15話 シェインと不死者【シェイン視点】
ふいに開けた場所に出た。
そしてその正面には、椅子に座る黒いローブを身に纏った一人の青年。
奴はオレら勇者パーティーがクルと、読んでいた本を「パタリ」と閉じて脇に置いた。
「来たか。あのまま力尽きるまで森をさ迷わせても良かったのだがね。勇者よ、君に興味がわいた。話でもしようではないか」
「貴様……人のように見えるが、人ではないな。まさか、この森に住む大幽鬼とは貴様か?」
「そうだ。このローブには腐敗防止の術式をまんべんなく施してあってな。ゆえにアンデッド化しても知性を失わず、本も読めれば君と会話もできる」
「フウン……『変わり種』というやつか」
「さて、言わせてもらえば、この森に私がいるのは、君達勇者パーティーを引き入れるための罠だ。被害をコントロールし、『勇者の試練』として適当な魔物と思わせてな」
「……ほほう、面白そうな話だ」
「そうだろう。じつに面白い話だ。私には優秀な手駒が必要だ。そのためにこの森で……」
ザシュウッ
得意そうに話している奴に、斬撃を飛ばして黙らせた。
「だが、こちらには貴様のようなアンデッドに用などない! ゆくぞ、お前ら!」
「「「「応ッ!!」」」
オレの声と共にパーティーの皆はそれぞれの得物を抜き、青年のような大幽鬼へと襲いかかる。
「フッフッフ。私がこうして君に会っているのはな。すでに、もう君には勝っているからなのだよ」
グルンッ
「なにっ!? お前ら!?」
青年リッチに襲いかかろうとしていたはずの仲間が、突然向きを変え、オレ目がけて襲ってきやがった!!?
「いけないなぁ。アンデッドにつけられた傷はちゃんと治癒しておかないと。かすり傷であれ、このように体内に呪いが侵食し、私に意思を握られることになる」
ガキンッ ガキンッ
どうにか致命傷は避けたものの、三人からの不意打ちはオレにいくつもの手傷を負わせた。
「ぐうっ、おのれェ!」
下僕にしたオレの元仲間を周囲に従え、リッチの野郎はオレを楽しそうに見る。
その目が気に喰わねん!
「さて。その傷を治癒する手立てのない君は、もう間もなく私の下僕となるが。その前に話をしよう。私の名は【カズス】。聞いたこともあろう。百年程前の勇者パーティーで賢者をつとめた……」
――雑音をまき散らすな!
「【勇者・血粧嘴剣】!
ふるった剣の斬撃は、リッチとまわりの裏切り者共を切り裂く。
されど、リッチの野郎は余裕。その傷もすぐに消えていった。
そこでオレはさらなる追撃に斬り込む。
リッチはその場を離れたので、オレはまだ蠢いている元仲間を刻んで復活できないようにした。
「今度はこちらがやられたな。仲間すらも、こうも簡単に切り捨てるとは」
「フン、もはやオレに望みなどない! あるのは、死ぬまでにひとつでも多くの死を積み重ねることのみ! 貴様も死ね、リッチ!! 【勇者・獄殺剣】!!」
ザンッ
この剣も奴はかわしたものの、片腕を切り飛ばすことには成功した。
「ファハハハ、オレの意思を握るまで持ちそうも無いな、アンデッド。このまま切り刻んでやろう!」
「そうだな、君を下僕にするのは無理そうだ。では『トモダチ』でどうだ? 永遠の命と、好きなことを何でもできる素晴らしい力をあげよう」
「興味はない! そんなものが何になる!」
そんなオレの言葉にも、奴は落胆も絶望もせずに斬撃を躱しながらしゃべり続ける。
「私が君を気に入ったのは力だけではないよ。君の心には深い闇がある。人間でありながら、我ら不死者に近い闇がな。君が我らの仲間になれば、最強の不死者となる。そう……地上世界すべての種族の王にもなれる、な」
「オレはすべてを失った人間だ。望みなどもうない! エルフィリアのいないこの世界など、もはや何の意味もない! きさまはオレと死ね!!」
ますます剣の速度をあげていく。
奴との距離が近づく。
「【エルフィリア】か。君の心の闇の元は『女が死んだ』といったところか。では――」
奴を追い詰めた! あと一撃で終わらせられる!!
「君の恋人を生き返らせよう。それでどうだ?」
ピタリ。
オレは剣をとめた。
聞いてはいけないとわかっていても、奴の言葉に耳を傾けてしまう。
「私は死者の王。君の恋人を死者の領域より連れ戻すことなど、容易いとも」




