書庫と3人の騎士
あの日から何度もニルヴィスは、訓練所を氷漬けにする事があって、その度レティシアは笑ってたが、最近は扱いも慣れたのかそういった事もなく、ニルヴィスは自在に剣を扱えるようになった。
(使い慣れるまでに二ヶ月半か…やっぱり早いね、半年はかかると思ってたけど)
レティシアは、そう思いながら浮遊魔法を使いながらニルヴィスの相手をしている。
『ニヴィー。本気を出していい?』
「いや! 待って!! レティシアちゃんまって!!!」
そう言われたレティシアだが短剣に火属性の魔力を流すと、短剣より大きくなり短剣の倍となった。
レティシアは、短剣を構えて一息吐くと空中を蹴り、ニルヴィスと距離を詰める。
ニルヴィスの氷剣とレティシアの炎剣が激しくぶつかる音がし、そこを中心に水蒸気の渦が広がった。
「レティシアちゃん、ボクは待ってって言ったよね?」
『そうだっけ?』
首を傾げながら答えたレティシアは、続けて素早く体を回転させ次の攻撃に出る。
すると再び剣がぶつかり合う音と共に水蒸気の波紋が広がる。
「レティシアちゃん頼むから、ボクの話を聞いて!」
『聞いてるってばっ!』
レティシアは、ゾクリとする感覚を背中に感じて口角を上げた
そしてニルヴィスに何度も切りかかる。
それをニルヴィスは、危なげなく全て受けるとレティシアと距離をとった。
「ねぇー! ちゃんと聞いて! それ以上本気を出したらダメだからね! お願いだからね!」
レティシアは、距離を取られたことにより短剣に込める魔力量が上がる。
そしてレティシアの瞳が淡く光、揺らめいたと思った瞬間、風を纏って先程より早くニルヴィスとの距離を縮め、ニルヴィスに近付くと短剣に込める魔力をさらにあげる。
「そこまで!!!」
剣と剣がぶつかる寸前で二人の動きが止まった。
『……』「……」
(まだ体が幼いんだ、これだけで、体が悲鳴をあげて震えてる)
鼓動が大きく脈を打ち、短剣を握る手が震えてるのを見てレティシアは、そう思った。
「もぉー! レティシアちゃんボク、まだ練習中だって言ってるでしょ!? それとも、ボクごと剣を切るつもりだったの!?」
『ごめん。途中から楽しくなった…』
「楽しくなったって…最後、相当魔力を込めてたよね? だからボクが言ったよね! 本気を出さないでって!」
『ぅう…ごめんなさい』
「もう、そんな顔するなら、ちゃんとボクの話をちゃんと聞いてよ」
そう言いながら、ニルヴィスはレティシアの頭をくしゃっと撫でた。
「普段、付与された武器を使わないが、普通に属性を纏わせるより威力が高いのか?」
先程の打ち合いを止めた、ロレシオが近づきながら聞いてくると、それに対してニルヴィスが答えた。
「普通の付与ならここまでじゃないよ。
ボクは、元々魔力量が高いけど、身長とか筋力を補うために使ってただけだし。実際ちょっと魔力を通しやすくなってるから、属性を纏う感覚に近いかな? 元々、付与が付いた武器を使うの魔力量が少ない付与術師とか、潜入で魔力の消費を抑えたい時だけだから、戦闘では、付与何て殆ど補助に近いんだよ」
『そうだね。私も魔力量を増やして、それに耐えられる体が出来たら、術式は書かないで剣に属性纏わせる思うよ? 誰かをサポートする付与は使うかもだけど』
「ねぇ? レティシアちゃんなんて言った?」
(ん? あっ!)
「俺も聞きたいかな? レティシア様」
「オレも聞きたい…」
突然アルノエが現れてレティシアの心臓は大きな音をたてた。
(ノエ! あなたは、どこから湧いてきたのよ!!!)
『なんの事かな?』
レティシアは額に汗をかきながら、彼らから視線を逸らす。
「魔力量って産まれてから増える事もあるけど、″ 増やす ″ もんじゃないって認識なんだけどボク」
『えっと…それについては……』
「それについては?」
『ルカが許可を出したら言う!!!』
「ルカ様ねぇー。今さ連絡が取れてないの、わかってて、言ってるのかな? ねぇ〜? レティシアちゃん」
ニッコリ、ニルヴィスが微笑みながらレティシアの顔を覗き込むが、レティシアは目を合わせないように必死に顔を背ける。
(この微笑みは、絶対目が笑ってないやつだ! 私は知ってるぞ!!!)
「オレ達、夜な夜な、レティシア様が何かやってるの知ってる…ルカ様から、レティシア様が倒れないように見守ればいいって言われてるけど、それと関係がある?」
『!! ルカがそう言ったなら言う必要はないと思うけど…しょうがないか……″ 増やせる ″ のよ魔力量って』
三人の瞳が期待を込めて輝くが、レティシアは溜め息をつきながら話を続けた。
『でもね、ずっと観てきたけど三人には、残念ながら無理。
三人は、他の人より敏感に魔力量を感じる事はできても、視る事はできないから、魔力量を視る事が出来ないなら、魔力量増やそうとして死ぬよ?』
そうレティシアが言うと、沈黙が流れる…そして方法が予想出来たのか、アルノエが真っ直ぐにレティシアを見つめながら喋りだした。
「それでレティシア様は、夜な夜な、死ぬかもしれないギリギリを、一人で過ごしていたんですか? オレ達に見つからないように、コソコソやって。
今さらですが…なぜルカ様が夜は魔力探知に神経を注げって言ってたのが分かりました」
ロレシオとニルヴィスは下を向いて表情が読めないがアルノエは、苦しそうな今にも泣き出しそうな表情をしていた。
『ごめん』
「いいですよ。オレ達三人じゃ、レティシア様が倒れた事しかわかりませんので……オレ達…そんなに頼りなかったですか? そんなにオレ達の事、信用できませんでしたか??」
『ちがうよ』
「違くないですよ!!! オレ達に隠れてずっとやってて!! たまたま、自分でボロを出したから言って、オレ達がレティシア様に信用されてなかったって事でしょ!!! 少なくともオレ達の事を少しでも考えてたなら、詳しく言わなくても! オレ達が自由に出入りできない、書庫に隠れて行ったりしてない!!!」
アルノエは、苦しい胸の内を言うかのように涙を流しながらそう叫んだ。
が、そう言われたレティシアは「あれ?」と思い首を傾げた。
『信用してない訳じゃないし、そもそも三人とも…私が居なくても書庫に入れるよ?』
レティシアがそう言うと、三人はキョトンとした表情で、レティシアの方を見た。
『あれ? えっと…伝えた気でいたんだけど…その様子じゃ…言ってないね…、三人とも書庫に入れるようになってるんだよ…一人で書庫に入った事がないの?』
「ないですッ…いつも一緒なのでッ…」
鼻をすすりながらアルノエがそう言うと、大切な事をしっかりと伝えてなかった事により、彼らを不安にさせて傷付けたと思うと、レティシアの胸が少しだけ傷んだ。
『ノエ、ごめんね。ニヴィもレオもごめんね…きっと一瞬、書庫に入れないのに、中で倒れて死んでる私を想像したんでしょ?
でも大丈夫だよ。そんな失敗したりしないし、そもそも普通に三人とも書庫に入れるから』
レティシアは、そう言いながら小さな腕でアルノエを抱きしめた。
「はいっ」
そう返事をしたアルノエは、少しだけレティシアが苦しいって思うくらいギュッと抱きしめ返したが、レティシアは何も言わずに、アルノエを抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。
「レティシア様、俺の事も愛称で呼んでくれるんですねッ…アルノエもニルヴィスも呼んでくれないのに…」
「ロレシオ何泣いてんの〜? さすがに団長を愛称で呼べないよ〜諦めて〜! ノエもさ、レティシアちゃん苦しいと思うよー?」
ニルヴィスにそう言われアルノエの力が緩む
「…ごめん」
『いいよ。……三人とも…心配をかけて本当にごめんね?』
そうレティシアが言うと、ニルヴィスはロレシオを引っ張りアルノエ、レティシア、ロレシオの三人をニルヴィスが抱きしめた。
「ボク達の、お姫様はやっぱ変わってるね」
「「あぁ」」




