楽しいと思えるようには、なれるのかな…)
そんな事をレティシアは思いつつもそれが言い出せず。
『次は、貴族の名簿帳を見せてほしいかな? 覚えておいて損はないと思うしこの家に産まれたからには、必要だと思うから』
そうテレパシーでリタに伝えると、リタは一瞬だけ不満そうな顔をしたがすぐに無表情に戻る。
「…わかりました。ご用意しておきます」
っと礼儀正しく返事が返ってくる。
レティシアが書庫に来るのは、ただの暇つぶしではない。
本を読むのが早いと言っても時間があると言っても、時間は無限にある訳じゃない。
必ず誰にでもその命に、いつか終わりが来る。
そして本の知識が必要になるのは、いつも突然来るのだ。
未来が見えたり、未来を知っているなら、このような備えなど不要なのかもしれない。
だけどこの世界での未来は、レティシアにはわからない事だ。
だからレティシアは、何事にも備えている段階なのだ。
(守りたいものがこの短期間で、できた…私が出来ることは、少しでも増やしたい…)
レティシアはそう思いながら、この日もリタに抱かれ食堂へと向かった