案内者は
本日のお題
1.昆虫
2.仕立屋(人)
3.明かり
女性は困っていた。職場の人間たちで開催されるパーティーに彼女も参加することになったのだが、会場にふさわしいドレスを一着も持っていなかった。すぐに買わなければいけないのだが、手持ちで足りるものが一向に見つからない。
途方に暮れて夜道を歩いていると、小さな明かりがふわふわと飛んでいるのを見つけた。まるで昔見た蛍のようにも見えるが、今は秋が終わり始めたころである。さすがにそれはないだろう。気になって近づいてみると、光は先へ先へと、けれど見失わない速度で右へ左へと道を進んでいく。やがて小さな小屋の屋根にとまった。つられて上を見上げるとそこには仕立屋と書かれた看板があった。当然だが店はすでに閉まっており、先ほどまで見えていた光もいつの間にか見えなくなっていたので、明日出直すことにした。
翌日店を訪ねると店の主人は彼女が出せる限りの金額でドレスを仕立てることを了承してくれた。
パーティー当日、無事にドレスを着ることができた彼女は最後まで楽しいひと時を過ごした。会場の料理がどれもおいしかったこともあるが、友人たちからドレスがとてもよく似合っていると言ってくれたことが一番の理由だ。
帰り道、女性が家の近くまでたどり着くと、小さな光がすぐそばを通り過ぎて行った。この光は私を仕立屋まで案内してくれたのだろうか。彼女は小さな声でありがとうとつぶやいた。不思議な明かりはほんのわずかな間だけ静止したのち、どこまでも高く飛び続け、やがて見えなくなっていった。きれいな星空がどこまでも広がっていた。今日は新月だったらしく、月の光がない分、いつもより星がよく見えていた。先ほどまでここにいたのは、あの空の星の一つだったのかもしれない。
感想、突っ込みお待ちしております。
まだまだつたない文章ですがどうかよろしくお願いいたします。