レティシアはこの世界を学ぶ
「私は、エディット様が幼い頃から専属侍女をしております。エディット様と一緒に育ったようなものですよ」
(へぇ〜 お母様と仲がいいと思ったけど、幼い頃から一緒なら納得だわ)
レティシアの世話をしながらリタが、エディットとの関係性を話すとレティシアはそう思った。
「後数年したら、レティシアお嬢様にもエディット様と私の時のように、年が近い専属侍女がつきます」
(歳が近い侍女が付くならもう既に、数名の候補は決まってるのかもしれないわね)
「そしてレティシアお嬢様についた侍女に何も問題がなければ、私のようにレティシアお嬢様にお子様ができた際には、乳母をやる事になります」
淡々とそう言ったリタと違い先程まで、ニコニコ聞いていたレティシアの顔が凍りついた。
(まって!? それじゃ、私の世話もしつつ子供の世話もするの!? フリューネ家って案外ブラック企業じゃない? 大丈夫なの?)
そう思ったレティシアの顔は、愛想笑いをしようとして笑顔が引きった表情になった。
産まれてからこの約一年でレティシアは、少しはこの世界について知る事が出来た。
この世界には、魔獣や精霊そして人族という種族以外にも、他種族が存在していて、結構ファンタジーな世界だという事がわかった。
この世界には。
・イシアス大陸 ・エヴルムスペ大陸 ・フェルシア大陸
・リスライベ大陸 ・ベルグガルズ大陸
の五つの大陸が存在し、レティシアが産まれたこのベルグガルズ大陸には、王国が四つと教国が一つそして、レティシアが住むヴァルトアール帝国がある。
ヴァルトアール帝国の左側には、海が広がっており国境方面は、魔の森と呼ばれ森と三つの王国が隣接している。
ヴァルトアール帝国の八割が人族であり、逆に他種族が少ない国でもある。
その理由はヴァルトアール帝国が愛された大地と言われ、大地から溢れるマナの多さに、影響を受けやすい体質の人族が多く産まれてくる為に、普通より寿命も長くて二百年は生きる。
そのため寿命が長い他種族を無条件で受け入れては、国土が足りなくなって困るので、そもそも簡単には受け入れてないのがこの帝国に他種族が少ない理由の一つだ。
そして他種族が、どんなに長い期間このヴァルトアールで暮らしても、人族のように寿命の恩恵を受けることがない、という結果が出ているので、他種族から圧力がかからないのも、一つの理由なのだ。
だが全ての人族がその恩恵を受ける訳ではない。
例えば、他国の人がこちらに嫁いで来たり、子供の頃こっちに住み始めたからっと言ってその恩恵を受ける訳のでなく、大地の恩恵は、住み始めてから孫の代でやっと受け始めるようだ。
その話を聞いた時のレティシアは、咄嗟にエディットとリタの顔を見た事でこってり二人に怒られていた。
「レティシアお嬢様、女性に年齢を訪ねたり、そのように年齢の話になったからと言って、女性の顔を見ては行けませんよ」
っとレティシアの耳元で、コソコソと家令のジョルジュがそう言ってニッコリと微笑むと、レティシアは、このジョルジュも若い頃は、やらかしたのだろうっと勝手に思う事にした。
レティシアの父親は、レティシアが産まれてから一度もレティシアに会いに来る事も、レティシアが住んでいるこの屋敷を、訪れる事もなかった。
その事でレティシアは、父親が既に離婚や死別と言った理由で居ないと思っていたが実は違うのだと知ると、とても驚いていた。
レティシアの父親、ダニエルは婿養子でありながらも外に愛人を作り、エディットが妊娠してからは領土にあるこの屋敷に戻らず、ずっと帝都の愛人宅で暮らしてるようだ。
(私のお父様って、クズって言われる側の人間だったのね)
っとダニエルの話を聞いたレティシアは、そう思った。
レティシアの外見はまだ一歳児ぐらいだが、幾度も転生しているため、実年齢というものがあれば、レティシアはとうの昔にエディットの年齢すら超えてるのだ。
(今世も家族に普通の家庭を、期待するのは諦めよう…、お父様に少しでも期待したら不幸になる…できるだけ関わらない方が良いかもしれないわね…当面の私の目標は、平凡でも幸せに生きたいだからね)
レティシアはそう思うと少しだけ、悲しそうな顔をした。
勝手に、家族に期待をし、その後辛いを思いをするのは自分だと幾度となく繰り返す転生で、レティシアは身に染みた事からの決断だった。
(まぁ、別に帰ってこなくてもいいから、頼むから厄介事だけは持ち込んで来るなよ!!)
っとレティシアは、思って祈らずにはいられなかった。