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10話 小さなパーティークラッシャー

 しかしこんな絵に描いたような貴族令嬢なのに、俺よりベテラン冒険者なんだよね。

 エルフィリア様は太陽の方角や、荒れ地のわずかな手がかりを見逃さず追っていき、翌日には人のいる場所へとたどり着いてしまったのだから。

 そこは次の試練のあとに補給で立ち寄る予定だった街。

 そこで子供用の服を買って、ようやくエルフィリア様は本来の姿になった。


 「ハァ。本当に8才だったんですね。………可愛らしすぎ?」


 魔導具の指輪を外した彼女は、俺の半分ほどの背丈の子供になった。

 しかしその姿は異様に愛らしく、なんか持って帰りたくなるような衝動に駆られる。


 まるで生きた高級人形。

 その笑顔だけで、ヤバイ性癖が生まれそうになる。


 「ふふっ。大人になった姿は、男を異様に惹きつけてしまって、問題ばかり起こしてしまいましたが、ようやく落ち着けますね」


 「……それはどうでしょう? かえって厄介事を引きつけるかもしれません」


 「え? どういうことです?」


 その意味が、程なくしてやって来た。

 チンピラの集団に路地裏に追い込まれ、囲まれてしまったのだ。


 「ハァハァ、そこのラブリーなお嬢ちゃんを渡せえ!」

 「フヒヒ、高く売れそうだぜぇ。その前に……ムフフ」


 ああ。やっぱり子供誘拐(キッズナッツ)に目をつけられたか。

 しかし、俺がいつも側にいるってのに、行動に移すとは相当だな。

 俺は懐から包丁をだし、一番近くの男の腕に「スッ」と傷を入れる。


 「うおおおっ!?」


 すると、腕からは信じられないほどの血が流れた。

 腕の筋に沿って傷を入れたので、相当に深く入ったのだ。

 荒れ地に出てくる魔物(モンスター)相手にさんざんやってきたので、もう『女神の祝福』のスキルブースト無しでも、こんな包丁捌きが出来るようになってしまった。


 「この野郎! この人数で勝てるか!」


 チンピラ三人が襲ってくるも、裏稼業であれ素人の動き。

 野生の魔物には及ぶべくもない。

 俺は落ち着いて、作業をするように彼らに傷を入れる。

 するとさっきと同様に、つけた傷から大量の血を流した。

 もう、剣より達者に使えるようになってしまったね。


 「さっさと手当てした方が良いぞ。それは自然には止まらん」


 「くそっ、痛ェ! だが、しょせんオレらは捨て石よ。嬢ちゃんから離れたのはまずかったな!」


 他のチンピラ二人がちびエルフィリア様に近づき、一気に(さら)っていこうとする。

 しかし、捨て石は俺もだ。

 エルフィリア様が対処できるまで人数を絞ったのだ。

 エルフィリア様は懐から武器を出す。

 (ひも)の先に小石を結びつけた【ボーラ】という武器だ。

 それを無防備に近づいてきた二人の顎に的確にぶつけると、二人は声もなく倒れた。

それを見たチンピラ共は逃げていった。

 

 「まったく、この姿でも厄介事を引き寄せてしまうなんて、どうしたら良いのでしょう? 旅費は良い具合に集まりそうですが」


 エルフィリア様は散らばった財布や硬貨を拾っている俺を見てそう言った。

 さっきついでに、チンピラの財布の入ってそうなポケットに切れ込みを入れておいたのだ。


 「しかし、こっちが思ったよりやると分かれば、今度はプロを寄越してくるかもしれません。この街からは早く出た方が良いでしょうね」


 本当に彼女と結婚するとしたら、重すぎる嫁だなぁ。

 彼女を狙う、俺より強い奴は確実に来るだろうし。


 「ですが、もうしばらくこの街には留まりたいのです。危険は承知で」


 「なぜです?」


 「あのシェイン達が、あなたの料理なしに耐えられるわけがありません。間もなく【疾風の仕事屋】はお役御免になって、別のサポートを頼むでしょう」


 「あっ!」


 そうか。【疾風の仕事屋】がサポートメンバーに選ばれたのは、俺の料理が美味いため。

 となると、あいつらは激怒して全員をクビにしてしまうだろうな。


 「彼らは帰りの補給のためにも、この街に寄るはずです。そこにわたし達も合流して、村に帰りましょう」


 「ええっと………メッシーナさんには何と?」


 「『落ちた崖の下で助けてくれた女の子に惚れられた。お礼に嫁にしたいので、連れて帰る』でよろしいんじゃありません?」


 よろしくありません! 

 無理がありすぎだ!!


 「それで勇者パーティーの方はどうなるんです? あれでも国の命運を託されたパーティーです。壊滅とかされたら、国が危うくなります」


 「彼らも、白魔法のスキルを持った予備人員を呼び寄せて再び試練に挑むでしょう。それまで彼らもこの街に滞在するでしょうから、出会わないようにしませんとね」


 「そんな風に切り替えられるかなぁ。あいつら、エルフィリア様への執着はヤバイものがありましたからね。喪った絶望は相当なものでしょう」


 「ですが、やらなければならないでしょう。とくにシェインなど、相当の家財を放出してまで勇者になりましたからね。結果を残せずに帰ったら、まず当主指名は取り消されるでしょうね」


 そうかもしれないけど。

 あの『聖女しゅきしゅき団』が、エルフィリア様の喪失を乗り越えられるかなぁ。


 「まぁ次の試練は、不死(アンデッド)系の最上位の魔物【リッチー】の退治。白魔法使い無しでは攻略は不可能ですので、予備人員が来るまでこの街に滞在するでしょう。その休暇で、心を癒やしていただけることを期待しましょう」


 その笑顔をみて、『彼女は天性の【パーティークラッシャー】だな』と思った。

 彼女に魅入られて不幸になっていく男は、どれだけいるのだろう。

 貴族じゃなくなっても、俺には重すぎる嫁だな、うん。

 

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[一言] “パーティークラッシャー”って…、この聖女様、意識していないけど“魔性の女”でもあるのでは?
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