幼児は逃げ出す
レティシアはあれから数日、ルカとは気まずい雰囲気が流れてる。
(はぁ…完全にやった…信用されてないって思ったら急に距離を感じて距離をとっちゃったよ…謝るべきだよね、初めっから言えないって言ってたし……もぉー! 何やってんのよ私!)
そうレティシアが考えてるとジョルジュに用事があると、出ていったルカが戻ってきて、そのままレティシアと目を合わさることもなく衣装部屋へと向かい、鞄を取り出し自分の荷物を詰め始めた。
それを見ていたレティシアは、気まずさも忘れ咄嗟にルカに声をかけた。
『えっ?! ルカ! 今日、帰るの?!』
「いや、明日には帰る」
『そうなんだ…急だね…』
「あぁ、お前の言う通り仕事は終わったからな」
レティシアの胸に棘が刺さったように痛む。
(い、いま、言わなくちゃよね…これを逃したらもう言えないもんね…)
『あ、あの日は、ごめん…ルカに最初に言えないって言われてたのに、結局教えてもらえなかった事で信用されてないって思った…』
「…」
『……』
「…そっ…」
沈黙が流れてルカに、それだけ言われたレティシアは、いたたまれなくなり、透明化魔法と浮遊魔法を使い逃げるように部屋を出た。
◇◇◇
(逃げてしまった、、、自分から突き放しておいて突き放されたら傷付くとか本当…バカみたい…)
レティシアは書庫の隅にある本を1冊取りながら先程の行動を振り返る。
(何がしたかったんだろうね私は…)
泣きそうになりながらレティシアは先程とった本をギュッと抱きしめながらゆっくりその場に腰を下ろした。
レティシアが本を開くとそれは、ちょっとした童話だった。
(子供じみた行動をしてる今の私にはお似合いね)
レティシアは、そう自嘲気味に笑うとゆっくりと本を読み進めていく…。
その本の内容がいつも一緒に過ごす精霊達の話だったようで、レティシアはルカと一緒に過ごした時間を思い返すとじんわり眼に涙が滲んだ。
「…別に信用してないわけじゃないよ」
レティシアの前方から声がして、彼女がパッと顔を上げてそちらの方を見上げるとルカが立っていた。
ルカはレティシアに近づくと、向かい側にしゃがみ込むみレティシアの頭を優しくポンポンっとしてから、話し出した。
「正直、少しだけ傷ついたけど、レティシアが傷付いたのもわかってる…突き放されて、お前には関係ないって態度をとられて、俺より幼いレティシア相手なのに、どこまで踏み込んでいいのか、わからなくなった」
『ごめん…』
「別にいいよ、レティシアが言った事は間違ってないし俺が踏み込みすぎただけだから」
『んーん。違うよ…ルカの事情も考えてなかった私が悪い…』
「……ねぇ、レティシア……それならさ…出来たら、今までのように考えてる事とか俺に教えて欲しい。レティシアを裏切ったりしないし、力になれる事は力になるから……」
『うん…』
「…それじゃ、あの日レティシアは何を考えてたか聞いてもいい?」
ルカは優しくレティシアにそう聞くと、レティシアもあの日何を考えていたか話し出した。
『帝国の管轄じゃないなら、情報ギルドがあると思ったの…』
「情報ギルドならあるけど、レティシアのような子供が行く場所じゃないかな?」
『…それでもあるなら、そこに情報があるかもしれないじゃない…?』
「子供のレティシアが直接行ってテレパシーを使って話すの?」
『ジョルジュかパトリックに行ってもらおうかと…』
「それこそないな。あの二人はエディット様の指示なら聞くけど、まだレティシアの指示は受けないよ」
レティシアが言ったことに対してルカは呆れたようにそう言うとレティシアは、心配そうにルカの方を見ながら話を続ける。
『ルカは私のお願い、聞いてくれるの?』
「だから、何を考えてるか聞いた」
ルカにそう言われて、鼻の奥がジーンっと痛くなり熱を持ち始めたのをレティシアは感じた。
『どんな本を読んでも納得が行かなくて…情報ギルドを使って魔塔が研究してる資料とかあったら、もっと分かるかな? って思って…』
そう聞いたルカは、真剣な顔をした。
「なるほどな…結論を言えば魔塔に入るのは、まず無理だろうな…外で情報を漏らすような連中でもないし…この帝国なら尚さらだ」
(完全に行き止まりなのね…)
「…それと……これ…、さっき渡そうと思ったけど、レティシアが逃げるように部屋を出ていくから渡しそびれた」
そう言いながらルカは、胸ポケットから懐中時計のようなものを取り出すとレティシアに手渡した。
「通信魔道具だよ、前に読んでた本にもあったと思うから使い方は分かるよね?」
『うん』
「俺と父さんは明日の朝には帰るけど、直接連絡が取れた方が楽だと思うから渡しておく」
ルカに手渡された通信魔道具を見ながら、レティシアは複雑な気持ちになた。
『通信魔道具は…』
「うん? 通信魔道具は?」
『通信魔道具は…、テレパシー使えない…』
「…あっ……」
そうレティシアに言われて、その事実を思い出したルカは、少しだけ困った表情をした。
「…頑張って伝えて…?」
そう言ってレティシアが赤ちゃん言葉で話すのを想像したのか今度は肩を震わせながら笑いだした。
『ルカのバカ! それなら紙に書くよ!』
「ミミズ文字な?」
ルカはそう言ってさらに笑いす。
何度転生しても文字だけは、始めからなのでレティシアも綺麗に書く練習をしなければならないのだ。
『練習する…』
「うん。笑ったりしないから、たまにそれを見せてね…」
ルカはそう言うと、優しく微笑んでレティシアの頭を撫でた。




