34話 帰還後
メディスン街帰還後、アークライトは治癒院へ入院した。
そこに俺とジョイスロウ殿下を招いて、殿下がここにいる説明を求めた。
まぁ、バレてしまったのならしょうがない。
俺はともかく、これまでのことをかいつまんで説明した。
無論、女を追って勇者の使命を放り投げて出てきたことは上手くごまかして。
「…………つまりその女性のために、勇者の使命を放り出してきてしまったと。ハッハッハ、魔王の出現で魔物が狂暴化して大変なときに。まぁ、若さゆえの過ちといいますか」
ごまかしきれなかったか。
ゴメン殿下。
「シーザ、君は知っていたのか。僕の本当の身分のことを。いったいどうやって……」
「い、いや何となく身分の高そうな人だとは思ってたんだ。あとはS級戦闘スキルを見て、どうやら勇者だってことを予想したんだよ」
「ああ、そういえば”七星崩剣”は見せたんだったな。勘が良いんだな」
アークライトは『ゴホン』とセキをして話を戻した。
「でしたら、勇者復帰のために王都への連絡は、ぼくがうけ負いましょう。魔物の狂暴化による被害はこの近隣でも次第に大きくなってきております。一刻も早く勇者に魔王を討って欲しいのは、全王国民の願いでもあります」
あー裏事情ブチまけてぇ。
上の連中、”勇者の試練”なんて政治闘争やって、わざと遅らせているんだよ。
命が惜しいから言わないけどさ。
裏事情を知ってか知らずか、ジョイスロウ殿下は邪気のない顔で元気よく応えた。
「ありがとうアークライトさん。今度こそ勇者の使命を果たすべく、亡きエルフィリアに誓おう」
いや、生きているんだけどね。
エルフィリアも聖女に復帰して殿下の魔王討伐について行くつもりらしいが、どうするんだ。
墓まで作られて思い出にされて、どの面して出ていくんだ?
「それとジョイスロウ殿下。あのリッチですが、百年前の前魔王討伐に赴いた【勇者ネウディシ】のパーティーにいた賢者と名前が同じなのです。もしかしたら、それが何かの理由で勇者を狙っているのかもしれません。気をつけてください」
「あのリッチが賢者? その賢者はどうなったのです?」
「魔王討伐後、王国上層部と何かもめて、勇者ネウディシと共に追放されたようです。聖教会へのひどい冒涜をした、という理由で」
たしかにあのリッチには賢者らしい雰囲気があった。
エルフィリアのホムンクルスなんて作れていたし、かなり知性的な顔をしていたし。
アークライトは、その賢者に間違いないと確信しているようだ。
「ともかく、殿下が勇者に復帰するまでの間に詳しく調べておきます。どうかお気をつけて」
◇ ◇ ◇
さて、アークライトとの話が終わって宿に帰ると、エルフィリアが待っていた。
そこで、今後俺達はどうするのかを話をした。
「……と、いうわけでジョイスロウ殿下は完全にエルフィリアを思い出にしているんだよ。エルフィリアが殿下の前に姿をあらわすのはどうかと思うけどね」
「本当に、姿を明かしにくいことこの上ないですね。殿下がわたしの墓の前で流した涙を見ると」
「しかしエルフィリアが行かなくても、問題なしに魔王は討伐できるんだろ? 殿下を勇者に復帰させたら、このまま帰って良いんじゃないか?」
庶民が上の政治争いに首を突っ込んでも、ろくなことにならない。
メッシーナさんはじめ村から来た皆の死んだことも伝えたいし、そろそろ帰りたいんだけど。
「ええ。それでわたしも安心してパーティーから抜けたのです。しかし……」
「しかし?」
「そうなると、あのガチャ神が、前世のジョゼフを殺してまでわたしを転生させた意味がわからなくなります」
「あっ、そういえば……」
魔王討伐に間に合わせるために、兄貴は神様に殺されたんだったな。
考えてみれば、これも衝撃の事実だよ。
「あのリッチを見てから、漠然とした不安を感じるのです。多分、今回の魔王討伐は茶番では終わりません。あの神もそれを予感して、わたしを無理に転生させたのだと思います」
なるほど。
エルフィリアの決意は固いみたいだ。
だったら、仕方ないな。
「じゃ、俺も行くかな。どうにか殿下のパーティーに参加できるよう、話してみるよ」
「ついて来てくれるのですね、シーザ」
「ま、エルフィリアと一緒に冒険者をやるって誓ったしな」
村にメッシーナさんたちの死んだことを伝えるのは後回しになりそうだ。
「そうとなれば、これから復活やら奇跡の話を集めましょう。できる限り感動的なものにしたいですから」
「は、はぁ? これから何をするつもりだ?」
「死んだエルフィリアの『復活劇』です! 殿下だけじゃなく、メディスン街すべての人間を感涙させるストーリーで甦って、不自然なことをすべて、うやむやにしてしまいましょう!」
どんな壮大な茶番を演じるつもりだよ!
こんな兄貴に振り回されて、ジョイスロウ殿下も可哀そうに。




