我儘は言わない。
「レティ、あなたのお父様から今年も来ると…先日手紙をもらったわ」
まるで場を凍らせる魔法でも使ったかのように、エディットの一言が、その場にいたレティシアやリタを含めた使用人全員の動きを止めた。
「それでね? …ジョルジュに確認してもらったんだけど、ルカ…今国外に居るらしくて連絡が取れないの…だから今回、来られるかまだ分からないのよ…」
っと言いながら困ったような表情でレティシアを見つめる…。
(…ルカ今海外で来れないかもなんだ…そっか…そうなんだ……)
レティシアは、目頭が熱くなるのを感じで思わず俯いてしまう。
(泣くな、泣くな、体に気持ちを持ってかれるなぁー!)
っとレティシアは自分に喝を入れるように、持っていたスプーンを強く握りしめて、表情を作りながら顔を上てにっこり笑った。
『なら、仕方ないですね。お父様が滞在してる期間中、私はできるだけ書庫に籠ることにします』
レティシアはそう言って食事を続ける。
そんなレティシアをちらちらと、リタやエディットが心配そうに様子を伺っていたが、無理なものは無理だとわかってるので、レティシアは我儘など言わない。
言ったところで、エディットや周りを困らせることしか出来ないのも体が小さくとも中身が大人なのでしっかり理解してる。
レティシアはジャンが今日、レティシアにエディットがこの事を伝えるのをわかってて、レティシアの好物にしてくれたんだと、デザートまで出てきた時が気が付き、ジャンとエディットの小さな心遣いに嬉しく思った。
レティシアは昼食を終えると、庭園がある方に向かう。
庭園の一角に、誕生日でもらった種達を植えている場所があり
いろいろな季節にレティシアが咲く花々を楽しめるようにと、贈られた種袋の中からレティシアが一粒一粒取り出し、庭師のサリムに聞きながらそれらを植えたので、この時期に花を咲かせてる花もある。
レティシアが花壇にたどり着くと、ポケットから種袋を取り出し袋から一粒取り出す、花壇の前にしゃがみこみ穴を手で掘り起こし、先程の粒を穴の中に入れた。
ふんわり土を被せて…「頑張って大きくなれよー」って思いながら水魔法を使い水を与えてから、土で汚れた手も綺麗にする。
(この時期のこの時間に種まきをするのはよくないって思うけど、なんかしていないと気持ちが落ち着かないし色々考えちゃうんだよね…)
レティシアはそう思いながら立ち上がると、ドレスをパンパンっと手で叩くと今度は、エディットに会いに行こうとテラスのある方の庭へと歩きだす。
半分くらいまで行った辺りで今まで堪えてものが溢れ出しそうに視界が少しずつ歪む。
(花壇からテラスまで…独りだと遠く感じるよ……ルカの…バカ……)
「失礼します! レティシアお嬢様! 私は第1騎士団所属アルノエ・ワーズです! 差し出がましいかと思いますが、目的地まで私がお連れしても、よろしいでしょうか!!」
突然後ろから声がし、目元を拭ってからレティシアが振り返ると少しつり目で赤髪の青年が立っていた。
(そんな気分じゃないけど、歩くの遅くて見兼ねたんだろな…侍女もメイドも連れてないし、断る方が申し訳ないか…)
「うん、おねがい」
「ありがとうございます! どちらまで行かれますか?」
特に断る理由もないためそうレティシアが応えると、レティシアを抱き上げながらアルノエはそう、聞いた。
「にわ!」
「テラスですね、お連れいたします」
抱き上げられた瞬間、彼の瞳にレティシアの視線が止まる。
(あ、この人の瞳レッドパープルなのね…ルカのは深紅だったけど…この人のも綺麗だ…)
抱き上げられ彼の眼がより近くで見えた事により、レティシアは少しだけ赤目の少年を思い出しながら、アルノエの瞳を見つめていると言いにくそうにしながら、耳をほんのり赤く染めてアルノエが口を開く。
「あの、お嬢様…少々言い難い事なのですが、男性の顔も女性と同様で異性が、長く見つめるものではございませんよ」
「ごめん! でも、め! きれい!」
「あー… 、ありがとうございます。自分は、お嬢様の瞳の方が綺麗だと思いますよ」
っとアルノエは、まだ耳を赤くしながら少し照れたようにそう言うと、レティシアも瞳を褒められ嬉しくなる。
「アルノエ、ありがと」
「いえ、事実ですので」
身長が高い彼がレティシアを抱き上げた事によって、視線が高くなり目の前に広がる世界が新鮮に映る。
アルノエは、キラキラ目を輝せながら喜んでるレティシアを少しだけ盗み見ると、テラスへと向かう歩みをゆっくりにし、周りの風景をレティシアが楽しめるようにと、配慮してくれた。
そしてテラスのある庭に着くと、アルノエは木陰に移動しレティシアを抱いたまま待うとしたが、レティシアが「おりるー!」っと言ったのでその場に下ろすと、二人は話しながらエディットが来るまで一緒に待った。




