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36話 謎の盗賊襲来

 現在、30名ほどの盗賊団が馬で爆走し、メディスン街の南大門に向かっているという。

 門の前で迎撃をまかされたのは武闘派パーティーの【戦撃の槍】。

 それと俺たち【駆ける疾風】だ。


 「フン、たった30名か。その程度なら、おれ一人でも十分だな。お前らには一人もまわさんから、そのつもりでいろ」


 【戦撃の槍】リーダーのジイドは意気揚々といった。


 「ああ。俺たちは万一にも盗賊を入れないための保険だ。門に賊が寄らない限り、そっちが暴れるのを邪魔する気はないよ」


 「ガハハハ、特等席でおれ様の戦いを見せてやる。貧弱なきさまらに”無双”というものを教えてやるわ」


 ジイドは上機嫌で槍を振り回し、前衛に出て行った。


 「暴れる場所があれば王様だね。いっそ傭兵でもやりゃいいのに、なんで冒険者なんてやってんだか」


 臨時加入のウサウサが「ヤレヤレ」といった感じで言った。


 「しかし、その盗賊団もどういうつもりだろうな。たった30名で、これだけの街をおとせるわけもないのに。死にに来ているとしか思えないが」


 ジョイスロウ殿下も最後の仕事として参加している。


 「考えられるのは、これは陽動。どこかに伏兵がいて、門の戦闘に乗じて街に侵入をはかるというものですが……やはり悪手ですね」


 エルフィリアの言う通り、それは街の上層部もとっくに承知して対策はできている。

 俺達と【戦撃の槍】しか門の外にいないのは、他のパーティーは伏兵に備えて中で警戒しているためなのだ。


 「どうも嫌な感じです。この数の盗賊団なら、もっと小さな村か隊商でも襲った方がよっぽど成功を見込めるでしょうに。自殺としか思えないメディスン街へ突撃する理由が、まったく分かりません」



 やがて大きな土煙が立ち上るのを見た。

 そしてモヒカン頭で凶悪そうな顔の連中が、「ヒャッハァーッ」と叫びながら馬を爆走させてこちらへ向かってくる。

 それとともに【戦撃の槍】も動き出す。


 ―――「よォし、ブッ殺せテメェらあああ!!」


 ジイドは槍を振り回し、先頭にたって盗賊どもに向かってゆく。

 配下連中も「うりゃぁぁ、死ね死ね死ねェー!!」と言ってつづく。

 どっちが盗賊だか分からんね。


 「うわっ本当に強い。馬ごとなぎ倒している」


 「たしかに強さだけならメディスン街でも屈指だね。あれで考える頭さえありゃねぇ」


 ジイドの振りまわす槍は縦横無尽に盗賊どもをなぎ払い、その手下も存分に殺しまくっている。

 この分なら俺達の出番はないな。


 「リン、こっちの方まで戦闘が拡大しそうだ。念のために下がっててくれ……リン?」


 盗賊どもが倒れ行くその光景。

 されど、それを見るエルフィリアの顔はなぜか驚愕に見開かれていた。


 「そんな……どういうことです? なんで賊どもがあんなモノを?」


 「バカな! いったいどういうことだ!?」


 それはジョイスロウ殿下も同様でひどくうろたえている。


 「どうしたの二人とも?  ただ荒くれが殺り合っているだけじゃん」


 ウサウサは俺と同じ感想か。

 いったい二人は何を見てそんなにショックをうけているんだ?


 「くそっ、とにかく【戦撃の槍】をとめる!」


 「はぁ? ちょっとジョイ! そんなことしたらジイドの奴に殺されるよ。賊を殺しまわっているのの、何がそんなにまずいのさ?」


 「話しているヒマはない! まかり間違えば、街の人間はみんな反逆罪だ!」


 は、反逆罪!?

 ジョイスロウ殿下は不穏なことを言って駆けだしていった。


 「な、なぁエル……リン。いったいどういうことだ? 二人だけで驚いていないで、俺にも教えてくれ」


 「連中が掲げているあの旗を見てください」


 エルフィリアが指すその旗はやけに立派で、とても賊には似つかわしくないものだった。


 「そういや賊のくせにやけに立派な旗をたてているよな。なんか、どっかで見たことがあるような?」


 「そうだね。アタシも見たことがある気がするけど、どこでだっけ?」


 「…………二人とも、わが国を治める王家の紋章くらい覚えておきなさい。あれこそ、わが王国主権者ホルムト王家のものです」


 「王家……ええっ!!!」


 「あっ! そうだ、国王陛下からの使者が来たとき、あの紋章のついた服を着ていた! 盗賊とあんまりかけ離れてたんで、分からなかったよ」


 「もしかしたら、わたし達はひどい勘違いをしているのかもしれません。もし、あれが盗賊などではなく王家からの使者だったとしたら?」 


 お、俺達は反逆者?


 「そ、そんなバカな! モヒカンをした王家の使者なんてあるわけ……」


 あ、そういえば、王都にジョイスロウ殿下の件で連絡してたんだっけ。

 まさか、その返信の王都からの使者?


 「事はわたし達だけに及びません。あの旗に攻撃した以上、この街すべてが王家へ翻意を示したとみなされるかもしれません」


 「ヒ、ヒイィィィィ! ジイド、やめろォォ!!!」

 「えらいこっちゃ! どどどどうしよう!」


 俺とウサウサは顔を青くして戦場へ飛び込んだ。

 そして、そこで見たものは……


 バキィィッッ


 「え? ジイドの槍が……折れた?」


 戦況は逆転していた。

 圧倒的武力で連中に無双をしていたはずのジイドが、槍を折られ膝をついていた。

 そしてその周りには、他のメンバーも倒れ伏している。

 そしてその前には豪奢な鎧をつけた屈強な男が立っていた。


 「ま、まさかアイツ、ジイドをたおしやがった? 他の奴らも?」


 その高そうな鎧だけは”王家からの使者”だと思わせる。

 しかしその男のまとう雰囲気は、王家の格式高さなどではなく、圧倒的”暴力”のにおいだった。

 そしてその目は倒したジイドではなく、そこに来ていたジョイスロウ殿下を睨んでいた。


 「コイツはお前の仕込みか、ジョイスロウ。勇者の使命から逃げただけではなく、王家に反逆までもたくらんだか」


 「ジャウギ……兄さん」

 

 ジョイスロウ殿下のお兄さん‼?

 じゃあ、このお方も王子様!?

 嘘だろ! どう見ても、盗賊の大ボスだろう!!!





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