41話 立ちはだかる暴虐
ザッザッザッザッザ……
静まり返った遊戯の後の大通りに、ただ一人の男の歩む音だけが響く。
誰しも、この俺自身も、その威圧の前には声ひとつ漏らせない。
男は埋められている俺の前で止まった。
「地面が立つのも困難なほどにすべりやすくなっている……これはきさまの仕業か」
それは暴虐の勇者王子ジャウギ。
それがいま、首だけの俺を見下ろすように間近に立ちはだかっている。
恐え!
騎馬の大群の突進にすら恐怖に飲まれなかった俺が、純粋に恐怖を感じている!
これが大物悪党の貫禄か!!
「きさま……思えば、遊戯前にやけにオレを挑発していたな。怒りで考えることができなかったが、あれはきさまの仕込みか」
うげえっ!
静かな声に、限りない怒りと憎しみがこもっている!!
まなざしは、まるで地獄の底だ!!!
「こんなゴミに……オレの部下が全滅させられただと……こんなゴミに……」
メキッ……ビキツ……
ふりあげる腕は、恐ろしいほど筋肉が膨らんでいく!
なんという怒気!!
ヤベエッ! 潰される!!!
――「お待ちくださいジャウギ殿下」
静まり返ったこの場に、幼くも凛とした声が響いた。
それはエルフィリアだ!
彼女は貴族淑女の悠然とした歩みでジャウギの前に出てきた。
「遊戯に生き残りがでました。これにて遊戯は終了のはず。これ以上の殺戮は無用に願います」
「小娘、きさまはこの男の仲間か。オレの部下をゴミの山に変えたこの男の!」
「はい。兄です」
えええっ!? ちょっと、いまそれを言ったらヤバイって!!
「……そうか。では、小娘とはいえ生かしておけんな。きさまも殺す」
「ズズウッ」とジャウギの腕がエルフィリアの首元へ向かう。
くそっ、逃げろエルフィリア!
なんで、そんなに落ち着いてつっ立ってんだよ!
「しょせんは代役の勇者ですか。二番手がくりあがっただけの」
ピタリ
ジャウギの手がとまった⁉
すげえっ! たった一言の言葉のみで!
「何と言った? もう一度言ってみろ」
「いえ、何も。『弟に負けた二番手勇者が、勝負に負けてヒスをおこして喚いている』など、誰も言っておりません」
「きさまあ!!」
ヒイッ⁉
なんでこんなヤベエ迫力のコイツに、ヤベエ挑発できんだよ⁉
「殿下はこの先、勇者にあるまじき汚点を背負っていかなければなりませんわね。この男”シーザに負けた”という。お気の毒ですこと」
「バカな! オレは負けてなどおらん! 罠にかかったのは、あのマヌケどもだ!」
「殿下はそのマヌケどもの頭でしょう? そしてこの場に立ち会っている以上、殿下が負けたも同然です。宮廷の方々も、そう思わないものはいないでしょうね。そのマヌケどもの様を見れば」
「チラリ」と視線を死体の山となったジャウギの部下に移す。
ジャウギもそれを見て、さらに怒りを募らせる。
「ぐうううっ、おのれえええっ」
「勇者は強さを証明し続けてこそ勇者。もしその汚点をぬぐいたいのであれば、身動きのとれないシーザを殺すのではなく、もう一度勝負を挑んで勝つべきではありません?」
「なんだと? 王族であり勇者であるこのオレが、このゴミと対等の勝負だと⁉ ふざけるなッ!」
「グワアッ」と足を俺の頭上にかざしたあ!!
ヒイッ踏み潰されるっ!
「シーザを殺してしまえば、この敗北の汚点を消し去る機会は永遠に失われてしまいますわ。身分をふりかざそうと、言い訳を百並べようと、殿下に汚点は残り続けます」
ピタリ
またしても、たった一言でジャウギの動きを止めた!
なんて巧みな話術の使い手!
「もっとも。ジャウギ殿下にとっては、シーザはここで殺してしまった方が良いのかもしれませんね。二度目の敗北を知らずにすみますから」
ううっまたしても最悪な挑発!
考えてみれば、奴にこんな暴言を言い続けて、エルフィリアも俺も生きているのは奇跡だ。
この先、一秒先すら自分の運命が分からない!
「フ……フハハハハハッ! 気に入ったぞ」
ジャウギは一転、笑い出した。
そして「ズブリ」と地面に手を入れると、俺の腕をつかんで乱暴に地面から引きずり出した。
ヤベェ怪力だ!
そして俺の顔を奴の目の前にもっていった。
「おい、シーザとやら。剣でも槍でも好きな武器を持ち、最高の防具でかためてここに来い」
「は……はい?」
「小娘の口車にあえて乗ってやる。正式な決闘だ。俺を殺してみるのだな」
ジャウギのその言葉に、まわりは一斉にどよめく。
そしてエルフィリアは、『計算通り』といった顔。
すげえっ! 本当に話術だけでここまでもっていきやがった!
これが……これが【冒険者の天才】の実力か!
―――「そうはいきませんぞ。ジャウギ殿下」
え? この声は?
「あなたは!」
ざわめく人ゴミの中から威厳ある老人の声が響くと、まわりは静まった。
そして群衆をかき分け、顔に大きなキズのある老人が現れる。
それは、先ほど裏路地で出会った伝説の冒険者。
スキード・ワゴンのじいさんだった。
前世、天才だった男が神様にチート能力もらって転生したヒロインに、主人公がSUGEEESUGEEE言う話……って、何だこのなろう小説。
自分で書いてて訳が分からない。




