08話 聖女様は俺の家についてくる
驚愕の事実!
憧れの聖女様は俺の死に別れた兄だった!
しかもじつは幼女!
この驚愕の事実にであったとき、君ならどうする?
エルフィリア様はつけている指輪を見せて言った。
「これは魔導具で、未来の自分の姿になることが出来ます。幻術の一種ですが、ちゃんと実体ももっていますよ。外したら服が脱げてしまうので外せませんが」
「ほ、本当に8才? よく親が魔王討伐に行かせましたね」
「わたしの親は魔王討伐の名誉に狂っている方ですからね。わたしが討伐に有効なSランクスキルを授かり、行く意思を示すと、喜んで家宝の魔導具を貸して送り出してくれましたよ。ガチャ神の言う通り、たしかに魔王討伐の艦橋の整っている家でしたね」
「はぁ。なんか知ってはいけないことを聞いた気がしますけど、もういいです。俺はもう戻れないけど、エルフィリア様は戻らないといけませんよね? どうやってこんな場所から帰るつもりです?}
「わたし、パーティーには戻りません。そして家にも帰りません」
え?
「もう、貴族令嬢の生活なんて嫌なんです。わたしの性分は根っからの冒険者。あんなすました生活には、もう耐えられません」
「い、嫌って……」
ヤベェ! 家出娘の相談うけてるみたいになってきた!
「それに、狂った聖女ニスト達に求愛されるのもごめんです。いえ、わたしを巡って戦い、他を蹴落として勝ち残ったのが、あのシェインですが」
その執念が、ガチャ40連か!
あのシェインにとっては、Sランクスキルをとって勇者の称号を得ることすら通過点。
すべてはエルフィリア様と結婚するためか!
聖女ニストが転生したら、聖女ニストに愛されつきまとわれるようになるとは。
なんと皮肉で数奇な運命!
こんなにも自分の行いが我が身に返った人が、他にいるだろうか?
「いやしかし、貴族令嬢が逃亡なんて出来るんですか? 家の者が探し出して連れ戻されるんじゃ………ハッ! まさかそのための崖から転落!?」
「その通りです。『この崖から落ちれば、間違いなく死亡』と、誰もが判断するでしょう。シーザが素直に飛んでくれなかったので、少し不自然な形になってしまいましたが、まぁ計画通りです」
「お、俺を崖から落とすのまで計画だったとは!」
どうりで、やたら俺を崖から落としたがったわけだよ!
俺を助けるためだけだったら、あの場はおさめて、後でこっそり逃がせばいいだけだし。
「これで【エルフィリア・ノルデン】は死亡。わたしはどこへ行くのも自由です。フフフ」
ヤバイ。本当にジョゼフ兄貴だ。
あの人は『冒険者の天才』と先代リーダーから言われるほどの腕と策略で、【疾風の仕事屋】をBランクパーティーにまで押し上げたという。
スキルに恵まれなかったから『村の英雄』で終わってしまったが、聖女のスキルを得たいま、どうなってしまうんだ!?
「そ、それで、これからどうるすんです?」
「シーザ。あなたの家に帰って、両親に『娘』にしてくれるよう頼みましょう。じつは肉親の愛も、今の家庭より前世の両親やあなたに強く感じているのです」
「えっえええええっ!!!」
エ、エルフィリア様が俺の家の娘に………
ハッ! そ、それって!!
「そ、それじゃあ、エルフィリア様が俺の嫁になるってことじゃないですか! 『前世の親』ったって、今は無関係なわけだし!」
「それ、良いですわね。結婚して夫婦で冒険者やりましょう」
「あっさり言わないでください! 端から見たら、俺が良家の子女を騙して誘拐してきたとしか思えませんよ! 俺は領主様に通報されて、処刑台に立たされます!!」
兄弟続けて、聖女がらみで処刑とか!
どれだけ親不孝者なんだよ、俺の兄貴は!
「……そうですね。ガチャ神の呪いか、わたしの言葉使いも立ち振る舞いも優雅にしかできませんし。何か納得させられるシナリオを考えないと、シーザの嫁にはなれませんわね」
ヒイイイイイ、本当に俺の家についてくる気だ!
田舎冒険者の俺の嫁が大貴族令嬢!?
こんな重すぎる嫁とかもらっちまったら、俺はどうなっちまうんだぁぁ!!
と、急にエルフィリア様は辺りに目を走らせた。
「……少し、のんきすぎましたね。ここは魔物の領域。話すのも考えるのも、後にすべきでした。やはり勘が鈍っていたようです」
「え?………うっ!!」
見ると、いつの間にか十匹ほどの人間大の狼が、四方から寄ってきていた。
「【ロングウルフ】です。魔獣としては低ランクですが、単独で戦えるような人間は戦闘スキル持ちくらいでしょう」
「あ、あの……エルフィリア様はSランクスキル持ちでしたよね?」
「わたしの【光の女神】は治癒と浄化と発光です。つまり後衛。どれだけケガをしても瞬時に治しますので、前衛はお願いします」
「で、でも俺の剣は置いてきてしまって……」
エルフィリア様の肉壁になって、ひたすら『囓られては回復』を続けなければならないのか?
生き地獄だ!!
絶望する俺に、エルフィリア様は「ポン」と何かを手渡す。
「わたしも武器はこれしか持ってこれませんでした。剣なんて重くて持てませんので」
「俺の包丁じゃねえかぁぁぁぁ!!!」
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