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旧作✿現在非公開中  作者: 元・深 夜 現・雪闇影
2章
57/116

静かな屋敷で

 

 ダニエルが帝都へと帰って、あれからひと月経とうとしている。

 彼が去った後、屋敷内はいつもの日常に戻ろうとする一方で、その雰囲気は、仕える主を失くしてしまったかのように静かだった。



『昨日もジョルジュ、出かけてたんでしょ?』



 部屋の窓から外を眺めていたレティシアは、外で会話をしているジョルジュを見つけると、初めてこの屋敷を訪れた時のように、いまだにこの屋敷に滞在しているルカに聞いた。



 ダニエルが帝都へと帰った後、一週間程過ぎてから突然エディットが、部屋から出なくなった。

 レティシアはそんなエディットの様子が気になり、初めは何度もエディットの部屋を訪ねたが、レティシアがエディットと会える事はなかった。

 だがそんなエディットとは対照的に、どこかへと頻繁に出掛けるジョルジュの姿をレティシアは度々見かけていたのだ。



「あぁ、何も報告は受けてないけどな」


 足を組んで本を読んでいたルカはそう答えると、本を閉じてさらに続けた。


「あれから、エディット様に騎士団も会えてない。エディット様が部屋から出た報告もないし、今の所、エディット様の状況がどうなっているのかを知ってるのは、リタとジョルジュだけだ」


『そうだったのね…そう言えば…お母様が部屋から出なくなってから、お医者様が一度来てたわね』


 レティシアは考えるように、この屋敷を訪れた医者の様子を思い返しながらそう告げる。


「そうなのか? 来客があって見たけど、そんな感じの人じゃなかったよ?」


 レティシアが言った事に対して、どこか腑に落ちない様子でルカがそう言うと、レティシアはその時に感じた事を伝えた。


『彼とすれ違った時、微かに体に染み付いた医者特有の匂いがしたのよ…』


「お前がそういうなら、そうなんだろうな…。それなら、何かしらエディット様にあったんだな…」


 レティシアにそう言われたルカは、レティシアの鼻の良さも知っているので、納得した様子を見せてから、何かを考えるように顎に手を置いて、眉を顰めていた。


(お母様が部屋から出てこなくなって、お医者様が来たなら、お母様がその後も部屋から出てこないのは、やっぱりルカも変だと思うんだね。伝染する様な病なら、定期的にお医者様が来るはず…なのに来たのは、あの一度きり…)


 レティシアはそう考えていると、ルカが口を開いた。


「なぁ、レティシア、エディット様に、会いに行かないか?」


『今回もリタに追い返されないかな? ここ何度かお母様の部屋に行ってるけど、合わせてもらえてないじゃん…』


 ルカがそう言うと思わなかったレティシアは、一瞬だけ驚いたが、すぐに悩むようにそう言った。


「そうだけど、確認しない事には、どうしようもないだろ? それに…俺の方で確認したい事があるんだ」


『…そうだね…もしかしたら状況がわずかでも変わってるかもしれないし…リタがいなければ少しだけ、部屋に入ってみるのも良いかもしれない…』


 レティシアは、そう言ってルカに駆け寄るとルカは立ち上がりレティシアに手を差し出した。


「会えなかったら、そのまま少しだけ騎士団に顔をだそう」


『うん』


 そう言ったルカの手をレティシアが握ると、二人でエディットの部屋へと向かう。


(お母様が部屋から出てこないから、屋敷内で働いてる人たちも心配してるんだろうなぁ…)


 エディットの部屋へと向かう途中、すれ違った使用人の表情がどこか曇っていて、それを見たレティシアはそう思った。


『ねぇ? そういえばモーガンは?』


「父さんなら先にオプスブルに帰ったよ」


『ふ〜ん』


(モーガン、先に帰ったのね…知らなかったわ)



 レティシアとルカの二人がエディットの部屋にたどり着くあたりで、リタがエディットの部屋から出てきたのを見たレティシアはルカの手を離すと、リタに急いで駆け寄った。


『リタ! 今日はお母様と会える?』


 そうレティシアがリタに聞くと、レティシアを見てどこか寂しげな表情を浮かべたリタが、レティシアの視線に合わせるようにしゃがんだ。


「今から、レティシアお嬢様を、お迎えに行こうとしていた所でございます。……レティシアお嬢様、私は…あなたの事も大好きですよ」


 そう言って、リタはレティシアを抱きしめると、レティシアの耳元で「大好きよ」っとささやくように言った後、レティシアを離した。


 リタの様子をレティシアは不思議に思いつつ、リタの顔を再び見ると、リタの表情は、いつもの無表情に戻っており、レティシアはそこから何も読み取る事が出来なかった。

 そしてリタは、レティシアとルカの二人をエディットの部屋へと通すと、そこにはいつも明るく出迎えてくれるエディットの姿はなく。


 ただ静かなその部屋の中で、エディットはベッドの上で横になっていた。


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