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30話 賢者シーザ

 今回の展開考えるのにメチャクチャ時間がかかって、書き直しも何度もやったせいで投稿が遅れてしまいました。

 シェインは壇上へと駆けあがり、エルフィリアを抱きしめる。

 ダイサックもウサウサも、そしてリッチさえも、それを唖然として見ている。

 リッチのそんな顔を拝めるとは、多分レアなんだろうな。


 「あ、あ、あり得ない!人形がかってに動くなど……! いったい何が起こっている!?」


 リッチも混乱とかアワアワしたりとか、するんだな。

 ハイレベルモンスターに遭遇したのは初めてだけど、こういうモノだったとは。

 

 「ハッ! わ、私が『あり得ない』だと!? 無知蒙昧な愚民のように! 自分の理解できるものしか知ろうとしない愚かな大衆のように! 目の前で起こったことが理解できず、ただおののいているだけだとぉぉ!!? 考えろ! 起こった事象には必ず理由があるはずだ!」


 …………何なんだろうね、このリッチ。

 なんか賢者様みたいなことまで言い出した。


 「ガラリ」と瓦礫の音がして、そこに目をやると。

 『ああ、彼女に心奪われた者はもうひとりいたな』と思い出した。


 「エ、エルフィリアー!!」


 ジョイスロウ殿下だ。

 彼は傷ついた体をおして壇上へ上ろうとしている。

 いや、それはマズイ!

 あわてて彼に駆け寄り、つかまえる。


 「ちょっと! 行くなジョイ。行っちゃダメだって!」


 「はなせシーザ! 僕は……僕は彼女に逢うために、ここに来たんだ!」


 「違うんだよ! アレは作戦なんだよ。あのシェインを倒すための策略なんだって!」


 

  ―――「なんだと⁉」


 意外な方向から声がした。

 それは先ほどから難しい顔をして何やら考え続けていたリッチ。

 それが俺の言葉に反応して、俺をガン見している。


 「そうか、貴様か!!!」


 え? 俺? 何が?


 「たしかに貴様はこの現象に驚いていない。まるですべてを知っているかのように、透徹した目をしている。おのれ………雑魚のフリをした、とんだ賢者であったか!」


 賢者? 俺が? なに言ってんだこのリッチ。

 いや、奴はメッシーナさんはじめ、村仲間のみんなをゾンビにした仇!

 その恨みは、俺を殺そうとしたシェインのものよりはるかに大きい。

 だから奴が悔しがるなら、こう言ってやる!


 「そうだ! テメーの人形を操って吸血鬼野郎をハメたのは、このシーザだぜーッ」


 「シェイン! それは罠だ! いますぐ、その人形から離れろ! ……うッ⁉」


 リッチのその叫びは遅すぎた。

 壇上で抱き合うふたり。

 その姿がまばゆく輝きはじめたのだ。

 その光は光魔法の”浄化”と同じ性質のもの!


 「やったか……」


 シェインの体は溶けるようにその光で崩れていく。


 「エルフィリアー! 愛している。お前に夢中だーー!!!」


 シェインの最期の叫びが響く。

 140個もの幻霊石を使って勇者になりながら、吸血鬼となり人間の敵になった最低野郎だけども。

 なぜかエルフィリアへの愛にだけは敬意をはらいたくなった。


 「うおッ!」


 最後に、ひときわ大きな光が爆発するように輝き。

 それが終わった後の壇上には、二人はどちらもいなくなっていた。

 ただ人間大の灰の塊が積もっているだけだった。


 「エル……フィリア……君もいなくなってしまったのか? あれは幻だったのか?」


 ああ、なるほど。

 ジョイスロウ殿下を諦めさせるために、彼女も光に紛れて逃げたのか。

 そこまで計算して演出するとは、さすが”伝説になれた冒険者”。


 「……シェイン、君がうらやましいよ。エルフィリアと仲良くな」


 そう言ったジョイスロウ殿下は、ちょっとカッコよくなったような気がする。

 男は女を通して成長するものなんだなぁ。


 「今さらだけど、勇者のつとめを果たすとしよう。シェインの勇者としての役目は、僕が引き継ぐ!」


 残る敵はリッチのみ。

 ジョイスロウ殿下は剣を奴に向ける。

 すると【緑の大樹】の生き残りメンバーのアークライト、ウサウサ、ダイサックも集いリッチを囲む。


 「聞いていたよシーザ。森の霧を消したことといい、君は大した術師のようだね。”賢者”というのも過分ではないかもしれない」


 「そうだね。正直、ジョイやリンちゃんのパーティーリーダーってのは疑問だったけど、今なら納得だよ」


 「すごいですねシーザさん! あんなすごい術とか、戦いながらいつの間に準備してたんです?」


 ヤバイ。

 リッチを悔しがらせるために言ったデタラメが、なんか大きなことになっている?


 「それはともかく、だ。まずは元凶を葬ろう」


 「そうだね。ま、こうなっては簡単に倒せそうだけど」


 ウサウサの言う通り、リッチは太陽を覆い隠す瘴気を放つだけで精一杯の状態。

 この瘴気が尽きる頃に攻撃すれば終わりだ。


 「フッ……たしかにな。こうなっては観念するしかあるまい。まさか、わが百数十年の研鑚けんさんをしのぎ、ここまで追い詰める者が人間から生まれようとはな。シーザよ」


 リッチにまで俺、なんかスゴイ奴に勘違いされている?


 「観念したなら、ひとつ聞かせてもらおう。貴様、名を【カズス】と呼ばれていたな?」


 アークライトが何やらリッチに質問しはじめた。


 「ぼくはその名に聞き覚えがある。百年前、今と同様に魔王が生まれ、勇者パーティーが組まれて、それを倒した。そのメンバーに【賢者カズス】という者がいたという。お前はもしや……」


 「時間だ。それに答えるのは、別の機会になりそうだ」


 「なに?」


 ギャア ギャア……

 破壊された天井の黒い瘴気の向こう。

 そこから無数の鳥の羽ばたきと鳴き声がする。

 それが瘴気を突き抜けて、一羽、二羽、そして何羽と、この部屋に入ってきた。

 嘴に牙のある黒い鳥の魔物モンスター【ファングクロウ】だ。


 「アークライト! 奴は何かをするつもりだ。強引にでも攻めなきゃ!」


 「わかっている! ぼくが奴の瘴気を消す。みんなは続いてくれ!」


 アークライトは腕から強めの浄化の光を放ち、黒い瘴気を消してゆく。

 そんな彼に、リッチは「フッ」と笑いながら近づく。

 そして……


 バシュッ


 「なに⁉」

 「ええっ⁉」

 「バカな!!!」


 隻腕で自分自身の首を切り落とした!

 首は「グルンッ」とフードに包まれると、一羽の大きなファングクロウがつかみ、飛び立とうとする。


 「まずい! 奴は逃げる気だ。ファングクロウごと奴を討て……なにッ⁉」


 残ったリッチの体部分。

 それが生きているかのようにアークライトにしがみついてきた!


 「うっ、うわああああ!!!」


 ボンッ

 体は爆発し、濃密な瘴気をまき散らした。

 それは少し吸っただけでも肺まで腐り落ちそうなシロモノだ。

 これを間近で吸ったアークライトはどうなる⁉


 瘴気から口と鼻を守るため名前さえ呼べず。

 それでも、ジョイとウサウサが濃厚瘴気からアークライトを引っ張りだす中。


 リッチの首は、ファングクロウの羽ばたきと共に空へと消えていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] いやー今回の展開は面白かった。 >奴が悔しがるなら、こう言ってやる! ジョジョか? >リッチを悔しがらせるために言ったデタラメが、なんか大きなことになっている これ後に響くね。間違いない…
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