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85話 魔王は嗤う

 太陽光を浴びた魔王軍は四散し、その場にはただ一体魔王カズスのみが残った。

 シュウザにカズスの真上に行くよう指示をし、その禍々しい巨体を見下ろした。


 「待たせたなカズス! きさまは特に念入りに真っ黒にしてやるぜ!」


 俺はシャボン・レンズを直列になるよう操作する。

 光を幾度も収束させた光線は、超高熱の熱線に変わる。 

 エルフィリアの光の力を与えられたシャボンは、その絶大な高熱にも耐えて巨大な光線を生み出しカズスを狙う。


 ドオオッシュウウウウウウ


 直撃。

 魔王の完全な漆黒の肉体に、黄色い太陽の輝きが生まれる。


 シューーッ シューーッ


 「すげえっ。あれって魔王の体が溶けている音か?」


 「あの感じ、完全に魔王の肉体にはいってます。このまま押し切ってください!」


 「おおっ! さらに数を増やして圧倒してやるぜ!」


 俺はさらにシャボンを増やし、同じように直列巨大光線を作り、さらにカズスに攻撃を加える。

 絶大な暗黒の力でできた不滅のはずの魔王の体は、幾つもの光に貫かれボロボロになってゆく。


 「バアアアオアアアア‼ おお……おッ! 私の体が……溶けていくゥ! 無限の暗黒が……消滅させられるゥ!」


 「散滅しろ、カズス!!」


 ギロリ

 膝をつき崩れゆくカズスは、それでも鋭い眼光で俺達を睨み見上げる。


 「無限の闇の化身となった……このカズス、終わらんッ!」


 ゾクリ

 何かしら危険な悪寒が背中に走った。


 「うおッヤベエ! 二人とも強くしがみつけ!」


 「うわああああっ!」


 突然、シュウザはアルゲンタビスを急旋回させた。


 シュゴアアアアア


 遠心力で飛ばされそうになる中で、高速の暗黒の衝撃が近くを通り過ぎた。

 ものすごい圧力の衝撃で、シュウザが急旋回しなかったら、俺たちはアルゲンタビスごと貫かれていただろう。


 「魔王の魔法攻撃だ。ヤバかった」


 「お兄さま、ありがとうございます。見事な回避軌道です。操鳥師がお兄さまで良かったですわ」


 「はっはっは。そうだろうそうだろう。抱きしめてもいいんだぜ、エルフィリア」


 「いまお兄さまの背に抱き着くと、墜落するでしょうから遠慮しておきますわ。それより、アレはまた来ます。回避軌道を続けてください」


 「いや、来ないぜ。アレを見てみろよ」


 「えっ?」


 下のカズスを見てみると、奴は完全に倒れ伏していた。

 そして暗黒の巨体はグズグズと崩れていく。


 「やったなエルフィリア、坊主。お前らが魔王を倒したんだ」


 シュウザのその言葉とともに、歓喜が全身を駆け巡る。



 ウワアアアアアアアアアッ


 そして守城関からは盛大な歓喜の声が上がった。

 あの歓声を聞いて、ようやく魔王を倒したという実感がわいてきた。


 「エルフィリア! 俺も何とか勇者の役目を果たせたよ。これも、みんな君のおかげだ。……エルフィリア?」


 エルフィリアはまったく喜んでおらず、崩れて消滅した魔王の跡を、ただ見つめていた。

 その横顔は妙に真剣だった。


 「……おかしいですわ。あまりに脆すぎます。魔法攻撃もただの一発きりというのは? ……ハッ! まさか、さっきの魔法攻撃は……あうっ!?」


 

 ドンッ


 それは本当に”いつの間にか”だった。

 その黒い人影のような異形は、気づかぬうちにそこにいた。

 黒い羽をはやし、全身から黒い瘴気を発し、片手は鋭い刃と化している魔物。

 そしてその刃は、エルフィリアの胸を深々と刺し貫いていた。


 「エ、エルフィリアーーッ‼」


 「お、お前はカズス……! いつの間にここに? それに、さっき倒した巨人のきさまは?」


 「フッフッフあれは殲滅用の巨人モードの肉体だ。あれを失ったのは痛いが、ここでこのエルフィリアを始末できたなら悪くない」


 いま、はっきりと理解した。

 巨大カズスが放った断末魔にも見えた暗黒魔法の攻撃。

 実はあれはただの攻撃ではなく、カズスの本体を空中へ放ったものだったのだ。

 それに気が付かず、俺たちは抜け殻が崩れていくのを見て魔王を倒したと歓喜していたのだ。

 ただ一人、エルフィリアだけが疑問を感じていた。


 「うおおおおおおっ! ちっくしょおおおおっ! このクソ野郎がッ! よくもエルフィリアをおおおッ!!!」


 「エルフィリアを……放せえ!」


 「フッフッフ嘆くがいい。絶望しろ人間ども。いま、この小娘をバラバラにして……ウムッ!?」


 貫かれているエルフィリアの体が発光している……?

 その輝きは、カズスの暗黒の肉体にジワジワと白い侵食をしている!

 あれは彼女の浄化だ!!

 

 「エルフィリア! 生きているのか!?」


 「シーザ……シャボンを……放ちなさい……ここで奴を……」


 「ハッ」と我にかえった俺はシャボンを発生させる。

 魔王といえど、太陽の元でエルフィリアの浄化を至近でくらっているんだ。

 あと一押しで倒せる!


 「ちいっ心臓を貫いたというのに、まだ生きているのか? ならばやむを得ん。トドメは大地にでもまかせるか」


 「ブンッ」とカズスは腕をふり、エルフィリアの体を下へ放り投げた。


 「エ、エルフィリアーーッ!!」


 俺は思わずエルフィリアを追って手を伸ばすも、届かない。


 「ついでに、きさまも小娘の後を追え。シャボン使いよ」


 ドガアッ


 「うわあっ!」


 体が不安定になった所にカズスに蹴り飛ばされた。

 アルゲンタビスから投げ出された俺は、そのまま重力に引っ張られる。

 そして真っ逆さまに地面へと向かい墜落した。


 「フハハハハハ、これでこのカズスを倒せる者はいなくなった。力を取り戻し、再び侵攻を開始してくれよう!」


 墜落する俺の耳に、奴の「ざまぁ」する嗤い声だけが響き渡った。

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― 新着の感想 ―
[一言] おお、絵に描いたような、敵の逆襲・逆転、絶対絶命の絶望的状況! どうひっくりかえす?
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