Ⅵ サディスティック
「完全再生」
周囲からフランクの肉片が集まってきて・・・
「あれっ俺生きて・・・る?」
「あいつ人を蘇生させた?!」
「そもそも、あんな爆発魔法見たことないぞ?!」
フランクの体は再構築された。
ギャラリーも動揺しているようだ。
「体内から弾け飛ぶ気分はどうだ?」
状況の理解が追い付いていないのか唖然としているフランクにそう聞いた。
「うっ、おえぇぇぇ」
自分が一度爆発させられたのを思い出したのか、吐いてしまった。
よほど気持ち悪いらしい。
「床が汚れてしまったではないか!回帰」
「ぐうっ、」
床にこぼれた吐物をフランクの穴という穴から体内へと戻す。
「あいつ・・・化物だ」
その光景が余りにも気持ち悪いのか、俺に恐怖を覚えたのか、ギャラリーが結構逃げ出してしまった。
「誇れ!お前は世界で初めて体内を爆破された経験を語れるのだから!」
ギャラリーは蘇生魔法を知らないようだったので、普及していないと仮定すると、この男は一度死ぬという貴重な体験をした事になる。
「こ・・こっ・・こいつ狂ってやがる」
フランクがこちらを恐怖で染まった顔で見ている。
「どうした?弱者としての生き方を教えてくれるのではないのか?」
そうは言いつつ、やり過ぎてしまった気もする。
「もうあと4、5回殺してやろうと思ったんだがな」
一回でこれなら4、5回もやると廃人に成りかねない。
そんな本音が独り言として漏れる。
「もう勘弁してくれ!俺が悪かった!」
フランクの顔は畏怖を通り越して絶望に染まりきっている。
そんなに必死で頼まれるとうっかり殺してしまいそうだ。
「まあ、そこまで言うならいいだろう。俺は殺しではなく力関係をはっきりさせたかっただけだ。」
「えっ偉そうなこと言ってすみませんでした」
そう言い終えぬうちにあっという間にギルドから出ていき、俺の視界から消えていった。
「・・・・・」
残った者達も恐怖に染まっている。
残ったと言うより足がすくんで動けないという表現の方が適切だな。
「さて薬草の話は信じてもらえるか?」
俺は本題を思い出し受付嬢に聞く。
一文無しの俺は薬草の報酬を貰えなければ、食べ物も無ければ、宿も無い。
「・・・えっ、・・・えっと・・・」
むしろ先程より会話のできる状態ではなくなっている。
どうしたものかと考えていると、なにやら威厳のある60代程の男がギルドの奥から出てきた。
「ぎっ、ギルド長っ!」
安心したように受付嬢が男のことをそう呼んだ。
ギルド長の登場により、受付嬢は落ち着きを取り戻しつつある。
この老人、かなり信頼されているようだな。
「私はギルド長のロバートです」
ギルド長と呼ばれた男がそう名乗る。
「俺は佐藤蓮だ。俺はただ薬草の報酬が欲しいだけなんだがな」
このままでは本当に野宿飯無しになってしまう。
「その量の薬草をお1人で採集したと?」
「お前も信じないのか?」
「先程の戦いを見ると可能なのかと思えてしまいますね」
敵が弱すぎて戦いと言うより拷問だったがな。
「なんだ見ていたのか。さっき俺が使ってたのは魔法だよな?」
ギルド長ともなると、魔法が使えるのに魔力無しと判定された理由が分かるかもしれない。
「確かに魔法を使っていたように思えました。しかし、私の知っている魔法は1つもありませんでした」
「お前が単純に知らないだけなんじゃないか?」
「何を言うんですか!この方は現役時、歴代最強の冒険者で、3:7と劣勢だった魔王軍との戦いを7:3にひっくり返した伝説の英雄なのです」
話せるようになった受付嬢が説明した。
このロバートという老人、現役時は何やら凄いやつだったらしい。
しかし魔王軍ときたか・・・
Ψ