22話 Aランクパーティー【緑の大樹】
「大変だったな。しかしムスターファに抗することができるとは、そちらには大したメンバーがいるな」
なにしろ勇者だからね。
リーダーはまったく大したことなくてゴメンナサイ。
Aランクパーティー【緑の大樹】のAランク冒険者【アークライト】。
冒険者世界にとって、【Aランク】とはある意味トップだ。
この上に【Sランク】というものもあるが、あれは討伐不可能なSランク魔物をどうにか討伐しようと、王国が任命したり編成したりしたものを指す。
【勇者パーティー】などがそれだ。
そしてAランク冒険者は、数多いる冒険者でも20人程度しかいないという。
「お見苦しいところをお見せいたしました。此度、連携をさせていただく”駆ける疾風”です俺はリーダーのシーザ・ツェッペリ。メンバーは剣士のジョイと、俺の妹で回復術師のリンです」
「ふーん”妹”ね。で、本当は?」
―!?
アークライトの隣にいた少女が、そんなことを言いやがった!
装備は軽装だが、首から上をマフラーですっぽり覆っている、奇妙な恰好をした女の子だ。
「ウサウサ、リーダー同士の話に口を出すな。それに向こうの事情に首をつっこむのも感心しない」
「だってこの娘、明らかに良いトコのお嬢様じゃない。”魔法”なんて高スキル持ちだしさ。なんかヤバイかもしんないし、クエスト中はアタシが見張っていよう。そうだ、それが良いよ!」
「それが目的か。君の仕事はパーティーの斥候だ。そんなことをさせている暇はない。いいから下がっていろ」
しぶしぶ女の子は後ろに去っていく。
アークライトは「ヤレヤレ」といった感じで彼女を見ている。
「彼女の名は【ウサウサ】。腕の良いレンジャーだが、悪癖があってね」
「妹を見る目で予想はつきますけど、言ってください」
「可愛い女の子が大好きなんだ。君の妹?は人並外れて可愛いし、気を付けてくれ」
”妹”の部分で、妙な間があったな。
やっぱりエルフィリアが”俺の妹”という設定には無理があったか。
正直に俺の兄だと言った方が…………余計ダメじゃん!
「では他のメンバーも紹介しよう。剣士のプラント、土魔法士のダイサック、弓士のアナベルに……」
さすがこの街の英雄。
俺ごときにも礼儀をくずさず、丁寧に対応してくれる。
「さて、次は連携について話そう。そちらは街の襲撃屍生人に活躍したものを集めて作った急造パーティーだと聞く。であるなら、こちらのパーティー後ろについてこちらの要請に応える、といった形でよろしいかな?」
「ええ。中心はそちらになるので、それで構いません。Aランクパーティーの実力、勉強させてもらいます」
と、そこでヤバイ連中のことを思い出した。
「あ、そういえば、この話をするのに【餓狼の顎】を入れないで良いんですか? さすがに俺達だけで決めちゃまずいんじゃ……」
「彼らは、すでに先に行ってしまったよ」
「はぁ?」
言われて見てみれば、【餓狼の顎】のメンバーはもうどこにもいない。
「一足先に出て、斥候と魔物の排除を担ってくれるそうだ。ありがたいね」
「しかし早すぎじゃ……まさか⁉」
「ああ。手柄を独り占めにするつもりだろう。このクエストで、問題のリッチを倒した者には多額の報酬が出るうえ名声は計り知れない。なにしろ勇者パーティーを壊滅し、街を崩壊の危機に陥れている魔物だからね」
「いいんですか? それを知っていながら先に行かしちゃって」
「いいんだ。彼らと連携なんて出来るもんじゃないし、速さだけを重視した雑な作戦で討てるなら、ここまで大きな問題になっていない。せいぜい敵の出方を見るおとりにでもなってもらうさ」
さすがAランク冒険者。
冷静で的確で合理的な判断だ。
「さてそれじゃ、そろそろこちらも出発しよう。あまり引き離されては”おとり”の意味がなくなってしまうからね。ああ。いちおうそちらも注意しておくが、基本的にそちらの身は自分のパーティーで守ってくれよ」
「了解です」
アークライトに続くメンバーも、さすがの貫禄だ。
それぞれが身に着けている武器や鎧がピッタリ合って、歴戦を思わせる。
彼ら自身のランクは知らないが、B以下ということはあるまい。
彼ら5人に、ランクDの俺がついて行けるかなぁ。
…………5人?
ひとり足りない?
「ウサウサ、何をやっている。出発だ。斥候の君は先行してほしいんだが」
「えー、そんなの後々。もう少しでリンちゃん、抱きしめられるかもしれないし」
なんと、彼女はエルフィリアに熱烈アプローチをかけていた。
指とかワキワキさせて、ヤバイ変質者みたいだ。
「いいわけあるか! クビにされたくなければ、さっさと行け!!」
「ハーイ、いってきまぁす」
Aランクパーティーにも、はずれた奴はいるもんだな。
ウサウサがフードをとると、そこに信じられないものを見た。
なんと彼女の頭にはウサギの耳がニョッキリ生えていたのだ。
そして、ものすごい身のこなしで山へと飛んでいった。
「アークライトさん。彼女って、遠い異国にいるという”獣人”ってやつですか?」
「いや、獣人はもっと獣に近いよ。彼女は【長耳族】。呪いで頭にウサギの耳が生えた一族の者だ。あの耳は収音・気配察知等に優れていて、斥候としてうってつけなんだ」
さっきまで話していたエルフィリアは、感心したように彼女の後姿を見た。
「へぇ、世の中は広いですね。そんな方がいるとは初耳です。また話をするときは、もっとよく聞いてみたいですね」
「そのことは”個性”ってことで良いとしても、性癖の方は大問題だ。あんまり近づかない方が良いんじゃないか?」
「ふふっ。わたしの前世もあんな感じでしたよ」
「まさか……」
と、俺は思い出した。
そういえば、兄貴は聖女様のノゾキの罪で死んだような人だった。
「どうにも他人とは思えなくて仲良くなってしまいました。古い友達のようでね。大丈夫、貞操はしっかり守りますよ」
俺達もアカラチア山に向かって出発した。
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