あの頃と変わらない
『ルカのバカ〜! すぐッ会えるよって言ったのにッ、全然すぐじゃないじゃんッッ! もうッどこに行ってたのよ! バカバカ! 全然連絡くれないしッ…通信魔道具をくれた意味がないじゃんッ』
レティシアはルカに抱きつき、時折彼の胸をたたきながら不満を口にするが、ルカは嬉しそうにそれを聴きながら、レティシアの頭をあの頃と変わらない手で優しく撫でる。
「仕事で他国に行く事になって、連絡手段も限られてたんだよ…ごめんねレティシア、遅くなったけどちゃんと会いに来たよ」
そう言いながらルカは、昔と同じようにレティシアの頭にキスを落とした。
「ルカ様、おかえりなさい」
そう言いながら、ニルヴィスが近付くとルカはレティシアを抱き抱えニルヴィスの方に視線を向けた。
「この服、ニルヴィスが作ったの?」
「はい。訓練に参加する事が決まった時に、ボクが作りました」
「かわいいね。レティシアのために、ありがとう」
「いえッ! ルカ様が無事に帰ってきて良かったですッ」
「心配をかけたみたいだね、さて…こっちに何の連絡もしないで来たんだけど、執務室に行っても良いかな? 話を聞きたい」
「はいッ! 大丈夫です!」
「レティシアは、そろそろ泣き止まないと泣き顔を皆に見られちゃうよ? いいの? レディーなんでしょ?」
『うるさいっ! ルカのバカ! 意地悪になったッ!』
「そうだね。ただいまレティシア」
ルカはそう言って、レティシアをギュッと抱きしめるとレティシアもそれに応えるように、ルカを抱きしめた。
『…おかえりなさい……ルカ…』
ルカに抱えられながら執務室に入ると、ルカの姿を見たロレシオとアルノエはすぐさま、胸に手を当て一礼する。
「「おかえりなさいませ。ルカ様」」
「ただいま」
そう言ったルカはソファーにレティシアを座らせると、その隣に座ってレティシアの涙をハンカチで拭きながら、ルカが口を開いた。
「それで? 今年は来るの?」
「その、本日その事で会議を開いたのですが、まだエディット様からなんの連絡がございません」
ルカの問にロレシオがそう答えると、少し目を細めて何かを考えるようにしながらルカは話を続ける
「ふーん? んじゃ、今年フリューネ家は警戒する気がないって判断でいいのかな?」
「それも、まだ連絡がございません」
「誕生日まで一ヶ月しかないけど? 遅くないか?」
「近頃エディット様とジョルジュ様が、ご不在の事が多く、そこら辺のやり取りがなかなか出来ておりません。これは我々の失態です、申し訳ございません」
片眉を上げ不機嫌そうに聞いたルカに対し、ロレシオは頭を下げたが、その姿をまじまじ見た彼は、呆れたように今度は溜め息をついた。
「はぁ…んじゃ、レティシアにはどこまで話した?」
「騎士団ができた経緯は、話せてません…ですが、我々が誰に仕えてるかはお話しました」
「他は許可が降りてないから、話をしていないって所か」
「申し訳ございません」
ロレシオがそう言うと今度は、ニルヴィスとアルノエも頭を下げるが、ルカはどこか面倒くさそうに話す
「まぁ、いいよ。君達が謝ることじゃないしね。
エディット様がレティシアの事を大切にしてるって事はわかってる。だからあの子がオプスブルに送られたんだろ?」
「はい」
(あの子ってアンナの事? 精霊達がルカに報告したのね)
「帝都での事はどうなってる?」
「何の進展もございません。いまだに原因がわからないままです」
「こっちも他の者たちから、なんの報告がない、まぁ俺と連絡が取れなかったのがそもそもの原因だろうから、そこは謝るよ」
ルカはそう言いながら、レティシアの頭を撫でると、先程までとは違って彼女に優しい表情を向けならがレティシアに聞いた。
「レティシアは俺に報告しておきたい事、何かある? 聞きたい事でもいいよ?」
そう言われたレティシアは、顎を指で触りながら考えて聞きたかった事を口にする。
『ルカは帝国の闇だね? その事実に間違いはない?』
「「「 !!! 」」」
レティシアの質問に対して、ルカ以外の三人に一瞬で緊張が走り次第にピリピリとした雰囲気が、部屋の中を漂った。
それでもレティシアは特に気にする事もなく、そんな彼女をルカは目を細めて質問の真意を探るかのように、鋭い視線を向けた。
『まぁ、間違ってないと思ってるよ。だからルカの答えは必要ない、多分まだ話せる状態じゃないと思うし、私がルカの立場なら身内以外にまだ話さないから、それで聞きたい事は特にないかな? 報告って言っていいのかわからないけど、それでもいいなら伝えときたい事が少しだけある』
「話を聞くよ」
(三人の様子とルカが否定しなかった事から、諜報、暗殺とかに関わってるのは確定だね。そうなるとこの先何かあった時は、ルカに情報を収集してもらった方がいいのかもね)
『ありがとう。一つは、前にも報告してもらったけど、去年のお父様の行動は ″ 初めて来た時と同じだった ″ だから、今年も高い確率で来ると私は思ってる。
これに関しては、確定じゃないけど何かしらの目的があって来てたのなら、今年も来ないのは、その目的が達成できたって事になると思うの、目的がわからない今の状態で、できればそれは避けたいから、そう言った願いも含まれてる。
二つ目、私はお母様から避けられてる。
理由を考えたけどわからなかった…でも私に対して何か隠してるとしか思えないの。
三つ目、今年お父様がこの屋敷に来て接触してきたら、お父様と話すつもりよ、お父様が私と会いたがってた理由をいい加減知りたいからね』
そう言ったレティシアの話をルカは腕を組んで聞いていたが、その表情は最後の方になるにつれて、険しいものとなった。
それでも、レティシアの譲らないっていう気持ちを感じとったのか諦めたように口を開く。
「…わかった。今回の護衛は俺がつくって事でいい?」
『その方が、あっちも油断してくれると思うからお願いしたいわ』
「あぁ、わかった。それなら表向きは俺が護衛につく、三人は引き続き裏からレティシアの護衛を頼む」
「「「承知いたしました」」」
『ルカ、後ね…私…宿舎で寝泊まりしてるから』
「その報告は、ちゃんと受けてるから心配してない。三人にどこまで話した? お前の事だから書庫の入室許可してんだろ?」
『魔力量が見える事と、書庫の事と夜な夜なやってる事は…』
「そっか、それなら良い。書庫の事を話してないのに、レティシアが夜な夜な書庫であんな事をしてるってわかったら、さすがに三人が可哀想だからね」
ルカにそう言われたレティシアは、ルカから目を逸らし、アルノエとニルヴィスそしてロレシオまでもが、ルカから目を逸らしたのであった。




