47話 暴走ヒキャク鳥車
南方のめずらしい陸走巨大鳥をつないだ強走仕様車。
その疾走は見た目を裏切らず、やはり相当なものだった。
荷台から振り落とされたり、制御をあやまってどこかにぶつかったら確実に死ぬほどに!
「うわあああ!ポルマレフさんスピード出しすぎ!」
「ハッハッハ。これぞヒキャク鳥の味! この風、この振動、これこそ戦場よ!」
「ここは戦場じゃありませんよ! 走っている場所も道じゃありません!」
道なき道を疾走するヒキャク鳥車は激しく揺れまくる。
この車の車輪は特別仕様で大きく、悪路を疾走しやすいようにいかつく作ってあるが、それでも振動は相当なものだ。
「ハハハハ道など走ったら、人を吹き飛ばしてしまうよ。このヒキャク鳥は道なき道でなければ走らせられんのだよ。まさにモンスター車! スピードに狂った騎士のための車だ!」
スピードに狂ってんのかよこの兄ちゃん!
さて、他のメンバーはどうしているかというと。
「しっかりしてねクージーちゃん。あなたのおっぱいはアタシが命に代えても守るから!」
「ううっ。胸に顔をうずめるなぁ」
クージーQがグロッキー状態なのをいいことに、ウサウサは彼女の胸を抱きしめて思いっきり堪能している。
こっちはジョイスロウ殿下を必死にささえているってのに。くそっ。
そしてエルフィリアは、御者台の近くで振動にもバランスをよくとりながら地図の確認。
こういった場合の適応力もベテラン冒険者の風格を感じさせる。
「リンちゃん、地図でちゃんと確認してるか? この道であっているんだろうな?」
もし方向が違ってたりしたら、俺達全員ジャウギに殺されるんだろうな。
「もちろんです。この丘を越えたので直線距離が続きます。もっとも道ではありませんが」
「よおしッお楽しみの時間がきたぜ。レディースアンドジェントル! これから騎馬戦で使うとっておきをやってやる。いまとは段違いにスピードが上がるから、振り落とされるな!」
「えええっ! まだスピードを上げるの⁉ そんなのムリムリムリ!!」
「”これ”をやらなきゃ、おれが雇われた意味がないんだよ。男ならお嬢さんがたを守ってやんな。ハイヨーッヒキャク鳥!!」
パシィンッ
ポルマレフが強めに鞭を入れた瞬間だ。
ヒキャク鳥は狂ったように走りだした。
「ギャーーッ!死ぬ死ぬぅっ!!」
「ハッハッハ。ヒキャク鳥は全力疾走を一時間ばかりしていられる爆走モンスター。一時間たっぷりこのスピードを感じてくれ」
冗談じゃねぇ! このスピード狂め!!
俺達、もうほとんど座ってられない。
壁やら天井やらにぶつかりながらも枠木にしがみつくのだった。
◇ ◇ ◇
とまぁ五日ばかり暴走ヒキャク鳥車に乗って、ようやく目的地・第三試練の場へとたどり着いた。
そこはオークの森。
ここにいるボス格のオークロードを倒すのが第三試練の内容だ。
ジャウギはヒキャク鳥車から降りる早々、戦闘装備姿。
「フン、ブタ臭い森だ。さっさと片づけるとしよう」
「ですな。日程の計算ではそれなりに余裕がありますが、ひとつ狂えばたちまち遅滞して失格になりますからの。急ぎましょうかの」
「移動、帰還を含めて三日といった所かな。シーザ、物資の受け取りはたのんだぞ」
ポルマレフの兄ちゃんが言った通り、彼らがクエストに行っている間、スキードワゴン財団からの物資の受け取りをして次の移動に備えるのは、サポートメンバーの俺達の仕事だ。
さて、出発直前の勇者ジャウギのパーティー。
メンバーは勇者ジャウギ、レンジャーのスキード、剣士ポルマレフ、魔法師アムドウル、聖女クージーQのはずだった。
だが、ここでまたジャウギが問題を起こした。
「おい聖女、きさまは置いていく。ジョイスロウの面倒でもみていろ」
いきなりクージーQに戦力外をつきつけたのだった。
「な、なぜです! 私はパーティーの回復の要。魔王討伐の際の現場の浄化にも必要なはずです!」
「ああ、その時には役に立て。だが、今回のクエストは豚殺し。きさまのような足手まといを連れて行くくらいなら、ブタの臭いなど我慢するわ」
「わ、私が足手まとい⁉ きき捨てなりませんジャウギ殿下! 私は聖女選抜を勝ち抜いて勇者パーティーの聖女となりました。みなさまの遅れとなることなど何一つありません!」
「そのデカ乳でか? 自分の姿を自覚しろ。きさまがどんな経歴だろうと、足手まといの小娘そのものだ。おとなしく待っていろ」
さすがの暴言にスキードもたしなめる。
「ジャウギ殿下。回復役を連れていかないクエストというのはいささか乱暴ではありませんかな。ジャウギ殿下の力は知っておりますが、クエストに絶対はありません。万一の備えは必要ですぞ」
「フン、普段ならそれも良い。だが今は時間をできるだけ短縮してクエストをこなさねばならん。デカ乳小娘を連れていけば、それだけ遅れる」
「しかしですな。試練には聖女との連携も確認せねばならない課題。それを……」
バキイッ
「あぐっ!」
なっ⁉
ジャウギの奴、いきなりクージーQを殴りやがった⁉
「ジ、ジャウギ殿下! いったい何を⁉」
俺達は思わず飛び出して、クージーQの元へ駆け寄った。
「聖女様は負傷中だ。オレらだけで行く。いいな」
スキード・ワゴン一行は何やら言いたそうではあったが、結局のところジャウギの言う通りにすることにした。
「すまんのう。時間がないのも事実じゃしな。坊主、お嬢ちゃんたち、クージーの嬢ちゃんを頼んだぞ」
「シーザ。彼女に美味いモンでも食わせてなぐさめてやれよ」
そう言って彼らは行ってしまった。
さて、クージーQはと見ると、泣いていた。
「大丈夫か? 痛むのかクージーQ?」
「待っててください。すぐヒールをかけます」
「いい。自分でできる。でも……」
彼女は俺達に顔を見せないよう向こうを向いて、それでも背中で痛々しいほどに泣いていた。
「悔しいよ、私だって勇者パーティーなのに………足手まといなんかならないよう、必死にがんばってきたのに……」
クージーQをシーザにデレさせる展開にしようかな?
でもなぁ。
昔カッコいい女キャラが、主人公にデレた途端頭のおかしい恋ボケ女に変貌したことがあってだな。
『あの頃の彼女を返して!』というトラウマがあるので、そういうのが苦手なんですよね。
本当に彼女、どういう立ち位置にしようかなぁ。




