80話 エルフィリア被害者の会
休日前の仕事がキツくて書けませんでした。
小説書くって、頭だけじゃなく体力もけっこう使うんですよ。
現在、俺たちは王都中心にある王城に通され、客室の一室に来ている。
いやしかし、平民な俺がここに足を踏み入れるとは、旅のはじめには思いもしなかったね。
元々の俺がサポートをしていたシェインの勇者パーティーが魔王討伐に選ばれていたら、王都には入れていただろうが、王城までは無理だったろう。
しかしそんな王城の壮麗さに目を堪能させる暇もなく、俺の目の前には強敵が獰猛な目をして俺を睨んでいる。
【エルフィリア被害者の会】代表のシュウザさんとクージーQさんだ。
「つまーり。お前さんは崖から落ちたエルフィリアを助け! その介護している間にあ、あ、あ、愛が生まれて! エルフィリアは自分が死んだことにして駆け落ちをはかっただとおッ⁉」
「そうです! 俺達の間には愛が生まれてしまった! シュウザさん、俺たちの仲を『許す』と言ってくれ!」
「だ…誰が言うかーっ‼ その言葉を吐くくらいならば、おれは疾風となってエルフィリアの下へ走り奪いとってくれるわ! 次期領主の座を捨てたおれが、最後にのぞむものがわが妹!」
病気だ、このお兄ちゃん。
それにしても、こんな王城の一室にまで居て、何を話してるのだろう?
たしか対魔王カズスの作戦の細かい段取りを話しあうために、ここに来ているはずなのだが。
「なぁクージーQ。こんなことしてていいのか? 魔王カズスが来たら、こんな問題、どうでも良くなっちまうのに」
「作戦の方はエルフィリアがスキード・ワゴンさんと話して詰めるから、私たちは自由にしてて良いそうよ。だからこの問題をちゃんとアンタの口から聞かせてもらうわ」
くそう。つまり修羅場をおさめるのが、俺の今の仕事というわけか。
しかしコレ、魔王カズスより厄介なんじゃねぇの?
「それにしても私、エルフィリアがアンタに助けられたってのが信じられないんだけど。あんなに油断のない奴が崖から落ちたってのも変だし、以前のアンタ、助ける側じゃなく助けられる側だったじゃない」
スルドイ! これが女の勘ってやつか?
たしかに崖から突き落とされたのは俺だったし、それを助けてくれたのがエルフィリアだ。
そのときジョイスロウ殿下が部屋へ入ってきた。
「シュウザ、少し声をひそめてくれ。この部屋は対魔王の作戦を練っていることになっているんだ。そこから痴話げんかの大声なんかが聞こえてきたら、いろいろ台無しだろう」
「ああっ⁉ 殿下よ、アンタもエルフィリア死亡の茶番に踊らされてた身だろう。いいのかよ!」
「エルフィリアがそのシーザに決めたなら、ぼくは何も言うことは出来ないさ。ぼくは旅の間、数えきれないほど彼女に助けられた。ぼくに出来ることはただ一つ。この戦いにおもむく彼女を守ることだけだ」
な、なんてカッコイイ振られ方だ!
サイコパス勇者やシスコン重篤患者とは雲泥の差だ!
「……ジョイスロウ殿下の言う通りね。シーザは人類の存亡をかけた一戦がひかえている身だし。それに肝心のエルフィリアもいないし。この話はここまでにしましょう、シュウザ様」
ホッ。やっと解放される……かと思ったが。
「ええい、黙れ!(ドンッ)。きさまらにわかるか? 妹が死んだと聞かされたときの、おれの気持ちが!」
シスコンこじらせ男には、人類の存亡も関係ないらしい。
「あ、それ、ちょっと分かる」
「ただ、悲しみで心が空になる日々だったよ」
「す、すみません……」
そうなんだよな。
『エルフィリアが死んだ』ときかされて悲しむ人を数多く見てきた。
やっぱりこれ、罪が重すぎる嘘だよ。
「そして、はじめて妹を失った悲しみを忘れさせてくれる女と出会い! 彼女に愛をおぼえはじめたというのに! それが死んだはずの妹だと知ったときの、おれの気持ちが分かるか⁉」
「複雑すぎてわかりません」
よくまぁ、そんなオモシロイ状況になったな。
成り行きを知らない人が聞いたら、訳が分からんぞ。
「だが、今は魔王カズスの件が優先だ。王都ヴァルヴァロッサの手前に【守城関】という、敵から王都侵入を阻む巨大な要塞門がある。決戦はそこだ。明日の出征式が終わったら、【駆ける疾風】もそこへ行ってもらうことになる」
「魔王群はいつ頃その守城関に到達するんですか?」
「おおよそ明日の深夜ごろになるらしい。まずいことにね」
「それは……本当にまずいですね。俺たちの策は太陽が昇ってなきゃ使えない。どうするんですか?」
「無論、夜明けまで魔王群と戦うのさ。守城関の兵でね。もともと、そこを絶対死守するのは陛下の命令でもある」
「ですが夜明けになったとて、”鳥”は飛ばせるんですか? 戦闘の真っ最中なら、当然飛行する魔物も飛んでいるでしょう」
「それも考えてある。君達は僕がぜったい守るさ」
「ええい、許さん許さん! シーザ、きさまは絶対おれが殺してくれる!」
イケメンふたりの正と邪か。
こんな対照的なイケメン二人の表情を並べて見られるのも、レアな体験だ。




