24話 シャボンの奇跡
主人公の名前が女みたいなのが、どうしても気になるので変えます。
リーザ・ツェペリス→シーザ・ツェッペリ
というわけで、シーザをよろしくお願いします。
持ってきたバケツに水を入れ、そこに洗剤を入れてかき回す。
王都で開発された『洗浄率10%アップ!』とかの新製品だから期待しているぞ。
「シーザ、まだはじめないのかい?」
「ああ。リンが『どうせならシーザの力を見せつけて、高レベルパーティーに一目置かれましょう』とか言って呼びに出たからな。まったく。俺なんかの評価を上げて、どうするつもりなんだか」
「兄の評価が上がるのがうれしいんだろう。仲の良い兄弟だね」
ジョイスロウ殿下。俺とリンが『兄弟』って設定、まったく疑っていないのか?
いくら何でも、見かけや育ちが違いすぎると思うんだが。
やがてエルフィリアが【緑の大樹】と【餓狼の顎】の二つのパーティーを連れてきた。
「君の魔法を見に来た。大がかりな魔方陣でも描いているかと思ったが」
「このクソ霧、どうにか出来なかったらボコる! イラつかされた分、八つ当たりさせろ!」
ゲッ【餓狼の顎】⁉
なんでアイツらまでいるんだよ!!
しかも、なぜか理不尽なことになっているし!!
「それじゃ始めます。洗剤も良い感じに溶けてきたし」
「洗剤?」
「お兄ちゃん、がんばってね」
「チュッ」と額にキス。
エルフィリアのS級スキル【女神の祝福】。
キスをした相手にスキルブーストをかけるのだ。
「ああああっ! いいないいな! リンちゃんの家、家族だったらキスする家庭なのか! アタシもお姉ちゃんになりたい! いや、いっそ嫁に貰いたい!!」
もの凄い雑音が響いているが、無視だ無視。
ブーストのかかったスキルパワーを手に集中!
「刻むぜ、洗濯++のスキル! 霧に含まれる”魔力”を”汚れ”と認識する!」
パシャァッ
バケツの水面に手を入れると、無数のシャボンが生まれて溢れた。
それらは空に広がり舞っていく。
「こ、これは⁉」
「見ろ! 霧が消えていく!!」
空のシャボンがはじけるたびに霧は薄くなり視界は開けてゆく。
高位の魔法士であるアークライトさんも、茫然と光景を見ている。
「バカな……これだけの魔の霧を消すには、膨大な浄化の力が必要なはずだ。それにこの一帯は、浄化の力は弱められてしまうはずなのに」
「シーザのスキルは浄化ではありません。”汚れ”と認識したものを剥離させる力です。それは魔力を消失させるより、はるかに少ない魔力で行使できるのです」
「そうか。対象から引きはがされた魔力は、消滅するしかない。それ故の現象か!」
やがて薄れた霧の合間から太陽も差し込むようになり、それも霧を消してゆく。
徐々に昼間らしい空と景色になってよく。
「あ、あれは⁉ 見ろ、あれを!!」
視界の大きく開けた森のとある向こうの場所。
そこに、それまでは見えなかった人口の建造物が現れた。
それは二階建ての”館”であったが、奇妙なことに窓らしきものが無いのだ。
「どうやら霧は、アレを隠すためものものだったらしいな。アンデッドの親玉が潜むのに、いかにもな館だ」
「あそこにリッチはいる! ハハハ、逃がさねえ!」
リッチの拠点らしきものが見えた瞬間、真っ先に動いたのは餓狼だった。
「いくぜテメェら! 糞のリッチに、さんざ歩かされたケジメつけやがれ!」
「了解だボス! 鬱憤たまりまくりで、野郎殺したくてたまらねぇ!」
「楽しみましょうや! バカ高い金出して揃えた祝福アイテム、まとめてブチ込んでやりますよ!」
「ヒャハハハ、リッチ殺った金が入ったら豪遊だぁ!!」
「いい返事だ! 遅れんじゃねぇぞ。【加速する風】!」
ムスターファの、チーム全体の走力を大きく上げる風魔法。
その力で【餓狼の顎】は猛然と館へ向かい走り出す。
あいつら、これだけの術を使う相手に、全力で突っ込んで行く気か⁉
「待て、餓狼! 勢いだけで飛び込むのは危険だ!」
「ほらよ。こいつは礼だ!」
「うっ⁉」
ムスターファは去り際、ナイフを投擲。
それは高速でこちらに向かってくる!
パシッ
それを神業のごとき体術で叩き落したのはウサウサだった。
「危ない危ない。あんな奴らの心配なんて、するだけ無駄だよ。シーザさん」
「あ、ありがとうウサウサ。おかげで助かった」
飛んでくるナイフは、まったく見えなかった。
ウサウサがいなかったら大ケガをしていたところだ。
「くそっあいつめ。出発前の意趣返しのつもりか! 僕からも礼を言うよウサウサさん。君のおかげでシーザが無事だった」
「どういたしまして。ではお礼に、リンたんと結婚を前提にしたお付き合いを! ぜったい幸せにしちゃうから。いい子も産んじゃう!」
「女同士でどうするつもりだ! 妹を変態な倒錯世界に入れるな! 恩人とはいえ、それだけは許さん!!」
さて。当のエルフィリアはというと、そのナイフを拾い上げシゲシゲ見ていた。
「このナイフ。やけに走ると思ったら、風魔法の加護がかかっていますね。これを落とすとはウサウサさん、凄いです」
「そうでしょ! 惚れた? 結婚しちゃう?」
「そうですね。兄が許してくれるなら、考えても良いかもしれませんね」
ニッコリ眩しい笑顔で答えるエルフィリア。
なにクレイジーハッピーレズに、狂った返答してんのよ!
「デュフフフフフフ。お・兄・さ・まぁぁぁぁ」
ヒィィィィ恐い!
ああもう、リッチと戦う前に強敵ふやしてどうすんだぁぁぁぁぁ!!!!




