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14話 迷いの森のゾンビ【メッシーナ視点】

 『ざまぁ』のタグは外しました。

 『ざまぁ』されるような弱弱な敵なんて、書いてても楽しくないですから。

 やっぱり敵は悪くて強くて狡猾で美学があって、主人公を苦しめなきゃ。

 

 おれは【疾風の仕事屋】のリーダー・メッシーナ。

 あれは本当に最悪のクソみたいな仕事だったな。

 人間をやめた今でもそう思う。



 ある日、突然おれ達【疾風の仕事屋】の仲間リーザと聖女様が消えた。 

 不可解なのは、勇者パーティーの奴ら、愛しの聖女様が消えたってのに探しもしねぇこと。

 そしてこのクエストで重要な浄化の使い手がいないにも関わらず、クエストを強行しようとしたことだ。


 もちろん、おれは止めたさ。

 それよりそのの場に留まり、聖女様とシーザを探すことを提言した。


 だが勇者シェインの野郎。

『これは国王陛下よりの使命。それを遅滞させようとする輩は殺す!』だと。


 仕方なくクエストの準備だけは十分して送りだそうとしたんだがな。

 野営の準備なんていいから、おれ達全員ついて来いだと。

 もうメチャクチャだね。



 さて、リッチのいる森に入ったが。

 【疾風の仕事屋】全員で斥候をしているにも関わらず、なかなか目的のリッチの居場所がつかめない。

 襲いくる魔物だけは勇者パーティーが軽く倒してはくれるが。

 それでも、似たような風景の森をさ迷うのは精神も体力も削られる。


 三日目にかかった頃、さすがにもう限界だと感じた。


「シェイン様、さすがにもう無理です。撤退して、浄化できる者とこの森に詳しい地元冒険者を雇って、出直しましょう」


 「黙れ! このシェイン、敵地へ踏み入ったからには退()かぬ!、(ひる)まぬ! 敵は殲滅する!!」


 「ム、ムチャクチャだ! 食料だってもうありませんし。いくら強くたって、このまま突破口もなく森をさ迷うだけじゃ、死にますぜ!!」

 

 「このシェイン、命などとうにない! 聖女エルフィリアの死んだときからな」



 ――――!!!


 やはりエルフィリア様はすでに死んでいたのか。

 そして、勇者パーティーの奴ら、正気じゃねぇ!

 名をあげるために戦っているんじゃなく、死に場所を求めて戦ってやがる。

 冗談じゃねぇ、このままつき合っていたら、おれ達も確実に死ぬ!


 「ダンナ、高スキルもないおれ達じゃ、もうついていくのは無理です。【疾風の仕事屋】はここで撤退させてもらいやすぜ」


 「好きにしろ! どうせ、この件が終わったなら全員クビにする予定だったのだ。メシの不味くなったオマエらに価値などない!」


 ちッ。やっぱり、そういうつもりだったのかよ。

 さんざんこき使いやがって、その言い草!

 おれは後ろの仲間に向き言った。


 「【疾風の仕事屋】は撤退だ! オマエら、悪かったな。こんな仕事をとっちまって。シーザが消えた時点でキャンセルするべきだった。判断が遅くなってすまねぇ」


 「「「了解です!」」」


 ウチのメンバーは一つの否定もなく応え、俺達は道を引き返した。


 国王陛下のからんだ仕事を簡単に途中でキャンセルできるはずもない。

 この森に入り『この討伐はヤバイ』と感じなければ、とても決断できなかったろう。

 なんとなくだが、あの勇者パーティーの誰もが生きて帰れない予感がした。


 だが、それはおれ達も同様だった。

 本当にもう、決断は遅すぎたのだ。



 「クソッ、どこだ出口は! つけてきた目印をたどっていってるってのに、まるで抜け出せねぇ!」


 目標は帰還に変更になったというのに、さっき同様、いつまでたっても森から抜け出せない。

 冒険者の基本として、帰りの目印は所々につけてきたというのに。


 「メッシーナさん、みて下さい! この目印!」


 「んあ? どうしたってんだ」


 「これ、似てますが、俺らのつけたものじゃありません! 俺達、何者かに別の道に進まされてるんですよ!」


 「な、何だと? くそっ、罠にはまったてのか!? いったん止まれ! 休憩しながら対策を考える!」


 だが、そんな休みなど、この森は与えてはくれなかった。



 ――――ハハハハ。疲れたかい?


 ――――いつもは『何人かは帰せ』と言われているんだがなぁ。今回は全員喰っていいんだと。楽しもうぜ、マヌケな冒険者サン。


 

 ユラリ、森の奥から幾人もの人影が近づいてきた。

 人型ではあるが、濃厚な魔物の雰囲気を纏っている。


 「こ、こいつら汚物の腐ったような臭いがする!屍生人(ゾンビ)だ! ちくしょう、囲まれちまった!」


 その数、ざっと百体はいる。圧倒的な数だ!


 「聖水だ! 仕入れてきた聖水をブッかけろ!」


 近くに這い寄ってきた一体に「バシャアッ』と聖水を浴びせかけた。

 なのにそいつは浄化されず、表面をわずかに焼くにとどまった。

 屍生人(ゾンビ)は余裕で「グフフ」とあざ笑う。


 「なっ……聖水が効かねぇ? 不良品かクソッ!」


 「いやぁ、そうじゃない。ここら一帯、浄化の能力は弱まるようになっているんだよ。ウチのボスは、並の魔物とは頭の出来が格段に違うからねぇ」


 「ヒャハハハ。獲物を追い込んで囲む罠ってな、人間相手にも使えるんだなァ。表情が楽しめる分、上等なエモノだぜぇぇ」


 しかも屍生人(ゾンビ)ども、とんでもなく流ちょうに話している。

 これでは、まるで人間のようではないか!


 「な、なァおい。おまえら、しゃべれるのか? 屍生人(ゾンビ)のクセに……」


 「そうとも、それもボスの力ってやつだ。オレ達は生きていた頃のように考え、狩りを楽しむ。人間のようにな!」


 「そ、そんな! 人間の知能を持った魔物が現れ、罠まで仕掛けるだなんて! じ、人類はどうなっちまうんだ!?」


 「ヒャハハハ、その絶望も喜びに変わる! オレ達も、元はお前らのような冒険者だったんだからなぁ。さぁ、いっしょに楽しくやろうぜ! もうすぐ、下の街でパーティーをするお許しが出るからよォ」


 「うわぁぁぁぁ! うわあああああっ!!!」


 屍生人(ゾンビ)の大群は、いっせいにおれ達【疾風の仕事屋】に襲いかかった。

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