表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/89

50話 男子立ち入り禁止の女の修羅場

 修羅場になったエルフィリアとクージーQキューは、俺達から離れて二人っきりで何やら話こんでいる。

 俺には聞こえないが、ウサウサはウサ耳をピンと立て、その会話を緊張した面持ちで聞いている。


 「なぁウサウサ。リンは……いやエルフィリアは大丈夫なのか?」


 「うん、まぁ上手くクージーちゃんをなだめているよ。こういった話術はさすがだね。ジャウギ相手にも、たくみに処刑をかわしていたし」


 そういや、そうだったな。

 あの悪の帝王みたいなジャウギすら手玉にとったエルフィリアが、女の子一人の詰問にどうこうなるわけないか。


 「それより森の方からまた誰か来るよ。足音から人間………あ、ポルマレフさんだ」


 人物特定までできるのか⁉

 ウサ耳すげえっ!

 やがて森の方から、本当にポルマレフさんが駆け足できた。


 「お前ら、無事だったか。オークどもは……みんなやっつけちまったのか。わざわざ、おれが来るまでもなかったな」


 ポルマレフさんはオークどもの死体を感心したように見た。


 「ええ、どうにか撃退しました。もしかしてポルマレフさんだけが戻ってきたのは、助けにきてくれたんですか?」


 「ああ、襲撃は上手くいったんだがな。ちょいと誘導に失敗しちまって、こっちの方向にオークの一団を逃がしちまった。で、おれだけ援護に戻ってきたわけだが、必要なかったみたいだな」


 いい奴だな、この兄ちゃん。

 これが騎士道ってやつかね?


 「ところで聖女さんとリンちゃん、あっちの方で何やってんだ? 夜はかたまっていないと危険だぞ」 


 「あーその、女同士のいざこざがありましてね。しばらく二人っきりで話をさせているんですよ」


 「なんだケンカか? しょうがねえな。よしっ、ここはポルマレフお兄さんが一言いって解決してさしあげよう」


 いい奴すぎる!


 「い、いえ女同士の話に男がからむと、ロクなことがないですよ。おとなしく待っていましょう」


 「まーまーここはひとつ、おれにまかせなさぁい。大人の男ってやつを教えてさしあげよう」


 ポルマレフは意気揚々とエルフィリア、クージーQキューの方へ行ってしまった。


 「大丈夫かな?」


 「……大丈夫じゃないみたい。ポルマレフ、リンちゃんにやりこめられてる」


 やっぱりな。

 大人の男も、エルフィリアから見ればアホな若造だ。


 「うわっ、クージーちゃん、きっつ!」


 な、何を言われたんだ?


 ドドドドドドド

 うわっポルマレフさん、すごい泣き顔で駆けてくる!


 「うおおおん、あんまりだああああ!!」


 ポルマレフさんはそのまま森の方へ駆け戻ってしまった。

 やっぱり、女同士のいざこざに男が入るとロクなことがない。

 俺も気をつけよう。



 やがて二人は戻ってきた。

 険悪、というほどでもないが、かなり微妙な雰囲気だ。


 「話は終わったか。で、どういう結果になったんだ?」


 「別に。ただ、エルフィリアの現状はしばらく黙っててあげるだけよ。そういう事情なら、実家にも貴族間にも秘密にしてほしい気持ちは分かるし」


 うおおおおっすごい! 本当に説得しやがった!?

 天才チート話術師だ!

 『冒険者になりたい。だから死んだことにして家出しますから』なんて、こんなカタブツそうなにどうやって納得させたんだよお!!!


 「ほ、本当にいいの?」


 「ええ。エルフィリア、アンタにしてはひどい不覚をとったわね。パーティーの勇者を吸血鬼にされたうえ、自分はリッチの呪いでこんな子供にされちゃうなんてね。同情するわ」


 はぁ? なんだそりゃ?

 それに同情している割には、すごい良い顔してるぞ。

 対するエルフィリアは、クージーQキュー)とは対照的な憂いの悲しげな顔。


 「ええ。わたしは光の能力ちからが強すぎて吸血鬼にできないため、こんな呪いをかけたのでしょう。この呪いだけでも解かないと、恥ずかしくて家に帰れません」


 「ふふーん、そうよね。しょうがないから、そのリッチは私が倒して呪いを解いてあげるわ。いちおう友達だしね!」


 え? 友達に格上げしたの? それにしても何なの、その作り話は?

 ……ハッ! そ、そうか。

 その作った話で、あえて自分の弱さを演出したのか!

 それによりクージーQキューの自尊心を上げると同時に同情をさそい!

 結果、自分の秘密を守らせることに誘導したというわけか!

 お見事です、エルフィリア様!!



 ◇ ◇ ◇ 


 「ふうっ。どうにか巧みな嘘で、クージーQキューを黙らせることに成功しました」


 俺と二人っきりになると、エルフィリアは深いため息をついた。


 「あんな嘘をついて大丈夫なのか?」


 「クージーQキューなら大丈夫でしょう。あの、いい子ですから」


 「そんないい子を騙すってのも……なぁ。エルフィリアのこと、友達って言ってたし」


 「こんな嘘でもなきゃ友達になんてなってくれません。あの子、わたしへの劣等感で一緒にいるのがつらかったようですから」


 同じ職業の聖女ゆえに、エルフィリアの凄さが眩しすぎたのか。

 俺でいえば、あの世界トップ冒険者のスキード・ワゴンと友達になるようなものか?

 たしかに気おくれして、友達なんて難しそうだな。


 「人間関係は嘘がなきゃまわらないことが多いです。悲しいですね」


 「俺は人間関係で嘘なんかついたことないぞ。そりゃエルフィリアが特別だからだろう。ジョイスロウ殿下のときだって……」


 と、ふいにジョイスロウ殿下のことを思い出してしまった。


 「なぁエルフィリア。話は変わるが、ジャウギの件こっちから仕掛けていいか?」


 この一言でエルフィリアの顔が真剣なものに変わる。


 「危険ですよ。ジャウギのS級戦闘スキルもですが、スキード・ワゴンの一派はジャウギの護衛も頼まれています。言うまでもありませんが、三人ともそれぞれの分野でトップクラスの実力者です」


 「分かっている。けどな、このままじゃジョイスロウ殿下が保たない」


 「……たしかに。ジャウギの出方を待っている余裕はないかもしれませんね」


 その後、俺達は無言で殿下のいるヒキャク鳥車の荷台を見つめた。

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >あんな嘘をついて大丈夫なのか かなり無理がある嘘の内容。後々響くぞ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ