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53話 対決の暴力勇者!

 俺達がヒキャク鳥車のとめてある場所へ行くと、クージーQキューがひとりポツンと座っていた。


 「よぉ、ジャウギ殿下は戻って……いるようだな。お楽しみ中か」


 奥の方から「ドカッ バキッ グシャァッ」と人を殴る音が聞こえてくる。

 「バキバキバキッ」という骨の砕ける音も。

 事が終わったあとのジョイスロウ殿下は、全身の骨がバキバキに砕けている。

 エルフィリアが加わって回復力が上がったことで、遠慮なく死亡寸前の重体にしてしまうのだ。


 「ええ。まだ始まったばかりだから当分続くわよ。ここで待っている? この音を聞きながら」


 そう、クージーQキューはいつも万一のためにここで控えている。

 俺達はこの音が嫌で離れているのに。


 「いや、今日はジャウギ殿下をいさめに来た。『いい加減やめろ』ってな」


 「はぁ? やめるわけないでしょ。それ言った瞬間に殺されるわよ。傲慢な王族にとっては平民のアンタの命なんて軽いんだから……ち、ちょっと! なに本当に行こうとしてんのよ!」


 クージーQキューは俺の服のすそをしっかり掴んで止める。


 「大丈夫だ。放してくれクージーQキュー


 「……本気なの? いくらエルフィリアでも死人は治せないでしょ」


 「治せませんね。でもシーザは死なないから大丈夫です。放してあげてください」


 クージーQキューは信じられないものを見るように俺達を見た。


 「アンタたちおかしいわよ! いくらシーザがちょっと強いからって、勇者に選ばれた者とは格が違うわ! 行くのはやめて!」


 俺はクージーQキューが裾を強くにぎりしめた手に、そっと俺の手をおいた。


 「ありがとう、いつもジョイスロウ殿下が万一のためにここにいてくれて。奴の恐ろしさは知っている。それでも俺は行く。絶対死なないから、この手を放してくれ」


 クージーQキューの目を強く見つめること数舜。

 彼女はそっと俺の裾を放した。


 「……行ってきなさいよ。せめて命だけは守りなさい」


 「ありがとうクージーQキュー。君はたしかに嫁にしたい聖女だ」


 「なによそれ!」


 彼女の顔が分かりやすく赤くなった。



 ◇ ◇ ◇


 バキィッ ドガッ ボギィッ ゴキッ メキッ グシャァッ ベキベキベキッ


 ジョイスロウ殿下の繋がれている場所に行くと、殴る音はいっそう大きく響いてくる。

 そこにはジャウギが楽しそうにジョイスロウ殿下を殴る姿があった。

 本当に暴力の申し子みたいな奴だ。


 「ウワッハハハ! ジョイスロウ、オレは気分がいい。よって面白い話を聞かせてやろう。きさまとシェインはかつて友だった。それが何故きさまと敵対するようになったのか!」


 え? そうだったの?


 「ゲホッ……な、なに?」


 「フフフ久しぶりに声を聞いたな。やはり気になるか。奴は愛するエルフィリアとともに旅に出ることを望んでいた。だが、エルフィリアが選んだのはきさまだった。あきらめきれないシェインの心の渇きを知ったオレは……」


 「ま、まさか!?」


 「奴を悪魔に心を売らせたのだ!!」


 な、なんだってぇーー!!?

 あの性格は元々のものじゃなかったのか!?


 「オレは奴にささやいた。欲しい女は力ずくで奪い取れと! 甘いジョイスロウではエルフィリアを守りきることはできんと! 目論見通り奴はすべての財力権力を駆使し、最強となってエルフィリアをきさまから奪っていったわぁ!」


 「き……きさまがシェインを! そしてその結果、エルフィリアまでも!」 


 「ククク)~い顔だ。きさまらは術中におちいり、その結果オレは勇者の地位を手にすることができた! ヒャハハどうだ悔しいか、くやしいかぁハハハハァ!!」


 「シ、シェインが血迷ったのは……きさまのためにエルフィリアとシェインは死んだというのか!」


 エルフィリアは生きてます。

 というか本人による【計画的死んだフリ】なんで、このことはジャウギ、シェインのどちらも責められないんだよね。

 エルフィリアに代わってあやまるよ。

 血迷わせてゴメン。


 「しょせん弟のきさまは兄であるオレには勝てん! オレを出し抜ききさまが手にした勇者の地位は、オレが奪ってやった! シェインの無能がエルフィリアを死なせなかったら、エルフィリアまでも奪ってやったのになぁハハハ!」


 そしてジョイスロウ殿下の前でヤりまくりってか?

 めぐりめぐって彼女を手にしたのは俺だけども。

 けど、もうこれ以上は聞いてられない。

 俺は出ていき、ジャウギの背後に立った。


 「じつに最低ですね。ジャウギ殿下」


 「シーザ……? よせ、逃げるんだ!」


 相変わらずやさしいな、ジョイスロウ殿下。

 自分は拷問されているのに、俺の身を案じてくれるなんて。


 「なぁにぃ? 貴様、何しにきた?」


 「お諌めにまいりました。いかにジョイスロウ殿下が不始末をしたとはいえ、連日このような無体な真似は度をこしております。おやめください」


 「ひっこんでいろ!」


 ブウンッ


 ジャウギの鉄塊のような裏拳が俺の顔面にとぶ。


 シュルン


 されどスキルで滑らせ、拳は顔をすり抜けた。


 「なにっ? 貴様……!」


 「たまには違った相手に拳を向けるのもよろしいでしょう? お相手いたしますよ、ジャウギ殿下」


 


 

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