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アイデスの憂鬱  作者: 森住千紘
Sprouting of qualities : 2 〜 資質の萌芽 〜
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 Various signs. II 〜 様々な兆し、縋り付く者 〜

 忙しない。

 後続をセンターフライに仕留め、一失点で何とか切り抜けられた。

 上位打線の実力は本物、そこに続く乙女達もまだ拙い部分はあるものの、必死に喰らい付いてくる。五番の打球にしてもアウトにはなったものの、少し軌道がずれていればツーベース。

 打ち取った、と言うよりは打ち損じてくれたという印象だ。

 試す事、それが課題ではあるのだけれど、結果だけを見れば私の成績は最底辺に近い。

 三回までに三失点、もう少し取り繕えたのではないのかと考えてしまう。失点の原因の分析に頭を使いたい所ではあるのだけれど、幸か不幸かこちらも打順は一番から、つまり私。

 初回同様私の近辺は忙しない。


 一葉に手伝って貰いながらプロテクタを脱ぐ。レガースを外す為に前屈みになった所に影が差した。

 顔を上げるや否や胸ぐらを掴まれた。

 そこにあるのは眼鏡の奥の冷徹な眼。


「何だ、あの配球は。被安打も失点も全部お前の所為だ」挙動とは裏腹に圭の口調は落ち着いていた。「練習試合? それぞれの課題? 何を思って試合に臨もうが構わないけれど、手持ちのカードで何が出来るか考えるのが捕手の役目じゃないのか」


 まったく、言いたい放題とはこの事だ。流石にムッとして、胸ぐらを掴む圭の右腕に手を掛ける。


「なら事前に方針を伝えろよ。直近で構想外の条件出してきやがって」

「そういう事を言ってるんじゃない」圭は舌打ちする。「何でスライダーを軸に添えた? 未完成なのは解っていた筈だ」

「は?」一応気を遣い、そっと圭の右手を胸から離す。目は圭からは離さない。「お前が言ったんだろ。スライダー使えって」

「確かに言ったが、それで抑えろなんて一言も言ってない」

「何が言いたい」


 圭は僅かに目を開いた。


「解らないのか?」ゆるりと首を振り溜息。「もう少し柔軟に考えられる奴だと思っていたけれど、下方修正だな」

「……言わせておけば」


 立ち上がる私の肩に降りてくる手の平。

 物理的な距離が縮まる私と圭の間に割り込む人影。


「痴話喧嘩は後でやれ」呆れ混じりに理香が言う。私に目を向け顎をしゃくる。「自分のもう半分の役目を疎かにすんな、あと青山……」理香は眉根を寄せ苦笑する。「利き手じゃなかろうが、手ぇ出すのはダメだろ」

「は、はい」


 私は声と共に、圭は理香から目を逸らしてから小さく頷く。そんな圭をちらりと見てから準備に取り掛かる。

 心の中は靄だらけだ。


 配球がどうのと言われた所で、取れる策なんて大してない。しかも提示は直近。考える時間もあったもんじゃない。

 と、ここまで考えて、これは言い訳だと気付いた。

 自身の周りに浮かび上がる苛立ちの気泡が弾けて思考を偏らせている。


 私は悪くない。

 そう考えた時点でそれは逃げ。そんな思考の正当性を主張した所で、理解を得られる筈も無し、醜い自己主張にしかなりはしないだろう。

 けれど、客観的に分析した所で、感情は簡単に収まらないのが人というもの。

 切り替えなければと思うのだけれど、絡みつく靄はおいそれと晴れてはくれない。

 凡そ、打席に立つ精神状態ではなかった。


 靄に纏わりつかれて集中しきれず、二打席目はスライダーを引っ掛けてショートゴロ。

 散々も散々、申し開く気分にすらならない。

 自己嫌悪じみた思いをかなぐり捨て、この現実をしっかり受け止めなければと、何とか気持ちを落ち着かせベンチに戻り腰を落とすや否や、再び神経を逆撫でられた。


「全然一番の役目全う出来てないよね」相変わらず目を合わせないまま悠希が吹っ掛ける。


 他人事の様にそれを聞き、仰る通り、と一旦はそう思ったのだけれど、言葉が浸透するにつれ、私の中の感情の堤防にひびが入る。

 これ迄の様々なやり取りで、私の感情の堤防の耐久値は著しく下がっている。


 止めなければ、と思う心はまだ残っている。

 まともに相手にしなければ良いだけ。

 正面を向いてしまえば、おそらくそれは決壊する。

 だから。


「ごめん、ちょっと捉えきれなかった」


 実際事実なのだ。

 相手投手の夜川千彩。彼女のストレートは速い。狙わなければ降り遅れ、ヒットゾーンに落とすのは難しい。だから一打席目と同様に未完成な変化球を狙ったのだけれど。


 この打席、相手バッテリィは私に対し変化球を軸に組み立ててきた。

 その中でもスライダーの精度は高水準でまとまっていて、ストレートで差し込まれる前にと思ったのが運の尽き。

 つまるところ、半端な変化球を早打ちするつもりだったのだけれど、見事に裏目に出た訳だ。集中出来てない打席での結果としては、まあ順当。 


「捉えきれなかったって」嘲笑気味に悠希は笑う。「相手は素人なんでしょ? いくらでもやり方はあるんじゃないの? コントロールだってそこまでじゃないみたいだし、目は良いんじゃなかったっけ」


 私は小さく深呼吸する。

 ああ、ダメだ。こんな挑発に乗ってはいけない。

 自分を律しろ。

 野球、しようよ。その言葉を何度も呑み込む。


「私が一番だった方が良かったんじゃないの?」


 目を合わせないまま、呟く様に悠希が言う。

 私は力無い笑顔を作る。まともに相手にしてはダメだ。


「打順は監督が決めたんだから、しょうがないよ」


 お願いだから、もう勘弁して。

 これ以上煽らないで。

 私の口が開く前に。


「監督の”お気に”だから仕方ないよね。経験積ませる為にもさ、出さなきゃいけないし」

「そんなんじゃないって」


 張り付いた笑顔が剥がれ掛けている。


「じゃあ、実力?」悠希は嗤う。この日初めて私と目があった。そこにあったのは嘲りの光。「それが事実なら打ってるでしょ? しょぼいバントヒットなんかじゃなくてさ」


 いつからだろう。彼女がこうなってしまったのは。

 初対面に程近い、あの日の紅白戦の時の彼女はこんなでは無かった。陽気でお調子者じみていて、朗らかに笑う乙女だった筈。

 何が彼女をこうさせたのだろう。

 今の彼女の言葉は何かに塗れている。

 結果ありきの言いたい言葉。

 そこに向かうが為に、向かいたいが為に、重箱の隅を突いて回る。

 私だって未完成。箱を探せば残り物だって出てこよう。


「しょぼいバントヒットって……」乾いた笑いが出る。寸での所で決壊を防ぎ、少しだけ反論。

「バントでもフォアボールでも出塁には変わりないと思うけど」

「じゃあ、前の打者が塁にいる時はどうすんのさ。打てるなら打つべきだと思う」再び俯き気味になって悠希は続けた。「そんな手段でしか塁に出れないならさ、一番打者失格だよね。ここはさ、軟式のクラブじゃないの。名のある強豪校なんだからさ」


 ああ、それまで引っ張り出すのか、と思う。

 こちらがどれだけ結果を出そうとも、正論を吐こうとも、着地点に辿り着く為なら何だって使う。ホント、いつからこの目の前の齧歯類じみた愛らしい乙女は議論が出来ない者に成り下がってしまったのか。

 内心溜息。

 思いの外、私達の間にある溝の根源が低レヴェルなものだった事に辟易。

 この時の私の精神状態も相まって、尚早の決断に傾いてゆく。


「それ、関係なくない?」

「んなことないよ。うちのレヴェルに達してないのは事実じゃん。打てもしないで、出来たばかりの寄せ集めのチームに三失点。関係ないなんて言える?」


 おや、と思った。

 目の前の乙女は事前の情報を呑み込んでいないのか。

 仮に呑み込んでいないとして、実際のプレイを見れば解るだろうに。相手は新設校の素人集団じゃない。全国クラスのプレイヤが中核を担う、紛れもない挑戦者だ。


 レヴェルが低いのはどっちだよ。

 そんな言葉が脳裏を過ぎる。違った意味で私の堤防のひびが増す。

 もう良いかな、と諦観じみた事を思い、口元が上がりかける。否、僅かであっても上がっていたのだろう。悠希は嘲笑じみた笑みを僅かに残し、眉間に皺を寄せた。


「何笑ってんの? 私何かおかしい事言った? 普通ここで笑える?」


 明後日の疑問符の嵐。

 さてどう答えよう。この言葉が浮かんだ時点で、私の心は決断していたのだろう。

 私の口が開く。

 けれど、その前に。


「ユウ、もうやめようよ」


 割って入って来たのは月島早苗。モデルじみた長身のショートカットの乙女は泣きそうな表情で、薄ら笑いを浮かべる私達の間に立った。


「最近どうしちゃったの? 誰かにあたるなんてらしくないよ」

「別にあたってなんかないよ」悠希はぷい、と早苗から顔を背けた。「私は事実を言っただけ」

「事実?」早苗は首を傾げた。「事実って何? もし斑目ちゃんが……」


 早苗の言葉をかき消す様に悠希は自分の主張を被せる。


「そもそも、軟式出身者が試合に出るなんて早すぎでしょ。捕手は何だかんだで守備の中心。いつどこでポカするか解らない奴には務まらない」


 さっきから聞いていれば、散々な言われ様。今日は言われたい放題な日だなあなんて、場に相応しくない長閑のどかな感想すら出て来る始末。私にそう思わせるのは、彼女の言い分が的外れだからなのだけれど、反論するのも何処か億劫になり始めていた。

 だから傍観を決め込む。

 助け舟と呼んでも良いのかは解らないけれど、早苗の参入は話の矛先が変わる兆し。


「そういう事は言わない方が良いよ」早苗は眉尻を下げる。今にも泣き出しそうな表情で周囲を窺い、小声になった。「斑目ちゃんを選んだのは監督。ユウの言い方は取り方によっては監督批判になる」

「だからさ、それは贔屓なんだって」悠希は苛立たしげに言う。「客観的に見れば誰だって解るよ。変わっちゃったのはサナの方。どうしたのさ。私ら常に上目指してたよね? その為にここに入学したのに、なんでそんな奴に手を差し伸べようとするのさ、訳解んないよ」


 早苗は息を飲み、一瞬だけ遠くを見る様な目をした。

 何かを決意し、振り絞って出した様な声はか細く、言葉頭が掠れていて聞き難い。


「……私は監督の選択が間違いだとは思ってない」

「は?」耳を疑う様な素振りとは裏腹に、悠希の声は嘲笑じみている。「つまり、サナは斑目がまともな選手だと言いたい訳? 打てない守れないのに?」


 早苗は悠希を見つめた。彼女の内側を模索する様な真摯な眼差し。


「本気でそんな事言ってるの? だとしたら……」早苗は息を呑む。目を閉じ小さく首を振った。自らを鼓舞するかの様に握った両拳に力が入る。「間違ってるのはユウの方。客観的に見れてないのはユウじゃない」


 早苗の目から雫が溢れた。頬を伝う涙が、彼女の丸いシルエットをなぞって一粒落ちた。


「私は概ね納得してるよ」早苗は声を張り上げたいのを何とか堪え、胸に手を置き訴える。「今は私より一葉ちゃんの方が上。だから、今日の先発は彼女」

「それだって、金田は斑目の近くにいるから……」

「もういいよ」


 少し張った早苗の声に周りにいた何人かが何事かとこちらに首を向ける。

 それらを振り切り、彼女は再び声を落として続けた。


「実際、一葉ちゃんの打撃は私より遥か上。チームの事考えたら選ばれるのは納得出来る。贔屓っていうけど、そんなの関係なく彼女は選ばれるべくして選ばれたの。こんな簡単な事実、見てて解らないとでもいうの、ユウは?」


 グラウンドでは藤野がフォアボールを選び、打席には三番の碧が入っている。件の一葉はネクストにいる為、早苗の独白は彼女には届いていない。


「もうさ……」早苗は力無く首を振る。「大屋先生はいないの。ユウが吹き込まれた話は実現しない」


 おい、何だその話。


 当時、とは言っても大して時間は経っていないのだけれど、悠希は大屋側についていた。

 けれど、あくまでそれは本人が忠告した様に、効率重視の考え方に賛同したからだと認識していた。

 

 もしや、その構図自体がまやかし? 


 言い分は建前で、悠希にとって都合の良い条件が提示されていたとでもいうのだろうか。


「え、だって、サナ……」悠希はあからさまに狼狽える素振りを見せた。

「斑目ちゃんの事を贔屓って言っときながら、実は自分でしたなんて笑えない。それにそんなのでポジション貰っても全然嬉しくない。それにさ、私解っちゃったの」

「何が?」 

「裏で何かやる時間があるなら、それを使って自分の力を伸ばした方が絶対良い。今皆が挑戦できる環境になった。なら挑まなきゃ。今を受け入れて、ね」早苗は一息入れた。決断は静か。再び彼女の拳が握られる。「それが出来ないなら、もうユウとはコンビ組めない」


 おそらくブラフ。悠希の目を覚まさせる為の甘言。

 対立から拒絶、そして和解し協調。それらを経験した私には何となく早苗の心情が解る。

 いつの間にか、矛先は私から二人の関係に様変わりしていた。


「ちょ、ちょっと待って、サナ」悠希は狼狽を隠しもせずに、今にも途切れそうな細い糸を掴もうと慌てて立ち上がる。「何でそうなるの? 私はただ……」


 早苗はゆるりと首を振った。

 音にせず悠希の言葉を遮る。

 決別の合図じみたそれは悠希にはどう映ったろう。

 早苗が浮かべる悲しげな表情の中の少し異質な眼差し。そこには強い決意が表れている様に私は感じた。


「さっき解ったって言った」早苗の声はひどく落ち着いていた。「誰かを悪者にして、私は正しいって主張したって、皆が認めなかったら結局それって間違い。大屋先生の口約束なんてただのリップサービスで、事実に基づいてる訳じゃない事位気付いているんでしょ? でもそれに縋りたい気持ちから事実を捻じ曲げ誰かを吐口にする事で何とか自分の正当性を保っている。二遊間組みたいなら、正々堂々勝負しようよ」


 早苗は一息に言い切ると、大きく深く呼吸をした。

 自分を落ち着かせる為。周りを落ち着かせる為。


「私は誰かを陥れて蹴落とした結果の位置にはいたくない。その位置は自分で掴み取りたい。だから、もうやめて、ユウ」早苗は幼な子を諭す様に懇願する。


 悠希は目を泳がせた結果、さっと早苗から目を逸らした。

 おそらく早苗が悠希に対してここまで自己主張したのは初めてだったのではないだろうか。これまでの二人の会話も含め、私はそんな風に認識していた。

 だから、悠希は目を合わせられなかったのだろうな、と思う。

 そんな悠希に対し、早苗は最後通告とばかりに同じ言葉を再び告げた。


「……それが出来ないなら、もうユウとはコンビ組めない」


 懸命に建てた塔が瞬時に瓦礫に変わる様に、悠希の身体から力が抜ける。

 俯いた顔から色が褪せてゆく。

 人の心が折れる時はきっとこんな風なんだと、私は一回り小さくなった様に見える乙女を眺めていた。散々言われていたけれど、こうして打ちひしがれている姿は何とも遣る瀬無い。ここまで来る前に、何とかならなかったのかとも思う。

 けれど、どうしようもなかったのだ、と私は直ぐに知る事となる。


「カピバラちゃんをこんなにしたのは、だあれだ」


 ベンチの最奥から声が届いた。

 振り向くと、堂々と背もたれに腕を掛け、足を組んでこちらを見つめる眼差し。

 表情こそ普段の陽気さが滲んでいるものの、その目はいつかの様に鋭く冷たい。


「カ、カピ……?」


 おそらく早苗だろう、掠れ気味の戸惑いの声をあげる。

 組んだ足を崩し、ピョンと跳ねる様に立ち上がり、真ん中の列の椅子を飛び越え、私達の背後に。背もたれに手をついて、笑みを浮かべながら、上条祥子は周囲に同じ言葉を繰り返した。

 ベンチ内が静寂に沈む。

 皆、表向き打席に立つ者に声を送ってはいたのだけれど、内心ベンチの端で繰り広げられていた小競り合いを密かに窺っていたのだろう、出ていく声は気が抜けたサイダの様。

 丁度、センター前に運んだ碧が一塁ベース上で、ベンチからの甘いだけの声援に僅かに首を傾げているのが目に入った。


「おい、祥子」静観していた節のある理香が初めて声を発した。「今試合中。大き過ぎる私語は看過出来ないぞ」

「解ってますって。でも、こうなった以上、ここいらで潰しておいた方が良いんじゃないの?」上条はベンチ内を見回す。「未だ漂っている大屋先生の残滓を」


 理香は溜息を吐き、額を手で覆う。小声で愚痴めいた言葉が口から漏れた。


「ったく、シゲの野郎。余計な土産まで用意しやがって」


 その言葉を肯定と受け取ったのか、上条は打席に入る一葉に一声投げかけ親指を立てた。

 彼女の返答に大きく頷き、今度は右翼方向にバットを振る仕草。

 こちらには気にしないで打ちなさい、という意味なのだろう。

 一葉も賢い乙女。きっと自分の仕事を全うするのだろう。まあ、後々詳細を問い詰められるのだろうな、と解り易い未来を想像し私は小さく苦笑する。


「ほらあ、見せ物じゃないんだ、聞くのは自由だけど声は出せよう」


 上条はベンチ内にそう声をばら撒く。止まった空気が動き出し、ほんの僅か活気が戻る。

 飛んでいく声援を眺め、改めて上条が口を開いた。


「さて、カピバラちゃん」

「あ、あの、上条先輩」悠希は顔を上げるも、目を伏せたまま言う。「その呼び方やめて……」


 まあ、そうだよなあ、と私も同意。悠希はどちらかと言えば、カピバラよりハムスターだ、と余計な考えが脳裏を過ぎる。いやいや、今はそんな事を考えている場合では無いと、頭の中のゴミ箱にかなぐり捨てて蓋をした。


「カピバラ可愛いのに」上条は少し残念そうに言う。直ぐに切り替え続けた。「まあ、それはいいや。で、赤坂さ、さっきの話聴かせて貰ったけど……」


 上条はそこで一旦言葉を止めた。

 先を続けない彼女に対し悠希が怪訝な表情を浮かべる。

 上条は悠希を見下ろす形で立っている。口元が上がりその目に不敵な物が宿った。


「お前、言える立場?」


 上条の声は酷く冷たく、普段の陽気な”祥子ちゃん”では無く、いつか見たもう一人の彼女がそこには降り立っていた。

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