32話 さらば狂敵(とも)よ……
章を入れてみました。
今回までが第一章で、次回から二章にはいります。
翌日早朝。
俺達は死んだ者たちを埋葬するため、その墓を作る作業をはじめた。
「人間最期は一握りの灰か。悲しいねぇ」
遺体はゾンビ化やスケルトン化を防ぐため、焼いて骨まで砕いて全て灰にするのが冒険者の埋葬の作法だ。
それは俺とエルフィリアが役割を担った。
俺達は遺体をモンスター化しないために慎重に焼いた。
「まさか僕が餓狼の連中の墓を作って弔うことになるとは、思いもしませんでした。しかし、こんなところに埋めて、あとで関係者に文句言われないですかね?」
墓穴を掘る役目は土魔法使いのダイサックの役目。
魔法で地面に大きな穴を「ポコン」と開けながらダイサックは言った。
【緑の大樹】のメンバーの分は灰を持って帰って墓地に埋葬するが、餓狼の連中はここで簡易にすませるのだ。
「いいんじゃない? 死んだ奴にはまるで興味がないのが裏社会の連中。アタシ達が始末つけるのだって、これまでの因縁とか考えるならかなり優しい方だよ」
ウサウサはその穴に、餓狼の連中の灰を適当に入れていく。
そして再び穴を埋め、アークライトとジョイスロウ殿下が廃材で作った墓標をたてて完成だ。
「なーんか連中らしい墓になったね。テキトーで不格好で。いつ死んでもおかしくない奴らの墓って感じだよ」
「そうですね。さて、これに祈ったら帰りましょうか」
すると、ジョイスロウ殿下が声をかけた。
「ああ、待ってくれダイサック君。こっちの隅にもう一つだけ穴を掘ってくれないか?」
「え? いいですけど何故です?」
「もう一つ墓を作りたいんだ。エルフィリアとシェインの墓さ」
はぁぁぁぁあ!!!?
「二人が散ったあとの灰を集めておいたんだ。そのまま土にさらすのも何だしね」
いや、それはシェインのだけだから。
そういえば、ホムンクルスのエルフィリアのその後は、どうなったんだろう?
エルフィリアにそれを聞くと、一つの大きな深紅の宝玉を見せてきた。
「宝石? やけにデカいな」
「これを体内から抜いたら塵になりました。強力で純度の高い魔石に複雑な術式が組まれています。おそらく、これは命そのものを模倣したものでしょう」
「それを……あのリッチが作ったのか? よく知らないけど、それって高位魔術のたぐいじゃないのか?」
「高位錬金術ですね。どうやらアレはスキルでもらったものではない、深い技術と知識を会得しているようです。おそらくは”賢者”の領分」
エルフィリアはそれを再び懐にしまう。
「まぁ、これはそのうち専門家に調べてもらいましょう。しかし、当面の問題は、自分の墓とか目の前で作られることです。それもシェインといっしょとか!」
うわっ、心底嫌そう。
自分を死んだことにした自業自得のような気もするが、たしかにちょっと可哀そうだ。
それにしても、ジョイスロウ殿下も何をトチ狂ってシェインの墓なんて作ろうと言ってんだか。
ひどい目にあわせられてばっかりで、そんなことをする理由はまるでないのに。
「シェインは勇者に選ばれながら、アンデッドの手先となって人間に害をあたえたんだ。実家でも墓を作ってくれる者はいないだろう。だから僕が作るのさ」
「し、しかし奴を、愛した女と同じ墓に入れるとか、どうしてそこまで?」
「同じ女を愛したからさ。シェインがエルフィリアを求めた気持ち。それだけは良くわかる」
なんという聖人!
殿下をだましている罪悪感で、俺まで灰になりそうだ!!
当のエルフィリアも複雑そうな顔だ。
「やれやれ、妙なことになっちまったなエルフィリア」
「ええ。ですが考えてみれば、共に葬るのはエルフィリアの人形です。奴には似合いのつがいでしょう。復活されても何だし、祝福してさしあげましょう」
聖人ジョイスロウ殿下に感化されて俺も墓を作るのを手伝い、エルフィリアは花を集めてきた。
彼女はそれできれいな花輪をつくり、墓に捧げた。
安らかに眠れ、狂敵よ。
愛する女が捧げた花とともに。
「ジョイ。それにシーザ。ちょっと来てくれ」
やり残したことは何もなくなり、帰還しようとする直前アークライトに呼ばれた。
「アークライトさん、どうしました?」
アークライトはかしこまった様子でジョイスロウ殿下に向き直った。
「勇者シェインとジョイ……あなたとの会話で気がつきました」
えっ?
「勇者のひとりにしてホルムト王家第4王子…【ジョイスロウ殿下】ですね?」
はあああああ⁉ バレてるううう!!!!
第一章完。
次回から二章。
新たな勇者との選抜レースや、リッチの陰謀とか書く予定です。




