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79話 王国の危機

 王都ヴェルヴァロッサ。

 その中心にある王城では、王国第二の街サンモリッツ街壊滅の報を受け緊急事態宣言を発令。

 すぐさま討伐隊が編成され出陣した。


 それは魔の瘴気をはらう聖武具をふんだんに身に着けた重装歩兵三千人に魔法師二千人。さらに騎馬兵五千騎と装備に劣る軽歩兵一万3千人による大部隊。

 まさに人類の命運を担う王国最大兵力であった。


 だが、彼らの目指す魔王はもはや知能のない赤子ではなかった。

 カズスが一体化し、人間を超える叡知をもつ恐るべき存在となった魔王だ。

 魔王は大人の姿にまで成長し、その顔はカズスのものとなった。

 そして魔王は周囲を暗黒に変える力を持っており、弱点である太陽の光もそれには届かない。


 戦闘の結果はじつに無残なものであった。

 部隊は魔王に近づこうとするも配下の魔物にさんざんに分断され、さらに後方の軽歩兵を屍生人ゾンビに変えられ、あえなく包囲をくらい全滅してしまった。

 大部隊を吸血鬼と屍生人ゾンビにして取り込んだ魔王軍は、王都へと進軍する。


◇ ◇ ◇


 国王ラボウ。

 ジョイスロウの長兄であり、彼の出奔で継承が遅れていたが、魔王出現の危機に急遽戴冠をした若き王である。

 だが剛勇無双で知られた彼も、この完全な敗戦の報には落胆を隠せなかった。


 そして敗戦後の御前戦略会議。


 「早い。王国総力ともいえる精鋭が、なぜこうも簡単に壊滅させられた?」


 「はっ、敵はただの魔物の集団にあらず。高度な戦術を駆使してまいりました。それ故、魔物討伐の専門家である将軍は対応が遅れ、さらに圧倒的な魔王の力に蹂躙され敗北にいたってしまいました」


 「それに魔物の数も問題です。各地から無数の魔物が奴の元に次々と集い、戦闘時には百万もの大群になったとの報告があります。いかな将軍も、これだけの数を殲滅するのは不可能でしょう」


 国王の弟、四兄弟の次兄にあたる副王トゥキは、もっとも冷静に意見を述べた。


 「やはり元賢者が魔王と一体化したという報告は真実のようですな。魔王の絶大な力と賢者の英知。その双方が合わさっているかの存在は、もはや討伐できる対象ではありません。おそれながら、次善の策を考えるべきかと」


 「次善の策だと? バカな! 魔王に屈従せよと申すか!」


 「そうだ! 相手が人間の敵国ならば、一考の余地はあろう。しかし相手は魔王と魔物の軍団。交渉が成ったとしても、その代償ははかり知れん!」


 毎年要求される、膨大な数の生贄。

 王族貴族が屍生人ゾンビに変えられて隷属。

 こんなを要求をされることも覚悟しなければならないのだ。


 「さよう。これは最悪の中でも最悪の下策。ゆえに他の方策を示していただけたなら、この策は即座にひっこめましょう。諸兄方いかがか?」


 もちろん、そんな代案など考え付く者などいない。

 魔王と交渉もやむなしと、誰もが考えはじめた頃だった。

 にわかに会議室の扉の向こうが騒がしくなった。


 「どうした。曲者でもあらわれたか」


 「いえ、ジョイスロウ殿下です。魔王への対策に、陛下に進言したき儀があるとのことです。いかがいたしましょう?」


 「ジョイスロウか。謹慎中の身でありながら仕方のない奴だ」


 「陛下、ジョイスロウはこの件にもっとも長く関わった者のひとり。そのげんに参考すべきことも多いと存じます。ご決断の前にその意見も耳にすべきかと」


 「よかろう、入れてやれ」


 彼は入室を許可され、末席に席をもうけられた。


 「してジョイスロウよ。うぬは魔王に関して言いたいことがあるそうだな。申すがいい」


 「はっ。おそれながら、自分めに魔王討伐の勅命をお与えください」


 「それは先に出奔した自らの汚名返上のためか? もしそれだけで、無策に魔王カズスに挑むだけとあらば、許すわけにはいかん。兵はきさまの失態を埋めるための道具ではないのだからな」


 「汚名返上を考えてないと言えば嘘になります。ですが、このままでは王国は滅び人間は魔物の奴隷となりましょう。そのような事態に、座して結果だけを待つことを良しとしない思いこそが、動機の大半であります」


 「信じよう。して、策はあるのか? 余を納得させられるだけの策を述べたなら、うぬに王国の余力一万の指揮権を与えることも、やぶさかではない」 


 「軍勢はいりません。魔王討伐には、既知の冒険者パーティーのみを使います。陛下にはその裁量権のみをお許し願います」


 これには会議にいる者すべてが驚いた。


 「なにをバカな! 二万三千の軍勢が破れた相手に、冒険者パーティーだと⁉」

 「あまりにふざけている! これは王国軍をあまりに軽視する発言ですぞ!」

 「陛下! 弟殿とて、このような妄言につき合う必要はございません!」


 にわかに騒然となった会議室に、副王トゥキの一喝が飛ぶ。


 「静まりなさい、諸兄方。陛下の御前でありますぞ」


 静まった会議室に、国王ラボウは末弟に静かに詰問する。


 「ジョイスロウよ。して、どのような策だ。冒険者パーティーをいかに使ってあの魔王を倒す?}


 「はっ、それは……」


 その策にて魔王討伐がかなうか否かはともかく。

 最悪の決断を少し先延ばしにするだけの説得力はあった。


 「よかろう、やってみせろ。必要なものがあらば、用意させよう」


 「ありがたきお言葉。身命を賭して働かせていただきます」


 「して、その勇敢な冒険者パーティーの名は何という。仮にも人間世界すべての命運を担う者達だ。余からもあたう限りの名誉を授けよう」


 「パーティの名は【駆ける疾風】。リーダーの名はシーザ・ツェッペリと申します」



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― 新着の感想 ―
[一言] >他の方策を示していただけたなら、この策は即座にひっこめましょう。 いってみたいセリフの一つですね。代案があるなら言ってみろ。 >パーティの名は【駆ける疾風】。リーダーの名はシーザ・ツェッ…
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