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84話 太陽とシャボン

 さて、とりあえず魔王軍に降伏するか迷っている風を装い、守城関の攻撃を遅らせることには成功した。

 だが守城関の兵は、魔王軍の魔物が様子見に接近したりすると躊躇ためらいなく攻撃をする。

 その躊躇ためらいのなさだけで、カズスが察するには十分だった。 


 「フフフ……フハハハハ! 人間どもよ、そういうことか。きさま達は最初からこの魔王に降伏する気などない。返答がないこともその城内のざわめきも、すべては時間稼ぎのため。きさまらは太陽が昇るのを待っている。そうだな?」


 ……絶句。すべて見抜かれた。


 「どどどどどうしよう⁉ まだ太陽は昇るまで時間があるのに、バレちゃった!」 


 「やはり守城関を守るのは無理だったか。だが、僕達はまだ動くわけにはいかない」


 魔王カズスは嗤いながらユラリと立ち上がる。

 そして両手を大きく広げた。

 あれはまさか極大魔法のかまえ⁉

 クソッ、守城関の兵士がやられる!

 

 「ウワーッハハハハ愚かな希望にすがる者どもよ。魔王となったこのカズスに、もはや太陽など弱点ではない。私は無限の闇を生み出せるのだからな。よかろう、太陽が昇るまで待ってやろうではないか。そして絶望の中で、あらためて返答を聞かせてもらうとしよう」


 寛大(?)なカズス様のお言葉に、俺たちはしばらく絶句した。


 「どうやら、いけそうですね。頭の良さが一周回って、罠に飛び込んでいくタイプでしたか」


 「あの両手を大きく広げたのは、『ウワーハハハハ』って大笑いするポーズだったの? どんだけ大笑いが大好き野郎だよ!」


 ともかく、おかげで俺たちは安全に太陽が昇る時間を待つことが出来た。

 やがて数時間後。

 空はぶ厚い雲に覆われているが、辺りが灯りが必要でなくなるほど明るくなったことから、明け方となっていることが分かった。


 「そろそろ時間だ。だが、太陽は雲に覆われて見えないぜ」


 「あの雲もカズスの魔力によって呼び寄せたものでしょう。ですが雲の上に出れば関係ありません。 お兄様、アルゲンタビスを出してください」


 「ちッ三人乗りなんかで、そこまで飛べるかあ? いくらコイツが一番の強翼だからって……とにかく出すぜ!」


 シュウザの心配に反して、アルゲンタビスが飛んだ途端に下から強風が吹き上げた。

 その下を見てみると、ぴったりワーグがついてきている。

 そして強風を送り込み、アルゲンタビスの上昇を助けているのだ。


 さて。このままカズスに気づかれぬまま、雲の上まで行ければ良かったのだが、そこまでは上手くいくものではなかった。

 下からカズスの雷鳴のごとき怒声が響いてきた。

 

 「そこにいるのはワーグか! きさま何をしている⁉ そいつらを連れてすぐに私の元へ戻れ!」


 ちッやはりワーグは目立ってしまったか。

 カズスの呼びかけに応えやしないか心配になってワーグを見るも、彼女は揺るがない。

 ただ、懸命にアルゲンタビスに風を送り続ける。


 「おのれ! そうか、その鳥にはエルフィリアが乗っているな⁉ ワーグを手なずけるとは大したものだ。だが、きさまは逃さん!」


 カズスの元から大量の蝙蝠型、鳥型の魔物が一斉にこちらへ向かってくる!

 まずい! 早い!

 ワーグに迎撃させれば上昇が出来なくなるし、このままでは大量の魔物にとりつかれる。


 「しかたない、俺たちで迎撃するしかないか。シャボンを少し使うぜ」


 俺はアムドウルから借りたアイテムボックスを取り出す。

 この中には大量の洗剤が入れてあるのだ。


 「いえ、その必要はありません。鳥はもう一羽いますよ」


 エルフィリアの言葉でワーグの下を見てみると、たしかに俺たちのいた鳥舎からもう一羽のアルゲンタビスがこちらに向かって飛んできていた。


 「ジョイスロウ殿下! ポルマレフさん!来てくれたのか‼」


 ポルマレフが操鳥師をしており、その後ろにはジョイスロウ殿下が剣を抜いてつかまっていた。


 「エルフィリア、シーザ。こいつらはまかせろ! 【七星崩剣】!」


 ビョオオッ ブウウンッ ズオオオオッ


 ジョイスロウ殿下のS級戦闘スキルがうなるたびに、数十羽もの魔物は薙ぎ払われ地におちていく。

 魔物どもは向こうのアルゲンタビスにもまとわりつこうとするも、全て堕とされていく。 


 「これで追撃の心配はなくなりましたね。あとは……」


 「ああ、太陽を目指すだけだ。シュウザさん、頼みます!」


 「わかってるよ! 【雲のシュウザ】なんて名乗っちゃいたが、本当に雲をかぶるとは思わなかったぜ。息を止めてろ!」


 雲というのは何で出来ているのか分からないままこの年まで過ごしてきた。

 しかし実際に入ってみると、それは深い霧のようなものだった。

 なるほど、これが雨になって落ちてくるというわけか。

 そして雲を抜けた俺たちを待っていたのは、待望の満腔の朝日。


 「ま、眩しい! 太陽が近いと、こんなに眩しいのか!」


 「やりますよシーザ。【女神の祝福スキルブースト】!」


 エルフィリアは俺の額にキスをしてスキルをかける。


 「ああああッ! シーザてめェ! 兄のおれですらやってもらったことのないことを!」


 「お兄さま、うるさいですよ。これはスキルです」


 「よし、作戦開始だ。全力解放! 舞えシャボンよッ‼」


 俺の体の全身にエネルギーが駆け巡り、大量のシャボンを発生させる。

 それはみな、人間大ほどもある巨大なシャボンであった。

 さらにエルフィリアは俺を「ギュッ」と抱きしめる。


 「あーーッ、あーーッ、怖いのならおれの方に抱きつけエルフィリアーーッ!」


 「これもスキルです。バカなこと言ってないで、操鳥に集中しててください、お兄さま」


 抱き着いたエルフィリアから強力な光の魔力が流れてくる。

 それは舞うシャボンに光のエネルギーを与え、黄金の色に変わっていった。


 俺は真下の雲を見据える。その向こうにいる魔王カズスを思いながら。

 俺の精神テンションはかつてないほど爆上がりだ!

 冷酷!残忍! 今から5分以内にそのバケモノ軍団ごと貴様を消滅させてやる!


 「シャボンよ、形態変化! 奴にたっぷり日光浴をさせてやれ!」


 特訓してきたシャボン操作。

 滞空するシャボンはその形状を変え、平べったい形となっていく。

 【レンズ】と呼ばれる形となったそれは、太陽の光を収束させ始める。

 その光は強力な光線となって下の雲を蒸発させ、大地に群れる魔物どもとカズスをあらわにする。


 「すげえ、あのぶ厚い雲が一瞬で消えやがった。これをエルフィリアが考えたって?本当かよ」


 「ええ、お兄さま。スキード・ワゴン財団の【太陽光線照射装置】を調べてわかったことですが、光は”レンズ”という透明な板で収束させることが出来るそうです。ならばシーザのシャボンでも代用できることに気がつきました」


 そして俺はエルフィリアの元でシャボンをレンズに変え、さらに無数のシャボンを自在に操る特訓をして今にいたる。

 下の魔物どもは突如雲が消滅し、さらにあまりに強烈な太陽の光に驚いて逃げまどっている。


 「魔物ども、きさまらの大掃除に来てやったぜ! くらえッ【シャボン・サンライトオーバードライブ】!!」


 照準、収束、発射!


 強烈な太陽光線は百万の魔物どもを次々に焼き払う。

 ある個体は仰向けになって干からび、ある個体は体に火がついて走り回る。

 暗黒の世界に住む魔物どもに天から灼熱地獄が降りそそぐ。

 やがて生き残った魔物も四散して魔王カズスのみが残った。


 「そういえばカズスは『太陽はもはや弱点ではない』と言ってましたね。シーザ、それを後悔させてやりなさい」

 

 「もちろんだ。カズス、いまから、きさまにはキツイ日光浴をさせてやるぜ。魔王にふさわしい”お偉いさん待遇”でな!」


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― 新着の感想 ―
[一言] 【女神の祝福】が額にキスと抱きしめなんて、ワザととらしい~。 太陽光線の集光というのは時々ある技術ですね。 集光範囲を広げれれば、いくらでも強力にできる。 さてカズスとの戦いはまだ続きそ…
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