45話 巨乳聖女
メディスン街を出て、スキードの用意した高速馬車とやらへと向かっている。
先頭のスキード、ジャウギより少し離れて俺とエルフィリア、ウサウサがついていくといった状況だ。
「それにしてもスキード老はどのようにして間に合わせるつもりでしょうね。”勇者の試練”の大まかな流れを知るものとしては、30日以内に第三第四の試練を突破して最終試練の場に行くなど不可能に思えますが」
「やっぱり無理め?」
「試練の内容はともかく、問題はやはり距離。普通に馬を飛ばしたとしても、移動だけで40日。それに加え試練には数日かかるものもありますし、旅の準備もあります」
「ま、無理なら無理でしょうがないね。正直、勇者レースの結果なんて関係ないし」
「むしろ相手の勇者を応援したい気持ちだね。ジャウギには『負けて泣いっちまえ!』って気分だよ」
「ですが、あの伝説の冒険者【スキード・ワゴン】がどうにかすると言っているのです。伝説のお手並みが少し楽しみです」
さて、前を歩くジャウギとスキード。
こころなしか、ジャウギはあせっているように見えるが、スキードは不可能クエストを前にやけに余裕そうに見える。
「おい、じじい。それでどうするつもりだ? オレをどうやって第三第四の試練の場につれていく」
「もう見えてきました。アレを使ってですじゃ」
スキードの指し示す方向には、二台の大型馬車があった。
「馬車か? いや、つながれているのは馬ではないな。なんだあの獣は」
ジャウギの言う通り、それぞれに二頭ずつ繋がれている獣は異様だった。
背丈は人の倍近く。
頭部には巨大な嘴、体は羽毛に覆われ、足は巨大な鳥のものであった。
大型の鳥の亜種か?
「ハハハ獣ではありません。鳥ですよ。【ヒキャク鳥】と申します。南方の魔獣で、飛ぶことはできませんが、速力もパワーも馬の2、3倍はあります」
「ふむ……車輪が妙な形をしてデカいな。しかしこんなデカい馬車を引いて、速度は出せるのか?」
「車体の大きさの理由は、魔法技術により、ある程度自走できるようにしているためですじゃ。さらにこの車輪は、道のない悪路を走ることを想定したもの」
「ほほう。さすが財団などをつくった冒険者。たいしたものを持っているな。それで、試練をめぐり最終試練の場へはどの程度かかる」
「移動だけなら20日ほど。さらに道中にはわが財団のものが補給の手はずは整えておりますゆえ、準備のロスもありませぬ。あとはジャウギ殿下がいかに早く試練をやり遂げるか」
「フフフ十分だ。第三第四のどちらも一日で片づけてくれるわ。さて、さっそく……いや、もう二つ荷物があったな。面倒だが置いていくわけにもいかん。おい、お前たち」
ふいにジャウギが俺達を呼んだ。
「オレらの馬車がとめてある場所にジョイスロウと聖女がいる。そいつらを連れてこい」
な、なんだってーっ
俺達は急いで南大門近くのジャウギの愚連隊のいた跡に向かった。
馬が外されたいくつもの馬車の群れ。
その中に、たった二人だけいるものを見つけた。
深く眠っているジョイスロウ殿下と、聖女の旅装をしている少女だ。
しかしその少女の目を引くのは、圧倒的な質量の巨乳だ。
いやいや、それより俺達が呼びかけても目を覚まさないジョイスロウ殿下の方が心配だ!
………しかしデカい。いやいや。
「おいアンタ。ジョイスロウ殿下は目を覚まさないが、無事なのか?」
「なぁに? 誰、あんたたち。殿下は無事よ。チンピラどもにボコられたんで、治療して眠らせているの。あと、あんまりコレに目をやらないで」
彼女は胸を覆い隠すように腕をまわして言った。
つい巨乳の方に目をやってしまったか。
「あ、ああ。俺達はジャウギ殿下の旅をサポートする冒険者パーティーの【駆ける疾風】だ。ここにいるジョイスロウ殿下と聖女を連れてくるよう言われたんだが……あんたがその聖女か?」
「サポート? ジャウギ……殿下には”勇者親衛隊”とかいうチンピラ兵隊がついてて、そんなものいないはずだけど?」
「そいつらは全員リタイアだ。ここからは別のメンバーがつくことになっている。とにかくジャウギ……殿下に急かされている。ジョイスロウ殿下は俺達が運ぶから、あんたもついて来てくれ」
「はぁ? あいつら全員がいなくなったって? 何がどうしうたら、そうなるってのよ。だいたい、いきなりそんなことを言われても信用するわけないでしょ。行かないし、ジョイスロウ殿下も渡さないわ」
この子の言うことも、もっともなんだよな。
ジャウギは何を考えて初対面の俺達だけで迎えに行かせたんだか。
「ねぇ。本当にアタシたち、怪しいものじゃないのよ。一度そのお胸をもませてくれたら、それが分かると思うわ」
ズコーーッ
ウサウサ。説得してるつもりなのかもしれないが、いきなりセクハラかましてんのは何なの⁉
「む、胸のことは言うな! だいたい、む、む、胸をも、もんで、どうしたアンタ達が怪しくないって分かんのよ!?」
「アタシの真心こめた胸マッサージで聖女ちゃんが昇天したとき! その時こそアタシが心に曇り一片の邪心もない善良な人間だと知ることでしょう。さぁ怖がらないでお胸を前に出して」
ウサウサは手をワキワキ。
巨乳さんは胸を手で覆いながらジリジリさがる。
ああもう時間ないんだって。
なんでそんな時に変態プレイはじめてんだよ。
しかたない。事情をはじめから説明してやるか……と思ったときだ。
「お願いしますクージーQ。わたし達を信じてください」
え? 【クージーQ】? この子の名前か?
エルフィリア、この子を知っているのか?
「あなた……私を知っているの?」
「ええ。あなたは名門魔法師【Q】の家系に連なりしもの。その高度な魔法教育によって、勇者パーティーの聖女として選ばれた者ですね」




