レティシアは街へと出る
お店とお店を行き来する人々の足音と、露店や屋台からは元気な店主の声がし、レティシアの心は楽しそうに弾んでいる。
いつもの屋敷とは違い、騒がしいぐらいに人々の声が聞こえ、声と一緒に白い息が太陽に照らされて光り輝き、レティシアには人々が生き生きと生活してるように見えた。
石畳の道を元気に走り回る子ども達と、それを追い掛ける母親がレティシアの目に止まり、レティシアは少しだけその光景が羨ましいと思った。
(今世の私では、出来ないけどいつかお母様と一緒に街に来たいわ)
「うへぇ〜まだ全然寒いや〜。ねぇ! レティシアちゃん、やっぱボクが抱っこしてあげるよ! 戻っておいで! ね?!」
『いい。ノエは、抱きついてこないけど、ニヴィは抱きついて暑苦しい…』
「も〜酷いなぁ〜」
ニルヴィスが寒そうにしながらレティシアに聞くが、ニルヴィスに先程抱き着かれて暑苦しかった事もあって、レティシアはニルヴィスの話を断り。
『しつこいと、嫌われるんだよニヴィ。』
っと言いながら、アルノエの首に腕を回しアルノエから離れない意志をみせた。
「レティシア様! あちらはいかがですか?!」
っと満面の笑みで言いながら、ロレシオがおもちゃ屋の窓から見える積み木の玩具を指さす。
『はぁ…ロレシオ、さっきも言ったけど、玩具は買わないわよ? 遊ばないもん…それともロレシオ達は、私がぬいぐるみや積み木で遊んでる姿を想像できるの?』
「俺はできます!」
「ボクもー!」
「オレも……」
『はぁ……あなた達の前で遊んでた事なんてないでしょ……』
レティシアはそう言いながら、頭を抱えたくなった。
少し細かい話と改めて自己紹介をされてから、レティシアは毎日のように、早朝訓練を終えた後お昼まで、騎士団の執務室で過ごしていたが、早朝の訓練に参加していたために、疲れてしまい昼食前や昼食を食べてる最中に、寝てしまう事が増えていた。
そのためダニエルが帰ってくる事もあり、レティシアは現在騎士団の宿舎に一室仮部屋を貰っている状態であり、そこで寝起きしている。
そのおかげもあって、ダニエルが帰宅してる今でも顔を合わせる事もなく、充実した毎日を過ごしていたが、昨年と同様にダニエルが昨日訓練所に顔を見せ、今日は宿舎に入ってこようとしたので、鉢合わせする前に髪色と瞳の色を一時的に変えるアイテムを使って、街へとレティシア達はやってきたのである。
(そう言えばお母様、去年あげたピアスをお父様が来るからって、今年も着けてくれたんだよね…そのおかげで、今年も指輪が贈られた事もわかったけど…今年も着けてくれるなら作り直せば良かったわ。
結局あの指輪だって、ノエ達に協力してもらって遠目で見ても、変な所なかったんだよな〜、魔力の流れも違和感なかったし、それでも精霊達に聞くと、やっぱ嫌だって言うし……、んー……何なんだろう?
それにお父様、今回全くお金の話してない…研究は続けてるって言ってたのに…、屋敷内で私を探してるって事は、お金の事は私にお願いするつもりだったのかな?
鍵もかけて魔法で部屋開かないようにしてきたから、無断で入られる事もないし、何か盗まれるって心配事はないけど…)
レティシアが顎に手を当てながらそう考えていると、アルノエが心配そうに話しかけてきた。
「レティシア様? どうかしました?」
『ん? あ〜ノエがいつ私に対して、敬語使わなくなるのかなぁー? って考えてた!』
元々、気分転換に外へ連れてくるつもりだったアルノエに、ダニエルの事を考えてたとレティシアは言えず、咄嗟にそう言った。
「、、、ごめん」
『いいよ、いいよ! 冗談だから気にしないで! あっ! あれ食べて見たい!! ノエ、買って!』
素直に謝ったアルノエに悪いと思い、レティシアは話題を変えようと目に付いた屋台を指さす。
「肉串? いいよ、買うよ」
そう言いながら、アルノエは露店の方へと向かう。
肉の焼ける美味しそうな匂いがし、レティシアは大きく鼻から息を吸い込んだ。
(いい匂い…もう匂いからして美味しそう…)
「おじさん、肉串一本いいいかな? できたら彼女が食べやすいようにしてくれると、助かるんだけど」
「兄ちゃん、あいよ! 貴族様の兄妹かい? 見かけない顔だな〜」
「あぁ、妹を今日初めて家の外に連れ出してるんだ、他の兄弟達も一緒だから、ちょっとした家族旅行みたいな感じだよ」
「そっかそっか! 肉串一本200セリーだよ! うん…ちょうどだな…まいど! あ、ちょっと遠いけど、あそこに見える時計台の近くに俺の店があるから、気に入ったらいつか来てくれよ!」
「おじさん、ありがとう。いつか行けたら行ってみるよ」
お金を支払い、少し露店から離れるとアルノエは肉串をレティシアに手渡した。
「レティシア様どうぞ」
「ノエ。ありがとう」
アルノエに買って貰った肉串を、落とさないようにレティシアが食べていると。
「ねぇ、レティシアちゃん、おいで! ほら! 絶対ノエよりボクの方が安定してるって!」
『はぁ…なんで寒いのか本当にわからない。自分の周りが暖かいように魔力を流せばいいだけじゃない。それともニヴィは、火属性と風属性使えないの?』
ニルヴィスが手を叩いて、子供に対してするおいでおいでを、レティシアにするので、レティシアはニルヴィスに向かって呆れたようそう言った。
「……は?」
『だ・か・ら! 纏えばいいじゃん! いつも訓練でみんな鎧のように魔力纏ってるじゃない、あれの応用だよ。寒い時は火属性と風属性、暑ければ水属性と風属性の魔法を使って自分の周りだけ、過ごしやすいように気温を調節すればいい、ルカは言わなくても会った時からやってたよ?』
「「「……」」」
「ボク…夏場でも、冬場でも、レティシアちゃんが、庭で座って寝てるって言う…屋敷の皆が不思議に思ってる話の真相がやっとわかったよ……」
「オレも……」「俺もだ……」
「ボク達と違って、常に自分の周りの温度調節してたんだね…」
『常にじゃないよ? 必要だと思った時だけだよ? 冷たい空気も少し肌にまとわりつく暑さも別に嫌いじゃないからね』
レティシアは、そう言って再び肉を頬張った。
(んーー!! お肉美味しぃーー!)




