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09話 聖女様も嘘をつく

 「包丁なんて武器になれませんよ! こんなもので狼の牙を防ぐことはできません!」


 ”武器”というものは、”防御”が出来てこそ、信頼性の足る道具になる。

 攻撃しかできない武器は、先手がとれて確実に相手を倒せる状況でしか役に立たない。


 「わたしには、もう一つのSランクスキル【女神の祝福】があります。だからこそ、これが役に立つのですよ」


 「それはどういうもので?」


 「わたしが祝福を与えると、その者の持っているスキルを倍増させる効果があるのです。つまり、リーザの料理スキルの力をアップできるのです」


 「はぁ? この状況で料理なんて何の役に立つんです!」


 「スキルの応用の仕方を知らないようですね。認識するのです。狼どもを”食材”とみなしなさい。そして”どう捌くか””どう解体するか”を。そうすれば、あなたのスキルは発動します」


 「食材…………」


 「実際、食料は欲しいですからね。この狼さんを料理して旅に備えましょう。シーザ、しゃがんでください」


 言われた通りしゃがむと、エルフィリア様は俺の額にキスをした。

 甘ったるいトキメキと共に、何故か料理への情熱がわいて出る。


 り、料理がしたい!


 そのときだ。狼どもが動いた。


 「――ワオオオオオ!!」


 四方から狼どもが一斉に飛びかかってきた!

 いっさいの抵抗を許さぬ完璧な方陣狩猟!!


 「シーザ、目を(つぶ)って!」 


 反射的に目を(つむ)ると、エルフィリア様のいた場所から強力な光が生まれた!

 それは目を(つむ)ってもなお目を焼きそうな強い光で、俺は反射的に背を向けた。

 そうか、【光の女神】の発光か!


 「シーザ、もういいですよ。目を開けなさい」


 目を開けてその場を見ると、雄々しく立っているエルフィリア様の周りで狼どもが苦しんでいる姿が見えた。


 ひっくり返って痙攣しているもの、メチャクチャにその場を駆け回っているもの。

 症状は様々だが、全個体が戦闘力を失っている。

 俺はすぐさま動いた。


 倒れている狼達の腹を裂くと、一瞬で臓物を抜き取る。

 凄い手捌き!


 と、俺に向かって三匹の狼が向かってきた。

 そうか、血の臭いか!


 されど、俺は自分でも不思議なくらい、まったく慌てていない。

 頭ではあれを食材と見て、どうすれば解体できるかを考えている。


 一匹が襲いかかってくる直前に避け、筋肉の筋にそって包丁を走らせる。

 硬い毛皮であろうと、筋肉の流れに沿って刃を走らせれば簡単に断ち切れるのだ。

 大きく脇腹を割かれた狼は地面に激突し、その場で藻掻(もが)いている。


 「解体は後まわし! 次は………うっ!」


 狼どもは俺が強敵とみたのか、今度はエルフィリア様の方へ集っていく!


 「エルフィリア様ぁ!!」


 俺は必死に駆けるも、間に合いそうにない!

 それでも、彼女の盾になるべく全力疾走!!



 「シーザ、止まりなさい。危ないですよ」



 何故か、妙に落ち着いたエルフィリア様の声が聞こえたかと思ったら。


 ゴギンッ!


 硬い壁のようなものにぶつかり、顔に激痛が走った。


 「~~~~~!!!!」


 声にならないくらいの痛みで俺は転がり回った。


 「勇敢なのは良いですが、わたしへの注意がおろそかになったのは減点ですね。『回復呪文(ヒール)』」


 彼女のかけてくれたヒールで痛みがやわらいでいく。

 気をたしかにもってエルフィリア様を見ると、彼女の全面には白い壁のようなものが出来ていた。

 その向こうには、さっき飛びかかってきた狼どもが倒れている。

 やがて狼共は起きあがると、千々にに逃げ出していった。


 「エルフィリア様。その白い壁もスキルの力ですか……あ! ああっ!」


 ふいに思い出した。

 あの白い壁で、勇者シェインの剣撃を止めたことを。


 「エルフィリア様! 【光の女神】の効果は治癒、浄化、発光って言いましたよね? じゃあ、それは何なんです! それも【光の女神】のスキルじゃないんですか!?」


 「そうですよ。本当はその三つに加え、障壁、加護の二つがあります。目の前でシェインの剣を防いだというのに、何故信じたのです?」


 「は、はぁぁぁ? あんな時に嘘をつくなんて思いませんよ! どうして嘘なんてついたんです! 何の意味があったんです!」


 「だから、あなたは甘いのですよ。あなたが思考を止めていなければ、この程度の嘘など簡単にわかったでしょう。あなたは冒険者として未熟で危うい。それを自覚なさい」


 「え?」


 「冒険者はいつでも思考を止めてはいけません。どんな修羅場でも常に最善を探し、活路を求めるのです」


 もしかして鍛えてもらっている?

 なんとなく、兄貴らしいことをしようとしている彼女の心が分かった。

 そのとき、はじめて美しい貴族令嬢の中にいる、兄貴の存在を感じた。

 


 

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