ささやかな誕生日
レティシアが朝、起きるといつものようにアンナが身支度をしに来てくれ、それが終わる頃ルカと一緒にエディットとリタ、そしてジョルジュとパトリックがレティシアの部屋へと入ってきた。
「レティシアお嬢様、お誕生日おめでとうございます。本当は直接みんなレティシアお嬢様に、お祝いを申し上げに来たかったのですが、状況が状況ですので、わたしが皆の代表してお祝いの気持ちとプレゼントをお持ちしました」
アンナは、そう言って大きめの箱をレティシアに渡した。
「アンナ、あけて、いい?」
「はい! もちろんです! もうレティシアお嬢様の物です!」
レティシアが箱を開けると中には、手紙やリボン…庭の花で作ったであろう栞や花の種が入っていた。
「ありがとう、アンナ」
「いえいえ! 皆にもお嬢様がありがとうと言っていたと、お伝えしときますね! それではわたしは、あまり長居する訳にいかないので、わたしはこれで失礼します」
微かに涙ぐんだアンナがそう言ってレティシアの部屋から出ていく。
「レティシアお嬢様、自分とリタそしてジョルジュ様からはこちらを」
っと言ってパトリックが箱を手渡すとレティシアは箱を開ける。
開けた箱の中には、純度の高い水晶が入っていた。
水晶は、良くこの世界の魔導師が魔法を使う際に、使用される杖や指輪といった物に使われる事が多い。
魔法の威力を大きくしたり、大掛かりな魔法を使う際に使われる事も多く、純度が高ければ高いほど魔力が伝わりやすく、宝石と同じように高価なものとなっている。
レティシアは、パッと顔を上げて3人を見るとにっこり笑って微笑んでいた。
『これ。高かったよね? ありがとうパトリック、リタ、ジョルジュ…』
「レティシアお嬢様に喜んでもらえたのでしたら、嬉しい限りです」
っとジョルジュが本当に嬉しそうに言う。
エディットは、少しだけ気まずそうにしながらもレティシアに箱を差し出した。
「レティ…私からは、これよ? いつもと余り変わらなくて残念かもしれないけど……」
そう言われレティシアが箱を開けると、フリューネ家の紋章であるホワイトドロップを元に、デザインしたネックレスが入っていた。
花の真ん中にはブルーサファイアが光り輝いている。
ホワイトドロップとは、この世界に存在する花のひとつで、花びらが白く花の中心に向かうほど花びらが青くなっているのが特徴的な花だ。レティシアが初めて本で見た時は、パッと見地球にあるスノードロップに似ているとレティシアは思ったが、花びらが四枚あり雪の降る時にしか花を咲かせない、妖精の花と言われている花だった。
『お母様ッ! ありがとうございます!』
っと言ってレティシアはエディットに抱きつくと、エディットは嬉しそうに抱き返していた。
その後リタが「ジャンからのプレゼントです」っと渡されたケーキと軽食を出し、みんなでささやかな誕生日パーティーをレティシア達はした。
◇◇◇
「また後でね。レティ」
そう言いながらエディット達は、昼過ぎにはレティシアの部屋を後にした。
あまり長居をして、ダニエルがレティシアの部屋を訪れても困るからだ。
「俺は、もともと来る予定じゃなかったから、とりあえずこれな…」
ルカはどこか恥ずかしそうにしながらも、そう言って黒と青の糸で編んで作ったブレスレットをレティシアの手首に付けてけた。
「ちゃんとした素材で作ってないから、すぐに切れちゃうかもだけど…」
『んーん! ありがとう! すごく嬉しいよルカ!』
ルカにもらったブレスレットを見ながら、レティシアは胸がポカポカするのを感じた。
ささやかだけど、たくさんの人がレティシアが産まれた事を祝ってくれた、その事実がレティシアにとって、とても嬉しかった。
(後で皆の誕生日も調べないとなぁ)
そう思いながらも、レティシアはエディットが着けていた指輪を思い出すと思った事をそのまま口にした。
『ねぇ、あの赤紫の宝石がついた指輪、なんか変な感じしなかった?』
突然幸せに満ちた空間を壊すように、レティシアがそう言うとすぐに、レティシアは自分の口を手で押さえた。
片付けをしていたルカは手を止めて、困ったような表情をしてレティシアの事を見ていたが、呆れたように話し出した。
「それ、今話題にしなくても良かった事だよね? 雰囲気ぶち壊しじゃん…」
『気になって…ついね。ごめん…』
っと言いながらレティシアは、申し訳なそうに頭をかいた。
ルカは軽く息を吐き出すと、レティシアがもらったプレゼントをしまいながら話を続ける。
「変な感じはした、でも何なのかわからない」
『だよねぇ、私も同じ意見…』
「…エディット様に内緒で覗くか?」
『魔力の流れ?』
「そう、違和感の正体が分からない以上、確認出来ることは確認しておいてもいいと思う」
『そうだねぁ…でもルカはまだ瞳が淡く光るから、視るなら私だよね…お父様が滞在してる期間は、お母様との接触を控えるように言われて、食事も部屋でとってるのにどうしよう?』
「問題はそこなんだよ、お前に許された場所って、この部屋か入るのに鍵が必要な書庫と午前中騎士達がいる、訓練所だけだもんな」
『うん…接触の機会が全くない…遠目に見た時にでも覗くかぁ…』
「そうだな。それなら俺も出来るから二人で確認しよう」
そう話し合いその日は、二人部屋で過ごした。
少しだけ浮き足立ってる屋敷の中を動き回るのは、控えた方がいいと二人で判断したからだ。




