会いたいと思う気持ち
「ジャン! ごはん! おにく!」
「はははっ! レティシア様は、本当にお肉が好きですよね! 残念ながら本日は、お魚でございます」
料理の仕込みをしながら、笑ってジャンはそう言った。
それに対してレティシアは椅子に座って、足をぶらぶらとさせながら嬉しそうにしゃべる。
「おさかなも、すき!」
「そうですか、それなら良かったです」
なぜ調理場にレティシアがいるかと言うと。
精霊に聞いた所、調理場にエディットがたまに出入りしてるのを、聞いたレティシアがこっそりと調理場にやってきたのである。
「ジャン、今日おかあさま、ここにくる?」
「そうですねぇ〜、本日はこちらへと来る予定はありませんよ〜もう少しでレティシア様の、お誕生日ですから準備で忙しくしてるのでしょうね」
「そっか!」
(誕生日の準備で忙しいなら、わかるけど…昨年もお父様が来たから、プレゼントをもらったぐらいで別にパーティーをした訳じゃない…そのお父様に関して今年、来ないとも、来るとも、報告をもらってない…本当に今年は来ないの…?)
レティシアは、そう考えながらも表情には一切出さずに、嬉しそうに出されたココアを飲んでいく。
「ジャン。ありがとう、またあとでね!」
ココアを飲みきったレティシアは、そう言って椅子から飛び降りると、今度はテラスの方に向かうが、向かっている途中でパトリックと会い、レティシアがエディットはテラスに居るのか聞いた所、本日も出かけていないと言われた。
(絶対に変だ…まるで避けてるみたい? でも、避ける理由は? アンナの時の事? いや、でもお母様に限ってそれだけで避けたりしない…)
「レティシアちゃん、どーしたー?」
『あ、ニヴィ。お母様に会えなかったなぁって考えてた。そっちはもう会議は終わったの?』
「うん。終わったー。でも、これと言って進展はないかなぁ〜?」
『そうなんだね……! ねっ! 気分転換に一試合しない?』
「残念ながらしませーん。今日レティシアちゃん団服も練習着も着てないじゃん」
『着替えてくるからやろ!』
「やーだよっ!今日ボク達を、止める人が居ないんだから」
『ニヴィのケチーーー!』
「ケチでも別にいいよ〜
それにボクこの後、訓練所に顔を出して指導するから、レティシアちゃんと一試合は、出来ないんですー! レティシアちゃんも一緒に訓練所、行くなら着替えておいで」
『はーい!』
そう元気に返事したレティシアは、急いで着替えに戻るが浮遊魔法を使ってないため、レティシアの後ろを走ることもなく、ニルヴィスは歩いて追い掛けていった。
鏡の前でクルクル回るレティシアの様子を、ニルヴィスは嬉しそうに、目を細めて腕を組みながら眺める。
「本当に、その団服を気に入ってくれてボクは嬉しいよ」
『かわいいんだもん! ニヴィ、洋服を作るの好きよね。宿舎に置いてある洋服、ニヴィが作ってくれたのばっかだし』
そうレティシアは言いながらニルヴィスに近付くと、ニルヴィスは椅子にレティシアを座らせ髪の毛を丁寧に梳かしていく。
「ボクは作るのが好きだからね〜でも、騎士団に入ってなかったら作る事もしなかったと思うよ? リボン黒にするね〜」
『そうなの?』
「うん、そんなもんだよ。騎士団に来たから色々試したい事をやってるんだよ、家に居た頃は息が詰まる思いしかしなかったしね。兄さん達と常に比較されてたし」
『そっか…』
「ボクを騎士団に誘ってくれた、ジョルジュ様には感謝しかないけどねッ!」
「はいっ! かわいくできたと思うよ!」
『ありがとう! ニヴィ!』
レティシアは鏡で自分の姿を確認すると、リボンと一緒に髪の毛が編み込まれた、ハーフアップだった。
こういうのも手先が器用なニルヴィスは得意だ。
また鏡の前でクルクルしたくなる気持ちをレティシアは、グッと堪えてニルヴィスと一緒に訓練所に向かった。
「そこ!! 踏み込みが浅い!!」
「「「はいっ!」」」
「声だけじゃなくて、剣先にもしっかり意識を向けろ!」
「「「はいっ!」」」
「剣だけ振り回すな!」
「「「「はいっ!」」」」
(こういう真面目な所をみると、ニヴィってやっぱり副団長なんだって思うよね、アンナの時もそうだったけど…いつもは、ニコニコしてるし、軽くウェーブがかったショートボブの無邪気な少年って感じの、かわいいタイプなのに)
そう思いながらレティシアは、ニルヴィスの様子を観察しているとニルヴィスと視線が合い、口の動きだけでおいでっと言われた。
なんだろう?って思ってレティシアが走っていくとニッコリ笑ったニルヴィスは少しだけ意地悪そうな顔をした。
「レティシアちゃんは、座ってないで走ってきてね。今日の訓練参加してなかった罰だよ」
そう言われてしまったレティシアは、「せっかくかわいくしてもらったのに…」っと小言を言いながら白の雫隊の訓練へと参加した。
「つーかれーたーっ!」
そう言いながらいつもの木陰にゴロンっとレティシアは寝っ転がったが、その直後ニルヴィスに呼ばれる。
「レティシア様! もうすぐお昼なのでそんな所で寝てないでくださーい!」
(あーもう。あれからずっと走ってたんだから、少しくらい休んでも罰は当たらないって…)
レティシアは、心の中で悪態をつきながらすぐに体を起こすと立ち上がりすぐさま歩き出す。
一瞬レティシアの背後から勢いよく風が吹いて、レティシアが髪の毛をおさえた。
「お前は、変わらないな」
風が止むとレティシアの後ろから、そう声が聞こえた。
レティシアは、声がした方を振り返ると自然と視界が歪んでいく…。
最後に会った頃より少しだけ大きくなったその姿に思わず。
『貴方も、そんなに変わってないと思うけど?』
っとレティシアが言うと声の主は、レティシアに向かって優しく微笑みながらしゃがんで口を開いた。
「レティシア、おいで」
そう言われた、レティシアはその声の主に向かって走り出して抱きついた。




