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33話 闇にうごめく者達【カズス視点】

 第二章開始!

 最初の話は、悪役サイドの話です。

 とある魔物の森の奥深く。

 そこにある拠点にて、首だけになった私は台座に鎮座している。

 周囲には手下の無数のスケルトンと、あとひとり。 

 魔人となった長き時の盟友がいる。


 「う……うう~あんまりだカズスよ。いったい何て姿になっちまったんだ……」


 盟友はおもむろに私の前で膝をつき、いかつい顔を歪めて目に涙を浮かべる。


 「ああアアああァんまりだァァァァ! カズスの体がぁぁぁぁ! なくなっちまったァァァァ!」


  ドスン ドスン

 その怪力で地面をたたき、ダダっ子のように泣きわめく。


 「アヒィィィィィウォォォォン! おおおおおれェェェェの親友がァァァァァ! 首だけになっちまったァァァァァ! ウォォォォンワォォォォン」


 いい加減、疲れてきた。

 不覚をとった自分への罰だと思い我慢してきたが、もう限界だ。


 「……おいネウディシ。そろそろやめろ。耳元で大声で泣かれても、耳を防ぐことができん。うるさくてたまらん。」


 ピタリ

 そう言ったとたん、泣きわめいていた巨漢の魔人は瞬間で泣き止んだ。


 「フー、スッキリしたぜ。人間だったころの村の風習でな。モンスターとの戦いで帰らぬ者がでたら、こうやって嘆き悲しんで送るのだ。どうだカズスよ。悲しむ者がいるというのは嬉しいだろう?」


 「くだらん茶番だ。そもそも、われらアンデッドに死はない。頭だけになろうと不便もないしな」


 「そうだな。お前には無数の手足がある。ちと細いがな」


 周囲のスケルトンに私を持ち上げさせ、奴の目線へともっていく。

 やはり見下ろされる気分というのはよろしくない。


 「もっとも、この頭だけは失うわけにはいかんがな。これをなくせば、理論的に思考する器官は失われリッチの本能のままに生者の精気を吸い取るだけの魔物モンスターになり果ててしまう」


 「おうよ。目的を達成するまで、その小賢しい頭は大切にしろ。してカズスよ。S級戦闘スキル持ちをベースに、お前が最強に改造した吸血鬼を破った奴とは誰だ。少し興味がある」


 「【シーザ】と呼ばれるシャボン使いだ。奴のシャボンはあらゆる魔術魔法などを消してしまうらしい。それだけでなく、私に匹敵する賢者でもあるようだ。出会ったなら気をつけろ」


 「【シーザ】か、おぼえた。さて、計画第一段階の【勇者捕獲作戦】。予備作戦のおれの方は成功したぞ。ちと激戦だったがな」


 ネウディシは背後に眠っている少女を指して言った。

 その顔はまだあどけなく、とてもネウディシの敵になりそうにない子供だが。


 「あれが勇者?」


 「いちおうS級戦闘スキル持ちだ。お目当ての【勇者の紋章】もちゃんとある。ま、勇者三人の中ではカス扱いだったらしいがな」


 「よし、ならば問題ないな。さっそく吸血鬼にするか」


 「いや待てカズスよ。おれが思うに、まだコイツをアンデッドにするのは早い」


 「なに?」


 珍しくネウディシが私の方針に口出しをしてきた。


 「おれは吸血鬼を元にした魔人。ある程度は太陽の耐性をつけたとはいえ、やはり苦手だから言えるのだがな。太陽という弱点ができることは大きなマイナスだ」


 「ふん? だが、アンデッドにしなければ完全な支配下に置くことはできんぞ。ただの洗脳ではいずれ効果が消えるかもしれん」


 「なぁに、しょせん勇者は鍵。いましばらくこのまま勇者として人間に紛れ込ませ、奪うのではなく最終試練にて”メリジャの聖石”を正当に手に入れさせることが最善だと思う」


 【メリジャの聖石】

 魔王討伐へ赴く真なる勇者へ与えられるその聖なる石。

 それこそが、勇者確保に続く第二段階の作戦。


 「フム。いい考えかもしれんが、その娘にできるのか? 最終試練を突破することが」


 いや愚問だったな。

 こう見えて、この娘はこのネウディシと激戦をするだけの技量があるはず。


 「いささか力不足だな。S級戦闘スキルを手にしているとはいえ、元はただの村娘。使いこなすことはできておらんかった」


 「い、いや貴様、この娘をとらえるとき激戦だったと言ってなかったか⁉」


 「この勇者娘の挑んでいた試練が嵐竜ストームドラゴン退治だったのだ。まぁ、とてもこの娘とそのパーティーにできることではなかったので、おれが代りに試練をクリアしてやった。”激戦”はそれだ」


 「真正のドラゴン退治だと? それはまごうことなきS級モンスター。とても試練に選ばれるような魔物ではないぞ。……なるほど、王族貴族どものイジメか」


 「ああ。平民が何かの間違いでS級戦闘スキルを手にしてしまった。表向き、勇者として認めねばならない。しかし試練を突破して魔王討伐に選ばれるのはマズイ。そこでドラゴン退治、というわけだ」


 なるほど、少し面白い。

 そこまで退けたい娘が真なる勇者に選ばれたらどうなるか。

 われらを追放した王族貴族どもに、目的達成前に意趣返しが出来るか。


 「よかろう。では、その娘に試練を突破するだけの力を与えよう。アンデッドではない方法でな」


 「ほほう、【賢者カズス】のお手並みを久々に見れるか。して、どのように?」


 「”竜人化”だ。ドラゴンを退治したことにより、娘は新たな力を手にしたことにする。ネウディシ、倒した嵐竜ストームドラゴンの心臓と逆鱗をもってこい」


 「おうよ。他の候補を圧倒するような力をたのむぞ」


 ネウディシが立ち去ろうとする際、一応聞いておくべきことを思い出した。


 「待て、この娘の名は何という? 洗脳するなら聞いておかねばならん」


 「何といったかな……そうだ、【ワーグ】だ。【ワーグ・リヒテラーデ】という。たしか、どこぞの没落した貴族の養女になったそうだ」


 「フフン。その貴族も、この娘を使い復権を目指している、といったところか。だが、この娘はわれわれが上手く使ってやる。最強にしてやるぞ【ワーグ】よ」


 少しばかり楽しくなってきた私は、娘に宣言した。


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