03話 勇者パーティーは聖女しゅきしゅき団
「下民の諸君! 我が名は【シェイン・サザンクロス】! 王国侯爵サザンクロス家の第一公子だ。栄誉あるこの勇者パーティーに参加できることを光栄に思い、死力を尽くして我々に奉仕しろ」
俺達サポートメンバーへのクエスト激励の挨拶に、こんなにも選民思想バリバリなクソ挨拶をしたのが勇者様。
これだけで、このクエストが禄なモンじゃないって予感できたよ。
しかし第一公子ってことは、跡取りの次期侯爵さま?
こんな危険なことは、ほとんど家の財産をもらえない三男坊四男坊とかが、名誉を出世のタネにするためにやるんじゃないの?
「オレは勇者となるためのS級スキルを得るために、ガチャ神様の儀に40連を行った。家財の半分をつぎ込んだのだ。これだけで、オレと我が家がこの魔王討伐にどれだけ本気かわかるだろう」
40連ガチャ!!?
狂ってやがる!!!
どれだけヤバいんだよ、この勇者様!!!!
たしかにガチャ神殿で与えられるスキルは、その場限りにおいて拒否することも可能だ。
そしてもっと良いスキルを得るため、次の儀にのぞむこともできる。
しかし、幻霊石も儀式を受けるのも非情に高額であるため、どんなハズレでも拒否することなんて平民の俺達にはまずない。
貴族や大商人なら多少はあるかもしれないが、さすがに40連は異常だ。
「国王陛下に魔王討伐の使命をうけた勇者パーティーは他にもある。だがしかし! 魔王を倒すのは、このシェイン勇者パーティーだ。そして魔王を倒してオレが真の勇者となった時! 傍らで共に戦ってくれた聖女エルフィリアを妻に迎えよう。フハハハハハハハハハハハハ。ウワァーッハハハハハハ」
さんざん自分の私利私欲を暴露して、デカイ笑い声で締める挨拶って…………
しかも、この坊ちゃん。
女のためにそこまでして勇者になったのかよ!
ますます不安になってきた。
こんなにも不安を煽るクエスト激励の挨拶は初めてだ。
他のメンバーの挨拶も似たり寄ったりの選民思想まる出しのクソ挨拶。
しかも冒険を舐めているような、胸クソ悪くなるようなものばかり。
やっぱりこのクエスト。
今からでもやめた方がいいんじゃ………
が、最後に立った聖女エルフィリア様を見た時。
そんな不安もムカつきも、すっかり忘れた。
あまりに美しく、あまりに可憐な貴族令嬢に目も心も奪われたのだ。
「みなさま、国王陛下から聖女の称号を与えられたノルデン伯爵公女【エルフィリア・ノルデン】です。どうか皆様の豊かな知識と経験でわたし達勇者パーティーを助けていただけることを、切にお願いいたします」
そう言って淑女の会釈をする姿は、あまりに美しい。
心が洗われる。
俺ら平民にすら敬意をこめて頭を下げるその姿も、さっきまでの連中がクソだっただけに、余計に尊い!
パチパチパチパチパチパチパチ!!!!
いつしか俺らは、彼女に心をこめて万雷の拍手を送っていた。
見ると、勇者パーティーの奴らも。
シェインとかいう勇者野郎は涙まで流してやがる。
そして、それを見てわかった。
勇者パーティーの奴らは全員【聖女しゅきしゅき団】だ!!
そしてそれ故。
こんなにも尊い彼女が、俺の”死神”になるとは、この時は思いもしなかった。
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