28話 逆転への5分
「うわぁ! うわぁーー!! うぎゃああああ!!!」
次に犠牲になったのは剣士プラント。
ジョイスロウ殿下との戦いの合間をねらってシェインの背後から斬りかかったが、あっさりつかまった。
ジュルルーッ ジュオーッ
そして血を絞られ、干からびてミイラに。
「フハハハこの血もいい! やはりAランクパーティーの冒険者は活きがよくて最高のエモノだ!」
グチャリ
剣士プラントは上機嫌なシェインに頭を潰され捨てられた。
これで【緑の大樹】のほとんどのメンバーが死亡および戦闘不能。
まだ満足に動けるのはウサウサだけ。
もう、こちらには打つ手がない!!
その時だ。
壇上のリッチが音もなくふわりと降りてきた。
「いい加減にしろシェイン! どいつもこいつも雑に殺してどうする? 手駒はもうないのだぞ。もう殺すのは禁止だ。全員壊さず屍生人にしろ!」
「おおっと、そうでしたなカズス様。先ほどの連中は血を飲む気が失せるほどの下種。ですが、こいつらはそれなりに上等だったので、ついはしゃいでしまいましたよ。では、ここからは丁寧にいきましょう」
糞っ。ヤツラにとって、これは戦闘ですらないのかよ!
ただの遊び、もしくは手駒にするための狩りかよっ!
「プ、プラントさん! みんな……ちくしょうっ」
回復したダイサックだが、そこに見たものは仲間が無残に殺された光景。
そしてまた、剣士が残酷な死を迎えるのを見てうめいた。
しかし悔しくても、俺達にはすみっこで実力者たちがやられていくのを見ているしかない。
だがエルフィリアは、バケツの水に洗剤を溶かしてチャポチャポかき回している。
「チャンスですね。ここから逆転できます」
「は? どうして?」
「リンさん?」
「連中は殺すことをやめた。つまり動きに制限がかかっているということです。そしてリッチは、あの人形から離れた」
「それが?」
「シーザ、ダイサックさん。5分です。5分だけ時間を稼いでください。それでわたし達は勝つことが出来ます」
「はああ? あんな奴らに5分の時間かせぎだけで? どうやって⁉」
「説明している暇はありません。とにかくやってください」
「しかし……俺達だけで、あんな奴を相手になんて……」
「大丈夫。シーザのスキルは、はるか格上であろうと戦うことができるものです。教えた通りの戦術、作戦、話術を駆使して時間を稼ぎなさい。ではふたりとも。頼みましたよ」
彼女はそう言ってバケツを俺に託すと、その場を離れた。
「凄いですね、リンさん。こんなに実力者が次々に潰されていく局面でさえ、作戦を考えることも準備することも出来るんですから」
そうだな。
【伝説になれた冒険者】と言われた兄貴の真骨頂をみた気がする。
「とにかく、やるか! 生き残ったみんなを助けるには、勝つしかないしな」
「はい!」
シェインはどうしたかと見ると、ウサウサを捕まえていた。
されどさっきのように問答無用で血を吸って殺すような真似はせず、なんと口説いている。
「さて、お嬢さん。これから君は屍生人になるわけだが、ひとつ選択してくれるかね? もし君がわれらアンデッドを畏怖し進んで魂をささげるなら、上等のアンデッドにしてやれる。朽ちることのない肉体を手にし、悩みも苦しみもない永遠を楽しめるのだ。どうかね?」
この問いにウサウサは――
パァンッ
「あ、あんたは永遠に呪われたバケモノ! 地獄へ落ちろ!」
思いっきりのパンチで答えた。
シェインはすこしだけ落胆した様子だった。
「フーッ残念だ。では、せいぜい永遠にその選択を後悔するがいい」
「い、いやあああっ」
ウサウサの首にシェインの牙がせまる。
――――「ロックバレット!」
シェインの横面にダイサックの飛ばした魔法の礫が飛んだ。
奴はうるさそうに、それを手で払いのける。
「ウサウサさんを放せ、このバケモノ!」
「そこでちぢこまってろ雑魚ども。貴様らはしょせん最下級の屍生人になる運命。せいぜいこき使ってやるから、おとなしくしてろ」
最強吸血鬼シェインに睨まれただけでビビりそうになる。
されど負けない。
ここからが俺の出番。
雑魚なりの戦い方。ハッタリと策で勝負だ!
「この外はえらく太陽が出て、大変なことになっているよなぁ? アンタらを守っている霧が消えて」
「なに?」
「アンタらご自慢の霧を消したのは。この俺だーーッ!」
この宣言に食いついたのは、アークライトをアンデッドにしようとしていたリッチ。
俺を雑魚とは違った目で見る。
「……ほう、面白いな。すこしだけ話をきいてやる。どのようにしてわが【ディープ・ホワイテッド・ミスト】を消した? この館に侵入者を入れたのは初めてのことだ」
「いいのか? そんな余裕ぶっこいて。今のうちに俺を殺した方が、アンタらのためにはいいんじゃないの? 」
この挑発につれたのが、最強吸血鬼になってイキッているシェイン。
ウサウサを投げるように放し、ゆっくり俺に近づいてくる。
「フン、そのもの言い。気に入らんな。まるでオレがお前を恐れているようではないか。どのように後悔させてくれるのだ? やってみろ」
「こうやってさ!」
バシャンッ
俺は膝を折りバケツに手を入れた。
するとバケツから無数のシャボンがあふれだし、シェインに向かう。
「むうっ、なんだこれは⁉ 力が抜ける!」
シェインは完全にシャボンに囲まれた。
もはや逃がさない!
「シェイン! きさまのアンデッドの呪い、きれいに洗濯して、ピカピカの死体に戻してやるぜ。【シャボン・ウォッシャー】!!!」
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