07話 とある聖女ニストの転生譚
◇ ◇ ◇
ちっきしょォォォーーッ。
まさか、おれともあろう者が、たかがノゾキで失敗しちまうとはよォー。
新品のはずのロープが、何であんなに簡単に切れちまったんだよォーッ。
おれの名はジョゼフ。
クエスト達成率10割のスゴ腕冒険者野郎。
けど、憧れの聖女様のノゾキに失敗して地獄落ちだ。
真っ暗だ。
死後の世界ってのは、こんなに何も無いものなのかあ?
――「目覚めたまえッ! 転生のスキルを受けし者よ」
「うぐっ!」
突然、ぶっっとい男の声と共に目の前が開けた。
何も無い空間に、ほとんどハダカの筋肉質のおっさんがいた。
もうちっと下には何か履いてくれ。
モッコリの形がまる見えじゃねぇか。
「……なんだ? おっさんが地獄の番人か?」
「いいや。我はオマエらに”ガチャ神”と呼ばれている者よ。真性の神ではないがな」
「デェェェーー!! アンタがガチャ神!? オーノォー! すげェレアに出会ってしまったーーッ」
「最初に詫びておこう。オマエには少しばかり早く死んでもらわねばならなくなった。故に、いささかルール違反であるが、オマエのチャチな仕掛けを壊させてもらった」
「ニャ、ニャニーッ! おれは神様直々に殺されたってのか!? 聖女様のハダカ見るってのは、そんなに罪深かったってのかヨォーッ!?」
「フッフッフ。オマエは犬ッコロの交尾を見て『ケシカラン!』と憤るのか?」
ちくしょう、見下しやがって。
神様とはいえ、おれ、こんな目で見るヤツは好きになれねぇ。
「理由は与えた”転生”スキルよ。そのスキルを持った者のみ死後の魂を我の元に呼び寄せることが出来る。そして我が意思を伝え、次の新たな生を得ることができるのだ」
「それが”転生”か! まったく死んでから効果がでるスキルだなんて、意地が悪すぎるぜ。生きているときにこそ、スキルで楽したいってのにヨォ」
「間もなく新たな魔王の生誕と脅威がはじまる。ヤツの強力な瘇気に対抗するためのスキル。それを得る運命をオマエに授けよう」
ここだ!
この傲慢な『神野郎』にかますには、”ここ”とみた!!
おれはゴロンとふてくされて寝てやる。
「勝手な理屈だぜ。そのためにおれは殺されたってのか? なんで、おれを殺したヤツの言うことを聞かなきゃならない?」
「魔王が生誕したのだぞ。一刻もはやく倒さねば、大いなる災いとなり、人間のほとんどが殺されてしまう」
「知らねぇなーッ。おれは死にたくなんかなかったんだぜ? 弟も生まれたってのにヨォ。『人類の危機だ、ハイ転生します』じゃこっちの気がすまねーのよ」
さて。神様にかましちまったが、どうなる?
『だったらオマエに用はない! 最低の地獄へ行けェ!!』
とか言ったら、別のロジックで攻めねーとな。
「……そうだな。たしかにオマエの人生を終わらせたケジメはつけねばならんな。ではオマエが生まれ変わるにあたって、何か望みを一つだけかなえよう」
「一つ……ねぇ。何でもいいのか?」
「何でも、というわけにはいかんな。生まれる場所は、魔王討伐の環境の整っている家。将来獲得するスキルも、二枠は我の選ぶものを得てもらう。だがそれ以外の、大きな世界のうねりに影響のない範囲でなら、少しばかり骨を折ってやろう」
よし、落としどころだな。
おれ最高の願いは、もちろん聖女嫁!
聖女の嫁さん貰えるなら、魔王とだって戦ってやるぜ!
「では神よ! おれの望みかなえやがれェ!! それは輝くような美貌の聖女! つぶらな瞳、金髪でつややかな髪。存在するだけで辺りを静謐にするが如き清楚な雰囲気を纏い、細身な肢体でありながら豊かな胸! 男なら誰しも見惚れ、憧れるような魅力をもつ。そんな聖女を……」
『嫁によこせ』と言う前だった。
「わかったわかった、もう良い。まったく変わった趣味をしたヤツだ。そのように転生させてやるから、せいぜい役にたつ強い男を味方にしろ」
……………………はい?
いやオッサン神!
もしかして、とんでもない勘違いしてる!?
『おれは聖女になりたいんじゃなく、嫁に欲しいんだよォォォ!!』
そんな反論をする間もなく、おれはその場から飛ばされた。
気がつくと、ノルデン伯爵令嬢『エルフィリア』として生まれ変わっていた――
◇ ◇ ◇
「つまり、エルフィリア様は俺の兄ジョゼフだったと? 正気ですか?」
「そうです。久しぶりですね、シーザ」
ニッコリ微笑むその姿は可憐で尊く、思い出のジョゼフ兄貴とは似ても似つかない。
この最高聖女エルフィリア様が、あの聖女ニストの兄貴の生まれ変わりだと!?
当のエルフィリア様の言葉であろうと、心が受け入れることを拒否してる!!
「え、ええと? あなたがジョゼフ兄貴だとしたら、何で僕にそんな口調なんです? 周りに誰もいないのに?」
「それが………ガチャ神様への願いの影響か、このような話し方と振る舞いしかできないようになってしまっているのです。わたしも、もっと豪快に座ってガハハ笑いとかしてみたいのに」
それは俺が見たくないので、やめてください。
しかし、その悲しそうな仕草すら可憐で美しい。
たとえ、しょうもないことで悲しんでいるとしても!
「ハッ! ちょっと待て。十年前だぜ、兄貴が死んだの。それから生まれ変わったってことは……!」
恐ろしいことに気がついてしまった!
きっ聞くのが恐い。
答えを聞いたら、俺はきっと正気ではいられないだろう。
けど、それでも聞いてしまう!!
「エ、エ、エ、エルフィリア様はいったい年いくつなんですーーッ!?」
「8才です」
ドッギャーーーン
俺の頭はパーになってしまった。
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