表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レッスルエルフ! ~レスラーだった前世に目覚めたエルフ 無敵のヒップアタックで悪を討つ!   作者: どくどく
4th Fight! VSサソリの女王! 世界よ見よ、これがレスラー頂上決戦だ!
22/40

レスラーVSレスラー! 投げて極めるサソリの女王と宙を舞うエルフのヒップ!

 ピーチタイフーンと戦いたい。


 ピアニーは確かにそう言った。しかしピアニーは魔国の治安を預かる立場でありながら、魔国の頂点を倒そうとするピーチタイフーンをはじめ、【世界解放リベレーション】を始めとした者たちを癒したのだ。


「全力のあなたと戦い、勝利する。疲弊した貴方と戦っては意味がありませんわ。

 ですがその気になれば貴方達を再度拘束し、刑に処すこともできることをお忘れなく。それを避けたければ妾に勝利なさい」


 治安を守る立場にありながら、ピアニーはそう言い放つ。立場的にピーチタイフーンと勝負するメリットはない。そのまま投獄するのが彼女の職務。むしろ犯罪者を解放するデメリットが生じるのだ。


 法治国家なら理解に苦しむ行動だが、ここは魔国。力が支配する弱肉強食の世界。勝者こそ法の状況では、法律の価値観は異なる。


「頭である貴方が妾に伏したのなら、【世界解放リベレーション】の戦意もくじけるでしょう。オーク特攻部隊隊長や魔国四天王二人を倒した貴方を倒した妾の恐ろしさはさらに広まり、妾の立場も増すというモノ」


 そう言ったメリットは存在するが、実のところ理由は明白だ。


「建前はこの程度でよろしいかしら?

 妾は妾の立場向上のために戦う。貴方は自らと仲間の解放のために戦う」

「確かに十分だ。ではやろうか」


 目の前の相手と戦いたい。戦って勝利したい。


 ただ戦うための理由を作り上げたが、結局のところはそれだけだ。強い相手が目の前にいて、それに勝ちたい。正義とか立場とか理由とか、そんなものは後付けだ。一刻も早く、ぶつかり合いたい。


「ふふ。嬉しいですわ。ではこちらに」


 ピアニーに案内されてやってきたのは、闘技場だ。半径20mほどの円状のフィールドと、それを俯瞰してみることができる観客席。客席はすでに埋まっている。


 お互いに、着替えは済んである。ピーチタイフーンは『Peach♡Typhoon!』のロゴが入ったコスチューム。ピアニーは衣装とブーツ含めてすべて赤色のコスチューム。サソリのしっぽも含め、赤一色のいで立ちだ。


「ピアニー様!」

「われらがサソリの女王!」

「セルケト様のご加護があらんことを!」


 ピアニーが自らの国とそして魔国で引き入れた配下たち。皆がピアニーを慕い、その強さに心酔していることが分かる。


「ピーチタイフーン!」

「俺達はアンタを信じてるぜ!」

「やっちまえー!」


 そしてピーチタイフーンを慕う【世界解放リベレーション】。ピーチタイフーンの勝利を信じ、激励を飛ばしている。


「相手は強そうだべ。勝てるだか……?」

「わからぬ。ピアニーは魔国四天王の中でも最強の近接格闘家。流れるように投げて極めるスタイルは、ワシのゴーレム格闘術をもってしてもしのぎ切れなかった」

「時を止めても一瞬のスキを突き逆転する。それができるのが彼女。某を破ったピーチタイフーンも、苦戦は免れまい」


 そしてその中にはオークのスマシャ。ゴーレム使いのヴェルニ。吸血鬼のデラギアもいた。


「魔国四天王の二人を取り込むほどの強さ。デラギアに至っては己の殻を破った模様。感服いたしますわ」

「闘いを通じて何かを得たのは彼らだ。私はそのきっかけとなったにすぎぬ」

「妾もそれを得させてもらいますわ。貴方を倒して」


 言って手を差し出すピアニー。握手を求める動作に応じるピーチタイフーン。がっちりと繋がる手。そして――そこに力が籠められる。


 握力! それは手のひらが何かを握り締めるときの強さ!


 握る力は掴む力。相手を逃さぬようにする力。それは相手を投げるとき、そして関節技を極めるときに重要な要素となる。この力が弱ければ、強引に力で振り払うこともできる。逆にこの力が強ければ、相手の抵抗を無視した行動が可能となる。


 握った瞬間に伝わる相手の握力。それは――ピアニーのほうが強かった!


「やるな」

「貴方こそ」


 わずか一秒の握手の間に伝わる力関係。強さこそピアニーに軍配が上がるが、ピーチタイフーンも決して弱いわけではない。


 握手を終え、数歩離れてにらみ合う。ルールの説明こそないが、それは互いに理解していた。負けを認めるか、動けなくなるか。レフリーも何もない闘技場だが、それでも互いがフェアな戦いをするのだと理解していた。


 カーン! どこからともなくゴングの音が鳴る。


「おおおおお!」

「行きますわよ!」


 試合開始と同時にお互い歩を進め、手を組みあう。真っ向からぶつかり合い、両手で組み合った。力比べはピアニーのほうが分がある。それを理解してなお、ピーチタイフーンは組み合ったのだ。


 まともに組み合うのは不利。だからどうした!


 相手の攻撃を真っ向から受け、それでも勝利するのがレスラー!


「その心意気、素晴らしいですわ」


 ピーチタイフーンの、いやレスラーの心意気を理解したピアニーはさらに力を込める。相手がこちらに合わせるのなら、こちらは全力で挑むのみ。掴んでいる腕の一つを引き、その腕をからめとる。そのままピーチタイフーンを引き込むようにして投げ飛ばした。


 アームホイップ。プロレスの基礎の投げ技。引き込まれるように投げられて地面を転がるピーチタイフーン。しかしピアニーはその腕をつかんだまま、ピーチタイフーンを追うように転がった、


掴め(キャッチ)想像のままに極めろ(アズキャッチキャン)! それこそが妾のスタイル! サソリの毒の洗礼、先ずは登竜門ですわ!」


 ピアニーは両足で仰向けになったピーチタイフーンの首と胴を抑え込み、掴んだ腕を引っ張り逸らす。肘を逆方向に折るように力を加えていく。腕十字固め。決まった形が十の形をとる関節技!


 (クロス)(スカーレット)L/R(ロック)! 


「ぐ……っ!」


 完ぺきに決まれば逃れることの叶わない関節技。ピアニーの動きはピーチタイフーンの腕をつかみ、そのまま引っ張る。開始7秒でこのまま負けてしまうのか!?


「投げると同時に極めにはいる。この動きは油断ならぬよ」


 言いながらピーチタイフーンは下半身に力を込める。お尻で地面を叩くようにして自らを跳ね上げ、それを何度も繰り返して勢いをつけて立ち上がる。ピアニーは立ち上がられる前に腕を放し、距離を取った。


「わずかですが、肘に毒は入りました。サソリの猛毒を受けながら戦うのは苦しいでしょう」


 毒。それは肘を極められたことによる痛み。打撃技とは異なり、じわりじわりと響いてくる痛み。今はわずかな痛みが、致命的になる。まさにサソリの毒!


「ああ、苦しい。だが、それを受けてもあきらめず戦うのが、レスラーだ!」


 立ち上がったピーチタイフーンは腕の痛みを無視して走り出す。数歩の助走の後に背を向け、そのお尻をピアニーに向けて突き出し跳躍した。


「これが私の挨拶だ! くらえ!」


 ピーチタイフーンをピーチタイフーンたらしめるお尻の一撃! 相手のあいさつにはあいさつで返す。それがレスラーの礼儀!


 桃 尻 直 撃(ピーチ・ストライク)


「この助走でこの威力。見事な一撃ですわ」


 お尻の一撃を受けたピアニーは、ピーチタイフーンに称賛の言葉を返す。


 ヒップアタック。一見イロモノ系の技と笑われる技だが、それをここまでの強さに消化するほど鍛錬を積んだのだ。その努力、その道程、如何なるものか。


「互いの自己紹介は終わったようだな」

「ええ。お茶会よりもより正確により深く互いの理解が深まりましたわ」


 千の会合よりも万の言葉よりも、ただ一度の技の応酬。それで相手の事を理解する。それがレスラー!


 サソリ女王とエルフは、激しくぶつかり合う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ