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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

大好きな幼馴染が自殺しそうなので救いたい僕っ娘の話

作者: メンダコ

僕の幼馴染は凄い人だ。

学校のテストではいつも一番で、いつも先生に褒められている。

模試でも志望校の判定はSから落ちたことがない。

字がとっても綺麗だし教えるのも上手で、“一緒の大学に行きたい“と言った僕を応援してくれた。

正直、僕の成績だと難しいのは分かってたけど、どうしても諦めたくなかった。


先生に無理を言って、総体が終わって直ぐに部活を引退させてもらった。

それはもちろん幼馴染と一緒に勉強したかったから。

放課後、学校の図書館で遅くまで勉強してから帰った。

毎日毎日頑張った。

朝起きたら昨日の復習、休み時間は単語の暗記をして、夜遅くまで起きて勉強。


辛いことばかりじゃなかった。

時々分かんないところがあるって言って、幼馴染に教えてもらったりして。

でもそれは口実で、教えてもらってる時に見ているのは教科書じゃなくて幼馴染の横顔だった。

ちょっと露骨だったから流石に気付かれてたかもしれないけど。


今思えば、僕は彼女に恋をしていた。

中々言い出せなかったけど、少しでもこの気持ちが伝わっていたらな…なんて考えるとドキドキしてしまう。

どこが好きかって聞かれると答えるのは難しい。

優しくて綺麗ででもちょっと抜けてるところもあって…全部ひっくるめて大好きだった。

いや、今でも大好き。


毎日彼女のことを見ている僕だからこそ、分かったことがある。

そう、なんでかは分からないけど、ここ最近元気がないみたいなんだ。

どこか思い詰めて、無理してるように感じる。

僕の幼馴染は表情を隠すのが上手いから、もしかしたら僕以外誰も気付いてないかもしれない。

なんとか出来るのは僕だけだ!と思った。


『大丈夫?無理してない?』

『僕に出来ることがあったらなんでも言ってね!』

『無理しないで休んでってば!』


でも、僕の幼馴染は頑張り屋さんだから、休んでくれなかった。

どれだけ僕が声を掛けても、人がいないところで必ず無茶をする。

なんて言うかこう…ピン、と張り詰めた糸みたいな感じ。

いつか切れちゃいそうで僕は怖かった。


僕は次の手段に出た。

彼女が無理をする原因を無くしちゃえば、きっと休んでくれる。

そのためには彼女がなんで無理するかを知らなくちゃいけない。

僕は悪いと思ったけどこっそり幼馴染の部屋に入った。

小さい頃から何度も遊びに来てるから部屋がどこかは分かるし、なんなら目を瞑ってても行ける。


日記でもないかなー、なんて、ドアを開けるまで僕はお気楽なことしか考えてなかった。


鍵がかかっていたので無理矢理開けて幼馴染の部屋に入ると、机の上に手紙のようなものが置かれてた。

白い封筒に、筆ペンで何か書いてある。

僕はなぜかそれが無性に気になって、近づいて見てみた。


そしたらそこには、”遺書“って書かれてたんだ。


一瞬訳が分からなかった


遺書って……あの、遺書? 

なんで!? 書き間違い?


分かってた。

僕の幼馴染に限って書き間違いなんてあるわけないって。

信じられなかった。


死んじゃダメだよ!?

皆泣くよ!?

僕が一番泣くよ!?

絶対ダメだってそんなの!


頭の中がグチャグチャだった。


これが机の上にあるってことは…まさか、()()


嫌な予感がした。

もしかしたら幼馴染は死んじゃってて、もうこの世には居ないのかもしれない。

そんなことになったら、僕は、僕は…っ!


我慢できなくて外に出た。

そしたら思いっきり曇り空で、なんか生ぬるい風が吹いてて、今にも嫌なことが起こりそうな感じで。

雨もポツリポツリと降り出して、なんかもう最悪だった。


僕は幼馴染のことを捜し回った。

学校から図書館から、行ったことのあるところは隅から隅まで。

人生で一番走ったかもしれない。


一緒に夕日を見た海岸とか、流れ星を見に行った展望台とか、色んなところを捜した。

楽しかった思い出が頭の中に浮かんで、そのせいで余計に泣きそうになったけど、我慢した。


一番泣きたいのは幼馴染なんだ。

僕が泣いちゃダメだ。

負けちゃダメだ。

絶対に死なせない。


もう泣いてたのかもしれない。

雨と混ざって良く分からなかった。


走って、走って、走って、いつのまにか靴なんて脱げていた。

途中何回か転んで服は泥だらけ、膝も擦りむいたしとにかく全身痛かった。

足の裏の感覚はなくて、ただ寒いなとしか感じなくなって、それでも走り続けた。


幼馴染はもっと痛い思いをしてるかもしれない。

もっと怖い思いをしてるかもしれない。

今この瞬間にも死んでしまうかもしれない。


そう考えたら立ち止まるなんて出来るわけがなかった。


神社を通り過ぎたところで、何か懐かしい匂いがした気がした。

それは橋のほうから漂ってくる。


心臓が止まりそうになった。


まさか、そんな。

嘘だと言って。


それ以上は何も考えられなかった。

走った。

今までの本気は何だったんだってくらい、本気で走った。

冗談抜きで風より早く走った。


花の匂いはどんどん強くなる。

橋が見えてきて…居た!


今まさに飛び降りようとしているところだった。

足元には花束。


何だそれは。

目印のつもりか。

これだけ心配させて。


『ふざけないでよ!』


全力で叫んだ。

彼女を繋ぎ止めれるように、強く、強く。

どこにも行かせないという思いを込めて。


一瞬だけ、幼馴染がこっちを向いた気がした。

でも、その顔はすぐに驚きへと変わった。

強い風が最悪のタイミングで彼女の背を押す。

彼女の身体がゆっくりと落ちていくところが見えた。


ふざけるな。

まだ言いたいことも言えてない。

こんなんで終わらせたりしない。


『手、出して!!』


叫びながら手を伸ばす。


何かが手に触れる感触がした。



私の幼馴染は凄い人だった。

いつだって元気で明るくて、私に元気をくれた。

運動がとっても得意で、色んな大学に“入って欲しい”ってお願いされてたのに、それを全部断ってまで私と一緒の大学に行きたいって言ってくれた。


毎日頑張って勉強してて、“無理しないで”って言いたかったけど、これも私のためなんだと思うとちょっと嬉しくて、中々言い出せなかった。

あなたが“一緒に勉強しよ?”って私に笑いかけてくる度、私はすっごくドキドキしてた。


ねぇ、私があなたに勉強を教えてあげているとき、あなたが私を見ていたこと、本当は気付いてたのよ?


あなたは毎日夜遅くまで勉強して、本当に頑張って勉強して、あんなに勉強が苦手だったあなたがついにA判定をもらったときは、自分のこと以上に嬉しかった。


ずっとあなたに恋していたわ。

どこが好きかって言われると…そうね、太陽みたいな笑顔とか、どこまでも一生懸命なところとか、色々あって一つには絞れない。

嫌なところも含めて全部好きだった。

いえ、今でも大好き。


なのに、なのに。

丁度今日みたいに、生暖かくて嫌な風の吹く雨の日。

車から私を庇ったあなたは、それはもう酷い姿になってて、なのに私だけ生き残ってしまった。

最後の言葉も聞けなかった。

私が意識を取り戻したとき、もうあなたは冷たくなってた。


灰になったあなたは随分軽かったわ。

体重を気にしてたもんね、なんてそんな酷いことしか考えられなかった。

頭の中がグチャグチャになっちゃって、何も感じなくて。


ねぇ、信じられる?

私はあなたのことがこんなに大好きなのに。

あなたのお葬式で泣けなかったの。

涙なんて一粒も出なかったわ。


ねぇ、ねぇ。

答えなさいよ。

なんでそんなに笑顔なのよ。


そんな写真じゃなくて、本物の笑顔を見せてよ。

また私に素敵な笑顔を見せてよ。

見せなさいよ。


当然、答えなんてなかった。


あなたが居たら、私のことを殴ってでも止めてたでしょう。

そんなの私が一番よく分かってる。

でも、あなたはここに居ない。

それが全てよ。


まだ言いたいことも言えてなかった。

ちゃんと伝えたかった。


だから、わたしは──


『ふざけないでよ!』


懐かしい、声がした。

咄嗟に声の方へ振り返る。


こちらへ駆け寄ってくる()()

もしかして、あれは。

目を凝らして確かめようとして。

雨で滑りやすくなっていた欄干、私は最悪のタイミングで風に背中を押された。


私は、なんで…


『手、出して!!』


あなたの声だ。

大好きな声だ。

あのときと、同じ。


いつの間にか伸びていた私の手を、いつかと同じように掴む手。


見覚えのある、手だった。


『うぅぅぅ、りゃぁぁぁっ!!!』


衝撃、でも痛みは感じない。

私の身体は()()に抱き止められていた。


目が合う。

なんで、


「なんで、あなたがここにいるのよっ!?」


私を置いて死んじゃったくせに、私の、せいで死んじゃったくせに。

なんで今更化けて出てくるのよ。


次々と浮かんでくる酷い言葉


違う


こんなじゃない


言いたいことはこんな酷い言葉じゃ


── パチン、と。


衝撃が弾けた。

少し遅れて頬の痛み。


ぶたれたのだと、理解した。


『…ッ、ふざけ、ないでよ! 僕が今までどれだけ心配したか!!』


ぶったはずのあなたが、なんでそんなに泣いているのよ


『どれだけ、心配したか…っ!』


泣きたいのは私よ


泣かないでよ


ねぇ


手を伸ばして目の前の幼馴染に()()()


そこで我慢出来なくなって抱き締めた


「なんで死んじゃったのよ、バカ」


『僕、死んじゃってたんだ…。』


「なんで気が付いてないのよ」


『凛を、守りたくて。必死だった』


「私なんて…っ、守らなくて良かったのよ! あなたが死ぬくらいなら、わたしが」


『約束、したから』


いつか、ずっと昔にした約束。

あの時も手を握って、こうして助けられた。

足下の花はその時の花だ。


あなたが、見つけてくれるかもって思って


『そっか…だから懐かしい匂いがしたんだ』



『そっか…だから懐かしい匂いがしたんだ』


花に手を伸ばす。

でも、すり抜けてしまった。


段々と感覚が鈍くなってくる。


あぁ今度こそ消えるんだ、と、なぜか分かった。


『僕、凛にずっと言いたかった事があるんだ。』


「奇遇ね…私もよ。」


そっと、凛を抱きしめる。

もう体温は感じなかった。


『大好きだよ、


── 、凛。

と続けたはずの言葉は空気に溶けた。

もう消えちゃうのか。


「私もよ、日菜。」


凛が何を言っているのかはなんとなく分かった。

聞こえなくても伝わるよ、だって幼馴染だもん。


ずっと見てるよ、凛。


だから必ず幸せになって。


なるべくゆっくり、こっちに来てね。


もう何も見えないけど、でもきっと伝わったはず。


だって僕たちは、



ごめんなさい、なんて言っている暇はなかった。

あなたが消える前に、どうしても言いたい事があった。


『僕、凛にずっと言いたかった事があるんだ。』


「奇遇ね…私もよ。」


『大好きだよ、


大丈夫、ちゃんと聞こえているわ。


「私もよ、日菜。」


ねぇ、なるべくゆっくりそっちに行くから。

だから心配しないで。


日菜の身体が解けていく。

最後まで太陽のように暖かかった笑顔が。


── 大好きよ、日菜。

深夜テンションで書いたので、少し後悔してます

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