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旧作✿現在非公開中  作者: 元・深 夜 現・雪闇影
2章
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ニルヴィスのお願い。

 

 あの後、アンナの身柄はオプスブル家へとジョルジュが連れていったと、ジョルジュ本人から聞いた。

 普通なら、そんなに大きな罪でもないと思う。

 少なくとも、私が転生を始めるきっかけになった世界では、国に対しての裏切り行為だったら重罪だったけど、アンナがやった事ぐらいじゃ命を落としたり、捕まったりする事じゃなかった。

 それでも、その後に転生したいくつかの世界では、とても命が軽かった…私も、そういう世界に慣れてしまってるのかもしれない…。

 魔力暴走の話を聞いた時も、アンナの時も…同じだった…私自身は、死にたくないって思ってるのに、自分と無関係だったり裏切りや守るべき者を傷つけた人の命は軽く見てる…不思議よね…。


 …それに…アンナは…もう…普通に生きていけない。

 彼女は、フリューネ家とオプスブル家の双方から裏切り者の烙印が押された。

 そして、オプスブル家に送られたとなれば、アンナの今後は彼らに委ねられた事になる…

 今回の話の顛末を聞いたお母様が、アンナを許さなかったのも大きいか……


「はぁぁ……」


 そう思い考えていたレティシアは、大きな溜め息つきながら木陰で寝転ぶと、葉っぱの隙間から差し込む日差しを眺めた。



「レティシア様、また考え事ですか?」


 そう言いながら、アルノエがレティシアの隣に腰掛ける


『んー。アンナの事、聞いたからね少しだけ…』


「そうですか」


 アルノエはそれだけ言うと、それから何も言わなかった。

 雲がゆっくりと流れ、木陰にそよ風が心地よく流れる。



「レティシア様、そろそろ訓練の時間も終わりますので、そろそろ中に戻りましょう。本日はエディット様がお出かけになられてますので、午後は、少しだけオレと文字の練習しましょう」


 そう言われたレティシアは勢いよく体を起こし嬉しそうに答えた。


『うん!!! 文字の練習する!』


「最近、また上手になった事ですし、きっとエディット様もルカ様も驚かれますよ」


『ノエ、戻ろう!』


 そう言いながら、レティシアは立ち上がり急ぎ足で宿舎へと向かう。


(最近お母様が、お出掛けになることも、テラスでお茶をする事も減った…何かあるのかな? そもそも、アンナの事を考える暇があるなら、私は今自分にできる事を考えるべきか……)


 そう思いレティシアは、気持ちを切り替えた。

 レティシアは今世で自分の力になりたいと言っていた人から、裏切られた、そこにどんな理由があろうとも、彼女がレティシアを裏切った事実だけは、変わらない。



 宿舎でシャワーを浴びた後、執務室へと向かうとニルヴィスとロレシオも執務をしながら、レティシアの文字の練習に付き合ってくれた。


 休憩を入れるのにアルノエがお茶を入れていると、ニルヴィスが文字の練習をしてるレティシアに近寄って手を合わせる。


「ねぇねぇ。レティシアちゃんお願い!」


『んー?』


「すっごく、個人的なお願いなんだけど、ボクの使ってる剣に付与してほしいんだけどダメかな?」


『…内容次第……』


「わぁーい! ありがとう!! 実はさ、これなんだけど!」


 そう言いながら、嬉しそうに手のひらから剣を取り出したニルヴィスは、レティシアの前に綺麗に磨かれたシルバーの剣を置いた。


「それね〜。今、使ってる剣で付与されてるのは氷何だけど、何か最近ずっと相性が良くないんだよね〜」


 レティシアは、そう言われ剣を触りながら剣と付与術の相性を視る


(付与と剣の相性が良くないわけじゃ、ないのね…)


『……』


(…そっか…あなた…)


「ボクが使いやすいように、また氷を付与してくれないかな?」


『……無理…』



「…そっか〜! 無理なら良いんだ! レティシアちゃん、ごめんね、ありがとう!」


 レティシアに無理だと言われ、少し肩を落としながらニルヴィスがそう言って、剣をしまおうと剣に手を伸ばそうとした時


『…書き換えてもいい?』


 剣を見つめたまま、そう言ったレティシアは、ニルヴィスの返事を待たず剣に向かって指先に魔力を流し始める。



【汝刻まれし刻印絶ち、汝玉風纏いし風の刃となり真の力をその身に刻め】



 レティシアが剣の上でそう術式を書くと、剣が薄く緑色に変わっていき、レティシアの瞳が淡く光る。

 すると剣に刻まれていた文字が浮き上がり、一文字一文字新たに書かれた文字と入れ替わるように、剣に刻まれる。


 全ての文字が刻まれると、レティシアの瞳も元に戻り剣も淡く緑色に変わった。


 レティシアは、そっとその剣に触れると。


(これであなたの願い通り主人を守れるよ)


 そう心の中で言った。



 ニルヴィスは、付与が終わった剣を何も言わずに手に取ると、刻まれた文字を見る。


「レティシアちゃん、ボク氷がいいって言ったよね? 何で風なの?」


『その()が、望んだからだよ。何度か、ニヴィが魔法を使う所を観たけど、風属性と相性が良かったんだよ。それ何年も使ってた剣じゃない? その()ニヴィ自身とすごく相性がいいんだよ、だからニヴィの風ともすごく相性がいい。

 それで望まれたから術式を書き換えたの、氷が使いたいのなら水の属性の魔力を流しながらその()使ってみて、面白いくらいに今までより使いやすいから、でも風の方がいいのは確かよ? ふふふ』


 楽しそうにレティシアは剣の説明をすると、その様子に首を傾げながらもニルヴィスは、少し魔力を込めて剣を握った。


 その瞬間彼の周りから天井まで一瞬で凍りついた。

 レティシア瞬時に自分の周りに防御壁(バリア)を張りそれをそれを防いで防御壁(バリア)解くと


『ふふふ。ニヴィ、すごいね〜』


「嘘だろ…ボク…剣に纏わせるイメージで魔力を流しただけなのに…」


 レティシアが楽しそうにしているのに対して、今のこの現状に、ニルヴィスだけじゃなくロレシオとアルノエも驚いてる。


『相性がいいって言ったでしょ? 魔法を使う人には、それぞれ相性がいい属性があるのよ。

 僅かだけど魔法を使う時、それが出てるの、その()はニヴィと相性がいい、今までと使い勝手が違うけど、ニヴィの力を最大限に引き出してくれるよ』


 レティシアは、ニルヴィスが張った部屋の氷を溶かしながら楽しそうに話しす。


「…ニルヴィス……その剣ちゃんと使えるように訓練しとけよ」


 いまだに困惑を隠せないロレシオがそう言うと、ニルヴィスは、剣を見つめたまま何度も頷いた。


「前回と全然違う…」


 そうアルノエが呟くと、レティシアは答える。


『これは、使用者を指定してないからね。その剣自体が拒否して、力を抑える可能性はあるけど』


「これは、一般的な付与に近い形だよ。でも一般的な付与は物に対して、役割を刻むだけだ。

 例えば、通信魔道具は色々刻まれるけど簡潔に言えば、声を受信して送信して、とかボクが使ってた剣に刻まれてたのは、魔力を流したら氷の刃になれ、とかね。

 これは意味を持った ″ 言葉 ″ が刻まれてるからまたちょっと違うけど…」



 レティシアの説明に付け足すようにして、ニルヴィスがそう言うと剣を満足気に元の場所へ消して、しまった。



 そして翌日の訓練でニルヴィスが訓練所を氷漬けにし、その状況をレティシアは転がるようにお腹を抱えて笑った。


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