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38話 悪魔の遊戯

 「ヒィィィ! ジャウギ殿下、どうかお慈悲をォ~~!!」

 「助けてくれ、助けてえええ!!!」 


 街の中央を走る大通りから悲痛な叫びが響く。

 通りの真ん中に、今回の勇者襲撃の実行犯【戦撃の槍】のメンバーが首だけを出して埋められている状況だ。

 こう言っては何だが、あれだけ強面コワモテの【戦撃の槍】の連中、情けなさすぎじゃないか?

 リーダーのジイドなんか涙まで流しているし。

 おそらく優勢なときは過剰なくらい強いが、劣勢になると無能になってしまうタイプなんだろうな。


 そしてそれを見る観衆の俺達の前に、さっきオークランド子爵をいたぶっていた使者Aが出てきて説明をはじめた。


「ルールを説明する。今からわが【勇者親衛隊】がこの道を馬で爆走する!」


 なにぃ!? そんなことをしたら、連中の頭は粉々になるぞ!

 

 「そして一人でも生き残った者がいたなら終了。ジャウギ殿下格別の恩情をもって、この街の罪は許されるとのお達しよォ。なんたる慈悲深い勇者様だァ!」


 そいつの側にいるオークランド子爵はおそるおそる聞く。


 「あ、あの……もし、ひとりも生き残れなかったら?」


 「遊戯は続行だ。子爵、きさまが新たに埋める奴を選べ。生き残りが出るまで続ける」


 「そ、そんな! 住民に犠牲になれとおっしゃるのか!?」


 「ん~では、やめるか? 国王陛下にご報告し、街の奴ら全員死刑喰らう道を選ぶか? それでも良いんだぞ。いや、むしろそうしろ。おれはこの街が燃えるのを見ながら美味うめぇ酒が飲みてェんだ。ガハハ」 


 「うッ……うう……うおおおオオオッ!!!」


 子爵の慟哭が響く中、遊戯は開始された。

 【戦撃の槍】にさんざんやられた連中は、恨み骨髄とばかりに馬を爆走させて道を抜ける。


 「ぎいやあああああああ!!!!!」

 「ぎィエエエエエエ!!!!」

 「たっ……助けてくれッアガガアアアアア!!!」


 十数頭の馬が通り抜けたあとには、頭を潰された【戦撃の槍】のなれの果ての死体だけが残った。

 それを貴賓席で観劇していたジャウギは鷹揚に子爵に言う。


 「ひとりも生き残れなかったな。さぁ死体をかたずけて新たな生け贄をセットしろ」


 「うっ……ううっ……」


 その時だ。歯嚙みするオークランド子爵に幼い少年の声がひびいた。


 ―――「オークランド子爵閣下、次はぼくを行かせてください」


 ええっ!? あの子は!!!


 「「「ダイサック!!」」」


 元【緑の大樹】のメンバーであり、土魔法使いの彼であった。

 彼は小さな体で堂々と進み出てロリコン子爵に礼をとる。


 「子爵閣下、ぼくなら土魔法の【硬化術】で耐えられると思います。決して死にませんからどうか」


 「ダイサックくん……わかった、頼む」


 その他に埋められる者は、犯罪を犯して捕まっていた連中が連れてこられやることになった。

 【戦撃の槍】の死体が片付けられた跡にダイサックと喚くその他が埋められ、次の遊戯の準備が完了する。


 「クックック。この死の遊戯に自分から出向く奴はめずらしい。よくできたガキのようだな」


 「は、はいっ。あの者は放蕩な兄に代わり、幼いながら冒険者をやって親を支えている感心な子なんです。兄よりはるかによくできた弟だと評判の子で」


 ピクッ


 「なぁにィ~~よくできた弟?」


 「そうです、先日は赴いた者の大半が死亡するようなクエストからも帰ってきて家族を安心させました。その親は『兄と違って優秀なよくできた弟』だと……」


 バキィッ


 「ヒィツ!?」


 いきなりジャウギは座っていた椅子を破壊し、子爵の言葉をさえぎった。

 そして親衛隊のリーダーらしき男に怒鳴るように言った。


 「ザッカル! 先頭のガキは『よくできた弟』だそうだ。わかっているな?」


 「へいっ。そりゃあ特別扱いしないわけにはいきませんなァ!!」



 遊戯が行われる大通りの端の最前列にて、俺達はいる。

 いきなり怒りだしたジャウギを俺達は茫然と見ていた。


 「な、なぁ”特別扱い”って? 親孝行なダイサックは特別扱いでよけてくれるってこと?」


 「それは人間の考え方です。ですがあの野獣、別の思考をしたようですね」


 だよな。子爵はジャウギが情をかけてくれることを期待していったんだろうが、かえってマズイことになった気がする。

 パーティー仲間だったアークライトとウサウサも固唾をのんで遊戯の行方を見ている


 「ダイサックの土魔法は幼いながら屈指の力。あの馬の疾走にも耐えれる。がんばれダイサック!」


 「ダイサック。せっかくあんなクエストから生きて帰ってきて、家族を喜ばせたんだ。ここで死ぬんじゃないよ」



 —――「第二遊戯はじめぇ!」


 ドドドドドドドォツ


 開始の合図と共に馬で爆走し、ダイサックらが埋められている道へせまるジャウギ親衛隊。


 「うっ!?」


 だが突然、”ザッカル”と呼ばれたリーダー格の乗る馬が跳ねた!

 馬は信じられないほど高く跳躍。そして―― 


 「ああっ!」

 「やめろォォ、ダイサックゥゥ!!」


 ――ドゴンッ


 着地した場所はダイサックの頭だった。


 「うっぎゃあああああ!!!!」

 「ぎえええええええっ」

 「た、助け……ごぎゃあああ!!!」


 多くの悲鳴が響いたが、馬が過ぎ去った後にはひとつも聞こえなくなった。

 第二遊戯の終わりとともにダイサックの名を呼びながら彼に駆け寄るアークライトとウサウサ。

 だが―――



 「ダ、ダイサック! うおおおおおお!!」

 「く、くそっ! ヤツラ許せないよ!」


 ダイサックの頭は砕けていなかったものの大きく陥没し、彼は息絶えていた。

 アークライト、ウサウサの号泣が悲しくこだまする。

 

 バギィッ


 何かが殴られた鈍い音がして、そこに目をやった。

 ダイサックを殺った【ザッカル】と呼ばれる男がジャウギに張り飛ばされていた。


 「ガキの頭が残っているぞ! 腕がおちたかザッカル!!」


 「すいやせん。野郎、けっこうな土魔法が使えたようで」


 そうか、ダイサックの頭をとくに粉々にするよう指示をしたのか。

 糞っ、ふざけやがって!

 その様を今まで無言で見ていたエルフィリアがポツリと言った。


 「どうやら連中は、この街を本気で滅ぼすつもりのようですね。挑戦する者全てを皆殺しにしていき、街の人間の心が完全に折れた頃に焼き払うつもりでしょう」


 「な、なにっ! 糞っ……!」


 「これでわたしも心が決まりました。貴族の子女として育てられ、少しは王族への遠慮があったのですが……ジャウギには無用のものでしたね」


 「……エルフィリア?」


 「悪党ども……やつら全員、ひとりも生かしては街から出しません」


 幼女の体に眠る【冒険者の天才ジョゼフ】が静かに目を覚ましたのを感じた。



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