さようなら……
(傲慢だった…自分の力を過信しすぎていた…。
あの惨劇は、全て自分の力に自惚れていた自分の責任だ…)
このダンジョンに到着し中に少しだけ、歩みを進めた辺りでダンジョンに対する違和感を覚えた。
だが、それが何なのかハッキリとしない…。
違和感があると言えばあるけど、ないって言われたらそこまで……。
第六感とは、また違う違和感に気持ちがモヤモヤする。
そのため、自分の五感に集中を向け敵を探知するのに空気を震わせた。
そうやって周りを警戒しながら歩みを進めていくと、今度は仲間に違和感を感じた。
ダンジョンに対する違和感も、先に進むにつれ増している事もあり、それがどうしても気になった。
「なんか変じゃない?」
目の前を歩くララにそう聞いたけど。
「どこが変なの? 今日のルルこそ変よ〜 何かに脅えてるみたい」
そう言いながら、ララはクスクス笑って答えてくれた。
自分でも、気が付かないうちに自分もまた、違和感のひとつになってるのか?って思って自分の体を確認したけどいつも通りだった
すると前方からこちらを呼ぶ声がした。
「ほらー! ルル、ララ、行くよー! これが終わったら、パーッと飲もうよ!! 家を建てる資金この報酬があれば、余裕で貯まるんだし!」
「おっ! サラそれ、良いな!! 俺は久しぶりに浴びるほど飲みたいぜー!!」
「…なんだそれ? いつもレツは、大体浴びる程に飲むだろ…」
「はぁ? んなわけねぇだろ? リツ俺は、いつも控えめなんだよ」
「あ〜 いいですね〜 僕も久しぶりに飲みたいです〜」
「「「 ユーゴだけは飲むな!! 」」」
和気あいあいと、楽しそうに会話をしながら先へと歩みを進める仲間たちをみて、何度も転生してるし、最悪自分がいれば何とかなるか! っとそう思って歩みを進めた。
でもこの時に感じた、仲間やダンジョンへの違和感の正体が分からずとも、引き返すっという判断をするべきだった。
さらに先へと進む道中突然ダンジョンが激しく揺れた。
BOSSが暴れてるのか? っと、呑気に言い合う4人を見て違和感がシミのように不安へと私の中で変わり広る。
辿り着いたBOSS部屋を前にして六人でゴクリッと喉を鳴らす…。
今までいろいろなダンジョンや、危険とされるドラゴン討伐を、ギルドの指示や国の命令で攻略して来たが、この部屋は、今までの比較にならないものだと、ドア越しにでも感じ取れ、嫌な汗が背筋を冷たく流れた。
ここまで来てやっと、引き返すべきだという判断を下し、仲間へ引き返す事を告げると、誰ひとり反対する事も無く私の決定に黙って頷いてくれた。
だけど皆がBOSS部屋に背中を向けた瞬間。
< バンッ!!!!!! >
静寂を破るように大きくBOSS部屋が開き、何かに引っ張られるかのように中に吸い込まれ、BOSS部屋内に放り込まれた。
身体中に痛みが走り、横たわった体を起こし顔を上げると、目の前にこのダンジョンの主がいた。
その威圧感で上から押しつぶされてるかのように動けず…
嫌な汗が全身から湧き出る。
(これレイド戦のボスだ…六人で勝てるはずがない…!)
そう心の底から思った瞬間だった。
「ララとルル!! 立ち上がって、扉が開くか確認しろ! その間俺達で奴の足止めする!」
そうレツに言われて、震える足で何とか立ち上がり、退路を確保するため扉に何度も転びそうになりながら、向かったが扉は開かなかった
一足先に着いたララが悲鳴に近い声で叫ぶ。
「開かないよ!!」
<どん!!!>
音がした方を見ると仲間が薙ぎ払われ、壁にぶつかって落ちていく瞬間だった…。
(自分がいればどうにかなる! ってアホか! 何度も違う人生をやり直しても、この楽観的な考え方は、変わらないのか!? クソッ!!!)
そう私は心の中で自分に毒を吐きながら、剣を構えると次の瞬間、全身に強い衝撃が走った。
そして間を置かずもう一度強い衝撃が走る。
落ちていく感覚がして、もう一度衝撃を感じた…。
「ゴフッ」
っと口から血を吐き出される。
(あー…全身が痛い…壁に叩きつけられたのか…)
破裂したであろう傷口は、燃えるように熱くそれでも、体はどんどん冷えていく……。
(これじゃ持って数分って所か…)
後悔しても何も解決出来ない事は、わかっているが切り裂くように胸が傷んだ。
そこに追い打ちをかけるよう、この現状でも分析と何とか打開策を弾き出そうとする、自分の頭に怒りと悔しさが混ざり合う。
遠くに見える仲間達は、ピクリとも動かない…。
(あの様子じゃまず…助かってないだろうなぁ……)
目の前のBOSSは、全員薙ぎ払うと今度は転がってる私達をどうするのか考えてるようだった。
(ごめんッ…頼りにしてくれたのにッ…信頼を裏切ったッ…こんな所で死ぬべき人たちじゃないのに死なせたッ…なんど謝っても許してもらえないのわかってる…でも、ごめんなさい……)
瞼を焼くような熱い涙が、私の眼から溢れた。
冷静に頭だけがこの瞬間も動いていた。
もうすぐこの体は、活動の停止をするのだろう。
既に指の一本すら動かす事も息をすることもままらない…。
それでもこの状況を記憶していくかのように…。
頭だけは最後の時まで止まる事は、なかった…。
――― …さようなら… ―――