本当のこと。
昨晩アルノエから渡された洋服に袖を通したレティシアは、鏡の前で自分の姿を何度も嬉しそうに確認していた。
「レティシア様、お似合いですよ。これでレティシア様も我々の一員ですねっ」
レティシアの嬉しそうな様子に、笑いをこらえるようにアルノエが冗談ぽく言うと、レティシアは顔を赤く染めながら振り返る。
『…もう、行こっ! みんなも待ってるし!』
『えぇ、そろそろ行きましょうか』
アルノエの方に向かって歩き出したレティシアだったが、すぐに足を止めてアルノエの方をみた。
『あ、ねぇノエ、他の人たちが居るならテレパシーは、使わない方がいい?』
「いえ。今日お会いする方達は、レティシア様がテレパシーを使える事をご存じなので、何も問題ないです。他で知ってるのは、活動時間が深夜ですので、お会いする機会はないと思います」
レティシアの質問に対しそう答えたアルノエは、団服の胸ポケットから手紙を取り出すとその手紙を机の上に置いた。
そしてレティシアの方に向かいレティシアを抱き上げると、そのまま部屋を出て訓練所へと向かった。
◇◇◇
「レティシアちゃん似合ってるね! かわいい!」
そう言ったニルヴィスは、レティシアとアルノエが訓練所に入った所で、レティシアに駆け寄ると自分がデザインした団服を、レティシアが着てるのを嬉しそうな満足気な顔をした。
「素材はボク達の着てる団服と同じだから、丈夫さも熱や寒さへの耐性は保証はするよ〜ちょっとごめんね〜」
そう言ってレティシアの首元のリボンに赤いブローチを優しい手つきで着けていく。
『ニヴィ、とっても素敵な団服を作ってくれてありがとう!』
「い〜え! レティシアちゃん今ボクが着けたブローチに少し魔力を流してもらっていいかな?」
『う、うん?』
笑顔のままニルヴィスにそう言われレティシアが「なんだろ?」っと疑問に思いながらもブローチに魔力を流すとブローチにフリューネ家の家紋が浮かび上がる。
「うん。レティシアちゃんは、ちゃんと護りたいものを決めてるんだね…ルカ様の言う通りだ。
それなら…やっと双方からお許しも出た事だし、本当の事を説明するかな…
あのね? ボク達第1騎士団って名前じゃなくてね…本当はフリューネ騎士団って言うんだよ。
フリューネ騎士団は、帝国じゃなくてフリューネ家に忠義を誓ってる…だから、帝国の騎士団と違うんだよ。
例えばだけど、戦争が起きてもボク達は帝国のために剣を抜いたりしない。
フリューネ家が判断し戦争に参加するってなったら戦うけどね、もちろん。
そうじゃないなら、領地から1歩も出る事はない。
帝国が滅びようとも、フリューネ家が無事ならそれでいいって考え方だよ。
まぁ、他の領地にある騎士団も実際の所、ボク達と同じだと思うけどね〜
それで、ここからが他領とも違う所なんだけど、フリューネ騎士団の中にフォス隊とスキア隊があって、その2部隊はオプスブル家から送り込まれた人達も多いの。
だからその人達の中にはオプスブル家に忠義を誓ってる人もいる、ボクやノエとロレシオなんかは、特にそうだね。
午前中にレティシアちゃんとルカ様が見てたのは、フリューネ家だけに忠義を誓ってる、雪の雫隊と白の雫隊で、ほとんどがフリューネ領に住む者が志願して、適正テストを受けて、受かったら入ってる、領民が多いんだ。
だからここに近い人達は、訓練しにここに来るけど、そうじゃない人は来ないで領地の安全を守ってる、仕事内容も巡回とか警備が多しね〜仕事が終わればボク達と違ってそれぞれの家に帰るし。
ちなみに、今レティシアちゃんに着けたブローチはボク達のこのブローチと同じで、フリューネ家とオプスブル家に忠義を誓った、フォス隊とスキア隊だけが着けてるんだよ。
忠義を誓ってて尚且つ、魔力量が高いとフリューネ家の家紋が浮かぶんだ。
もちろん家紋が浮かばなかった者は、今はルカ様が許可しない限り所属する事はできないけどね。
これを付けてる者は、仲間の証…オプスブル家とフリューネ家を絶対裏切らない誓いの証だよ…
後そのブローチに、魔力を流しながら触れてれば音声だけなんだけど話せるよ、それ通信魔道具だから団服を着ない時は、空間魔法の中に閉まっておいてね〜」
そう語ったニルヴィスは、レティシアが理解できたか少し不安そうな表情を一瞬だけしたが、レティシアが真剣な面持ちでブローチに触れながら、何かを考えていたので安心し微笑んだ。
(忠義…フォス隊…スキア隊…オプスブル家の騎士達なのね…だからあのレベルの高さだっのか…仲間の証…誓いの証…仲間…誓い…)
昔の仲間達との誓いや、彼らと過ごした日々をレティシアは思い出し、失ってしまった事に悲しみが押し寄せる、それでも新しく出来た仲間達が居ることを思うと、複雑な心境のレティシアであったが、触れたブローチからポカポカした温かい気持ちが溢れてくる気がした。
「さっ! レティシアちゃん! 後は、また詳しく話すからさ、とりあえず皆が君を歓迎してる! あっち行って挨拶しよっか!」
そう言って、歩き出したニルヴィスの後をアルノエが静かについて行く。
来るのを待っていたであろう、ロレシオがニルヴィス達が近付くと大きな声を出した。
「集合!!!」
その声を聞いた騎士達が一斉に訓練を中断し駆け足で集まる。
ロレシオの隣に並ぶようにニルヴィスがたち、さらに隣にアルノエがたった事をロレシオが確認すると、ロレシオはまた口を開いた。
「本日より、フリューネ騎士団フォス隊の訓練へと参加する事になった。レティシア・ルー・フリューネ様だ! レティシア様のここでの行動は、全てに箝口令を敷く! 絶対に外に漏らすな!! それと皆の者わかってると思うが失礼のないように! いいな!!!」
「「「はいっ!!!」」」
「それとフォス隊、隊長と副隊長は後で挨拶するように!」
「「はいっ!」」
「レティシア様、挨拶お願いしてもよろしいでしょうか?」
ロレシオに挨拶を求められ、アルノエに抱かれたままレティシアは頷くと騎士達に向かって頭を下げた。
『私は、レティシア・ルー・フリューネです。本日より、皆様と一緒に訓練への参加を許してもらいました、よろしくお願いします』
「ありがとうございます。それじゃ! 訓練の続きに戻ってくれ!」
「「「はいっ!」」」
足早に騎士達が訓練に戻るとアルノエは、レティシアを下ろし彼も訓練へと参加しに行った。
レティシアも訓練へと参加したものの、まだ2歳に満たない幼女は体力作りをするしかなく、ひたすら走り込みをして、疲れたら休んでを繰り返しながら、騎士達の話に耳を傾けたり彼らと話したりして過ごした。
フォス隊の隊長と副団長もレティシアの元を訪れて挨拶をし、その時に帝都で不思議な奇病が発症していて、その調査で現在スキア隊がこの屋敷に居ない事を、レティシアは聞いた。
(体が徐々に結晶化して最終的に亡くなる病か…治療法もまだ見つかってないし、発症の原因も不明…ただその病を患ってる人の多くが魔力量の少ない庶民や…下級貴族……過去の人生でもそんな病なんて聞いた事もない…)
そう考えながら、レティシアはまた訓練へと戻った。




