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43話 スキード老と語る

 出立前のあわただしい時間であるが、スキードはアークライトの話を聞くため、宿の一室を借りてその話を聞いた。

 俺とエルフィリア、それにウサウサも一緒だ。


「【賢者カズス】らしきリッチか……いや、そいつは間違いなくヤツじゃろうな。百年前の魔王討伐を成功させた賢者カズスと勇者ネウディシの追放撃。その詳細ならワシは知っておるよ」


 「いったい何があって、英雄が追放などという事態に?」


 「カズスとネウディシ。奴らは魔王討伐から帰ってきたのち、宮廷でこう提案したのじゃよ。『次に魔王が生まれたときには討伐せず、その力を取り込むべきだ』と。『討伐で入手した魔王の調査データを使えば十分に可能。人類は魔王によって無敵の存在に進化できる』とな」


 「なんですって! そいつらは正気なのですか? 魔王の暗黒の力を取り込むこと。それすなわち、人間が暗黒の世界の住人になることではありませんか」


 「そうじゃ。わが国の王家と聖教会は光の神によあたえられる生命に感謝し称えることが教え。その教義にまっこうから反対するカズスの意見は直ちに否定され、考えを改めない二人は追放となったのじゃ」


 「ハッ! そうか、カズスがリッチになったのは魔王から発せられる瘴気を取り込むため。そのために自ら不死アンデッドの魔物になったのか!」


 「じゃろうな。奴が立ち去る前の言葉はこうじゃ」


 『バカ者どもがッ‼ 魔王の力を手にいれたいと思わないのかッ‼ 何者をも支配したいと思わないのかッ‼ あらゆる恐怖をなくしたいと思わないのかッ‼』


 「並々ならぬ執念を感じますね。ということはカズスの狙いは魔王の力。しかし今回の一件、それがどう繋がるのでしょうか?」


 「いや、たしかに勇者につながっておる。奴は再び魔王の元へ行くために、勇者を自分の手駒にしようとしたのじゃ。おそらく【勇者の試練】の道中にそ奴はでてくる」


 俺も何となくわかった。

 おそらく狙いは魔王の元へ行くことができる転移魔方陣。

 それがどういった物かはわからないが、多分勇者が必要なんだろう。


 「師匠、お願いがあります。ジャウギ王子の勇者の試練、このウサウサも連れていってください」


 「は、はぁ? アタシ? 何でよ!」


 ああ。話にまったく関係なさそうなウサウサをこの場に連れてきたのは、その提案のためか。


 「今回の一件、カズスの想定以上の力によって多大な犠牲が出た。師匠の安全のためにも、君をつけたい。君ならあのリッチの兆候をあやまたず見つけることが出来るだろうからね」


 「フム、そういうことならありがたい。ウサウサさん、来てくれるか?」


 「………アタシにダイサックを殺した奴の手伝いをしろって? アークライト。アンタの頼みでも、さすがにそれは断りたいね。どう報酬をくれようと、アイツを魔王討伐の英雄になんかしたくないし」


 ………だよな。

 俺達もついて行くことにはなっているが、ジャウギの手伝いなんか積極的にする気にはならない。

 エルフィリアも同感らしく、はじめて口を出した。


 「仮にでもジャウギ………殿下の配下になるということは、それ相応の使われ方をするということです。囮、捨て石、使い潰し。危険すぎます。命令されてしまったわたし達ならともかく」


 「え? リンちゃんとシーザは行くの? バックレちゃわないの?」


 「ああ。奴に連れ去られたジョイスロウ殿下のことも気になるしな。パーティー仲間として放っておけないさ」


 エルフィリアは魔王討伐の件が気になっているせいで、もともと行くつもりだったし。

 だったら、俺もついて行くしかないだろう。


 「王族からの命令ですし、拒否するわけにはいきません。わたし達は行きます」


 エルフィリアの言葉にウサウサは少しだけ考えたが、ハッキリ言った。


 「じゃ、しょうがない。アタシも行くよ」


 「ええっ正気ですか?」


 「うん。リンちゃんと一緒のパーティーなら楽しそうだし。囮とかに使われても、アタシならうまくやれるし」


 ああ。また一人エルフィリアの真翔にとらわれた人間が。

 犠牲者にならなきゃいいけど。

 それはともかく、ジョイスロウ殿下の名もでたし、ついでなのでスキードさんに協力を頼めないか聞いてみることにした。


 「ところでスキードさん。できるならジョイスロウ殿下をジャウギ……殿下から救いたいのですが、できますか?」 


 「いや、残念だがジャウギは手放さんだろう。連れて逃げたりしたら、奴は追ってくる。くれぐれも早まったことはせんようにな」


 「そりゃまたどうして? 勇者の試練で忙しいってのに」


 「ジャウギ殿下はな。【勇者の紋章】のない勇者なのじゃよ。やはり【出立の儀式】以外で授かることは拒否されたのでな」


 「【勇者の紋章】? なんです、それは」


 「勇者に選ばれた者は試練に挑む直前、体にとある紋章を刻まれるのじゃ。詳しくは話せんが、それがなくば魔王のいる場所へと行けんのじゃ」


 「ふーん? つまり、つまり、それを持っているジョイスロウ殿下は手放せないと」


 まいったな。となるとジョイスロウ殿下のことは、出たとこ勝負になるか。

 わに区切りがついた所でスキードは椅子から立ち上がった。


 「さてと、そろそろ行くかの。アークライト、くれぐれも体を大切にな」


 「師匠も。どうか試練が終わったなら、またメディスン街へ来てください」


 「うむ。ああ、それとお嬢ちゃん」


 ふいにスキードはエルフィリアに話しかけた。

 その顔は小さな子供にするようなものではなく、至極真面目なものだった。


 「お前さん、ちっとばかし頭が切れるようじゃがの。王族相手に火遊びをするようなら、いきすぎだと言わざるを得ん。まわりの人間に飛び火することも考えるんじゃぞ」


 エルフィリアに釘をさしてきたか。

 やはり、あのまま事が進んでいればジャウギを殺していたかもしれないと見ているんだろうな。

 手を貸していた俺も、なんとなく成功しそうな感触を感じていたし。


 「ふふっ。ジャウギ殿下が人死にがでるような遊戯などせず、王族らしく公正にふるまっていただければ、わたしも危険な真似などいたしませんわ」


 うえっ。実質的に拒否してるじゃんか!


 「才ある故に恐いものを知らぬ若者か。種類のまぁよい。世の中にはお前さんの知らないことも多い。そのことを、この旅で知ることになるじゃろう」


 俺達はメディスン街を出立すべく宿を出た。





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