68話 反撃に出よう
ここは? まさか神の領域⁉
ダメだ……意識が……心が保てない。
俺が消える……
ガシッ
え?
何者かが俺の手を強く握る感触で、意識が引き戻された。
その手を握る者とは……
「ネウディシ⁉」
それは巨漢の魔人ネウディシ。
さっきまで戦っていたアイツだった。
「何でお前が……」
「戻れシーザ。俺を降した男が、ここで消滅することは許さん
「……いいのか? 俺はアンタの親友を殺すぜ」
「『俺は生きる』と言ったな。それで迷いが生まれた。おれ達死人が、必死に生きる者を闇の力で支配してよいのかとな」
「いいわけないだろう。そんな計画はブッ潰す。カズスも殺す。あいつには、村の仲間をゾンビにされたり、ワーグをいい道具にされたりしたからな」
「それも良い。シーザ、きさまは人間らしく生きろ」―――
「あ?」
「気がつきましたか! こっちの世界に踏みとどまることに成功しましたね」
気がつくと、俺はエルフィリアのひざ枕で寝かされていた。
「良かった……わたしの法力は全開にすると、生きた人間でも昇天してしまうのです。本当に目をさましてくれてよかった……」
なんてヤバイ状況だったんだよ。
しかし……夢で見たネウディシは、俺を助けてくれたんだろうか。
それとも本当にタダの夢か。
……考えてもわからないことに頭を使うのは時間の無駄か。
そして俺が目を覚ましたことが伝わると、みんなが集まってきた。
「シーザ! 無事だったのね!」
「すごいよ! あんなとんでもない奴を倒したんだって?」
クージーQとウサウサ。
どうやら森から戻ってきたらしい。
「まったくマジかよ。王国でも最強に数えられるおれらが、三人がかりでやられちまったってのに。本当にⅮ級のヒヨッコかよ」
「ふむ。二人とも日をもうけて、スキルの強度および戦闘力の測定をするべきでしょうな。申告されたそれとは、あまりにかけ離れすぎている」
ポルマレフとアムドウルもボロボロの状態だが、しっかりと立って話している。
どうやら戻ってきたクージーQが治癒魔法で回復させたようだ。
「感動したぞ、名もなき勇者よ! このヒュトロハイムも、きさまを称えよう!」
名はあるよ。シーザだよ、ヒュトロハイム。
ついでに、アンタんとこの領民だ。
「さて、坊主が目覚めて、めでたい気分に水を差すようじゃがの。これからのことを考えねばならん。皆、今一度、気をひきしめてもらいたい」
「スキード・ワゴンさん。あなたも無事だったんですね」
「うむ。あの三人の魔人が現れおったとき、ワシだけでどうにかこの危機を伝えに行かねばならんと、困難を予想したのじゃがのう。まさかここまで状況を好転させるとは。感謝するぞ」
自分だけで逃げるつもりだったのかよ。
まぁここで全滅して、誰も危機を伝えられなかったら大変なことになってたし。
トップ冒険者として、合理的な判断だと思っておこう。
「スキード・ワゴン財団として約束する。この礼は必ずするとな。しかし、今は最終試練の場に向かった奴らのことじゃ。幸いヒキャク鳥車は無事。まずはこれをどこへ向かわせるか」
修羅場を抜けたばかりで、すぐ次の方針をみんなに考えさせる所なんかは、さすが世界一と言われた冒険者だな。
このじいさんがリーダーだったパーティーは、さぞ強かったろう。
「この一件、ジャウギ殿下も死亡しております。国王陛下に伝えないわけにはいかないでしょう。片方は王都へ向かわせるべきですな」
「ウム。その役はアムドウル、おぬしに頼む。陛下にお目通りとなれば、その身分をもっているのはおぬしだけじゃ」
「で、片方は当然、最終試練の場だな。そっちへ行く御者は当然おれだが、そこでどうする。暴れている奴らと一戦やるのか?」
「そうであったなら、当然わたし達も加勢します。ですが、おそらく奴らは動かないでしょう」
「ほう、何故じゃお嬢ちゃん?」
「奴らが強襲して【メイジャの聖石】を奪うという作戦は、魔人三人がそろっていることが前提のものでしょう。ですが最大戦力であろう魔人ネウディシは失われております。となると、作戦の見直しをしなければならないはずです」
なるほど、さすがはエルフィリア。
となると、カズスはどこか最終試練の場の近くに潜伏せざるを得ないはずだ。
「フフフ、奴らはとまどい足が止まっている状態というわけか。ではそれは、ワーグとカズスとやらを討つ絶好のチャンスというわけだな! 最終試練の場には、リヒテラーデ家の家臣団が控えておる。わたしが率いて目にもの見せてくれるわ!」
「いえ、討つのは賢者リッチのカズスに絞るべきでしょう。ワーグはカズスに操られているだけ。あの竜人娘と戦うのはリスクが高すぎますし、彼女とは戦いを避けるべきです」
道理だが、それは可能なのか?
俺はつい、口をはさんでしまう。
「しかしカズスと討とうとしたら、当然ワーグもそれを阻みにでるんじゃないか?」
「でしょうね。ですが、わたしに策あり。見事カズスとワーグを分断してみせましょう。ねぇジャウギ殿下」
首をはねられ体を奪われたジャウギ。
その首は、布でまかれて車の奥に保管されているそうだ。
しかし被っていた仮面は、何故かエルフィリアの側に置かれていた。
エルフィリアは、その仮面に向かって意味ありげに微笑んだ。
第四章はこれで終わりです。
第五章は、洗脳されたワーグを取り戻す戦いが中心になります。




